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~プロローグ~
ビュオオォォ…
吹雪の中、俺は湖のほとりに立ち尽くしていた。湖畔に落ちた雪は儚く、溶けてゆく。まるで俺みたいだ。
「おいワタル!どこ行ったあのクソガキ!!」
叔父さんの声が近づいてくる。
もう行かなくては。辛かった時間はここで終わる。もう悔いなんてない。
最後の故郷の空気を腹いっぱい吸う。
一歩をゆっくりと踏み出す。
息を吐いて、俺は静かな湖に飛び込んだ。
水面の光はどんどん遠ざかっていく。
息ができないのは苦しいはずなのに不思議と心地がいい。
俺は目を閉じる。これでずっと、眠ってられる。
2016年の1月21日、斎賀渉は息を引き取った、ように思えた。
神が彼を哀れに思ったのか、科学的な偶然か。
斎賀渉は時空・次元を超えて異世界の貧しい国に転生してしまった。