表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1話 砂漠の国、アデラン

…暑い。

俺は地獄の業火にでも焼かれてるのか。

それとも天国が熱いのか。

ん、人の話し声が聞こえる。誰だろう。


「ねぇカーリ、コイツもう死んでんじゃないの?それより早く支度してきな!」

「いいえ叔母さん、まだ生きているわ。いくらなんでも見捨てられないでしょ。ほら起きて!人が来ちゃう!」

優しく揺さぶられる。たぶん鬼か天使に起こされているのだろう。

でもこの揺さぶりをもう少し堪能していたい…

「起きな!」

べチン!


「痛った!」


俺は急な痛みに飛び起きる。

俺の目の前にあったのは天国でも地獄でもなく、広大な砂漠だった。

「言っただろう?男はこうやって起こすんだよ。」

そう語っているのは巨漢の女だ。壺のようなものを腕に5つもぶら下げている。

「もう、叔母さん乱暴すぎ…怪我人だったらどうするの…

あ、おはよう!大丈夫?歩ける?」

そう俺に聞いたのは青色の長髪美女だ。可愛いと綺麗が混じった美しい顔立ちをしている。

俺はとりあえずコクリと頷く。

「じゃあついておいで。叔母さん、見張りお願い!」

「はいはい…ったく世話が焼ける子だねぇ…」


俺は彼女に手を引かれ、彼女の家らしき民家に連れていかれた。

「あの、ここは…」

そう言いかけた瞬間、彼女は真剣な顔つきで俺の手を握った。

「ええ、確かにここは貴方のいるべき場所じゃない。見つかったら殺されちゃうわ。でも私が安全に帰してあげるから安心してね。」

「え!?殺される!?ここどこなんですか!?」

「え?ここはアンダランよ?貴方、もしかしてデグドスじゃないの!?」

「なんですかデグドスって!俺は…」

あの水面が鮮明によみがえる。自分の口から溢れる空気、冷たい水…


「…死んだはずなのに…」


ここはどこなんだ?俺は誰と話しているんだ?それともこれは夢なのか?


「…ねぇ、貴方は何者?デグドスを知らないって…しかも死んだはずってどういうことなの?」


「えっ?えーと、俺は…」

つい言い淀んでしまった。彼女に自殺のことを言うのは、何だか情けない気がした。

「あぁごめん、先にこっちから言うのが筋よね。私はカーリ。そしてここはアデラン王国の最も大きな街、アンダランよ。」

「俺は斎賀渉、北海道…日本から来ました。あの、あとここは地球のどこらへんなんですか?俺場所わかんなくて…」

「チキュー?なにそれ?」

「え…?」


何を言ってるんだ?いや、田舎の国で何も教育を受けてないとか?

「えっと、じゃあここの隣の国の名前って何ですか?」

「オリアリとか、ハシャクィとかよ。」


全く聞いたこともない。

ん?ちょっと待て、まずこんな聞いたこともない国なのになぜ日本語が通じるんだ?

「貴女が今話している言葉って何語かわかります?」

「それはまぁアデランの言葉だけど…」


おかしい。ここは本当に地球上の場所なのか…

いや、前こんな話を聞いたことがある気がする。

これはもしかすると、ひょっとして…


「…信じられない話ですけど、もしかして俺、異世界から来たのかもしれません…」

「異世界!?どうやって!?」

「いや、これは根拠も何もない仮説です。でも確実に非科学的なことが起きて、俺はここに移動しました。転生したのかもしれません。」

「ふんふん…じゃあ後で巫女様に聞いてみよっか。」

「あれ、随分簡単に納得するんですね…」

「まぁこの街の人じゃなくて、デグドスも知らないならその選択肢しか無いからね。」


「そうですか…そういえばデグドスって何なんですか?」

「あぁ、まだ言ってなかったね…」

「デグドスというのはこの国の最底辺の人々…年中無休で働かされて、その命がモノのように扱われる人々。」

要するに奴隷という事か。

「デグドスの人々はちゃんとした服も着れずに、満足にごはんも食べられずに、わずか30年ほどで寿命を迎えてしまうの。皆と同じ、人間なのに…」


カーリはまるでそれを見てきたかのように、強く重く語った。彼女の言葉に心動かされて、思わず

「それはひどい話ですね」

と賛同した。

するとカーリは顔をぱぁっと明るくし、期待にあふれた目で俺を見つめてくる。

「そう思う!?ほんと!?」

「はい、もちろん。」

「そっか、そっか!いやよかった、同志が見つかって!ちょうど一人欠員が出てたんだよね~!」

「何のですか?」

嫌な予感がした。何かに巻き込まれている感じがする。


「革命隊の!」


「私率いる革命隊は今夜王宮に乗り込んで、王族を追い出して、デグドスの人々を開放するの!」

彼女は無邪気に笑った。

「サイガワタル、私たちと一緒に戦わない?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ