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驚かれる程希少とゆう訳でも無く、街の人達等の一般にはいない。程度の感覚で、ルナマリアはとりあえず安堵した。
「とにかく、このままなら、傷付けても何しても、一角兎の髭を手に入れるんじゃないかって、心配なの…」
深く深く溜め息を吐くギルドの職員。
たとえあいつ等が違法な手段を使い一角兎の髭を持って来たとしても、現場を見ていないギルドの職員には知る由もないのだから、買い取る他無い。
「あ、ごめんね。こんな愚痴みたいな事お嬢ちゃんに言って……なんか、凄く落ち着いてるから、つい色々話しちゃったわ」
(そりゃあ実年齢25歳ですからね!!)
「いえいえ、お気になさらずー。お姉さんも大変ですねー」
ルナマリアは愛想笑いをしながら、相槌をうった。
結局、めぼしい依頼が無く、ルナマリアはギルドを出た。
(困ったなー討伐依頼しなきゃ駄目かなー)
出来る事なら戦闘を極力避けたい。
何故なら面倒臭いから。
(のんびりと採取するのが、私の性に合ってるのになぁー)
天気の良い日に、のんびりと時間をかけて採取するのが、まだ、働く上で許せる範囲。
本当は働きたく無い。
一日中のんびりして過ごしたい。
「んーーきゃっ!」
考え込んでいると、後ろからドンッと、自分と同じ位の少年に押され、体がよろめいた。
「痛…何?」
男の子は振り向く事もせず、そのまま走って立ち去る。
「あ!財布!」
ルナマリアは直ぐに、自身の残り少ない全財産の入った財布が無くなっている事に気付いた。
スリにあったと理解する。
「もー」
ルナマリアは、手の平サイズの杖を魔法で出すと、口元に構えた。
(魔法使いって目立つみたいだから、大人しくしよう)
ここは街の中。
普段使ってる杖は目立つので、小型サイズを使用し、小さな声で呪文を唱えた。
「空間魔法」
ヴゥンッッッツツ。
少年の盗ったルナマリアの財布が、空間を通じ、ルナマリアの手元に戻る。
「良かったぁ。貴重な全財産」
無事に戻って来た事に、ルナマリアは笑顔を浮かべた。
「あ!てめぇこの野郎!俺の財布奪いやがったな!」
「はい?」
盗った財布が消えた事に気付いた少年がルナマリアの所まで戻って来、とんでもない難癖を付け始め、ルナマリアはジト目で彼を見た。
「俺の財布返せ!」
「街中で言いがかりは止めてよねーーって、あれ」
茶色の瞳に、長めの金髪の髪を、後ろで1つにしばる少年。
薄汚れた格好をしているが、外見は子供ながら整っていて、美しい。
(見た事あるーー!!!)
ゲーム《リアリテに舞い降りた聖女》の攻略対象の1人!!!
「ぎゃあーー!!極悪非道残念イケメン男ーー!!!!」
絶叫に近い叫び声を上げるルナマリア。
「なっ?!」
ルナマリアの声に、周りの街人も、何事かと足を止め、目を向ける。
当然だ。
極悪非道残念イケメン男と、悲鳴とともに絶叫されれば、誰でも振り向く。
「おい!止めろ!」
顔を真っ赤にして怒る少年。
「ご、ごめん……一瞬トラウマで我を忘れて……」
「トラウマーー!」
財布を盗った事がそこまでのトラウマになったのか!と、少年は解釈する。
「…くそっ!」
少年はそう言うと、ルナマリアの手を引いて、人気の少ない場所に向かった。
「よし、ここなら良いか」
一通りの少ない場所まで来ると、少年は手を離し、ルナマリアに振り向き、ギョッとした。
「ああ……止めて……酷い事しないで…!」
ガチガチと顔面蒼白で震えているルナマリアに、少年は絶句し、俯いた。
「……………………ごめん」
「え…」
「財布、盗ってごめん」
謝罪する少年。
(謝った……!そ、そっか。まだ良心が残ってるのか…)
彼はまだゲームの頃の彼じゃない。まだ子供。
彼の名前はジュリアス。
最低最悪クソゲーの残念イケメンキャラの1人!
ーーー裏社会の極悪非道。
学園でも窃盗、恐喝、暴行など、様々な悪事を働く最低最悪イケメン。
初期はヒロインにも暴言を吐き、暴力まで振るわれた!←ここがトラウマ。
誰得やねんまじでキャラ。
ただし顔は異様に良い。
スッキリしたハンサム系イケメン。
(攻略対象外となった他の男キャラを次から次へと姑息な手で陥れ、尚且つ、特殊な力を持つヒロインの事を、裏社会の人間を手引きして人身売買しようとする……)←ここがトラウマ。
ゲームしながらガタガタ震えたわ!
こんな事するキャラどうやって好きになんねん!
いや、なってたヒロイン凄いな!
後半、ヒロインに好意を持ってからは、ヒロインには酷い事まだしなくなったけど……。
(人身売買しようとしてた時ですら、謝らなかったのに……)
ルナマリアは、目の前で申し訳なさそうにするジュリアスを見て、少し、気を持ち直した。
「……駄目だよ、人の財布勝手に盗ったら」
(普通に犯罪だし、それもトラウマになるよ!私の全財産なんだから!!)
一体幾つトラウマを植え付けさせる気だと、段々ルナマリアは腹が立ってきた。
「…………」




