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ベース⚾ガール!!! ~Ultimatum~  作者: ドラらん
第六章 私がライバル
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71st BASE

いつもお読みいただきありがとうございます。


前回は更新をお休みして申し訳ありませんでした。


一回戦を順当に突破した亀ヶ崎ですが、何と二回戦は楽師館高校と当たります!

混戦必死の同郷ライバル対決!

亀ヶ崎は勝てるのでしょうか……。

 亀ヶ崎と楽師館。愛知県内で女子野球部のある高校はこの二校しかない。公立と私立の違いこそあるものの、どちらも実力校として名を馳せている。楽師館が豊富な設備と圧倒的な練習量を誇る一方、亀ヶ崎は時間にも設備にも制約のある環境下ながら、心身と共に思考力を鍛えることで全国の強豪と張り合える力を付けてきた。


 練習試合は何度も行っている両者だが、全国大会で当たるのは春夏を通じて初めて。日本一になるためには互いに倒さねばならない相手だと認識しており、雌雄を決する一戦となる。


《一番ショート、円川さん》


 試合前、場内アナウンスを通してスターティングラインナップが発表されていく。先攻の楽師館はいきなり万里香を打席に送るオーダーを組んできた。


《九番ピッチャー、柳瀬さん》


 対する亀ヶ崎は一回戦に続いて真裕が先発を務める。両チーム相手にとって不足なし。全力を注いで勝利を掴みにいく。


 試合が始まったのは午前十一時四〇分。燦々と太陽が照りつける中、真裕がマウンドに上がる。投球練習を行う姿は前回登板時よりも落ち着いており、制球の乱れも無い。


《一回表、楽師館高校の攻撃は、一番ショート、円川さん》


 右打席に万里香が立ち、球場全体にサイレンの音が轟く。真裕は目を瞑って深呼吸をしてから、万里香への投球に臨む。


(いきなり万里香ちゃんが相手なのは骨が折れるな。けどランナー無しで迎えられるし、そう思うと楽かな)


 真裕は菜々花とサインを決め、この試合の第一球目としてツーシームを投じる。すると万里香はバントの構えを見せてきた。


「えっ?」


 不意を突かれた様子で前へと駆け出す真裕。万里香は三塁線沿いにバントする。


「ファール」


 サードのオレスもアウトにするべく突っ込んできたが、捕球した位置はファールゾーンだった。彼女の強肩と万里香の俊足との勝負は持ち越しとなる。


 万里香は初球からセーフティバントを仕掛けてきた。これには真裕だけでなく、目の前で見ていた菜々花も驚いている。


(初球から打ってくることは想定してたけど、バントしてくるとは。何か不気味だな)


 菜々花は一塁から引き返す万里香を凝視する。万里香は淡々とバットを拾って打席に戻ってきた。真裕との勝負を楽しんでいる気配は無く、その点が菜々花には引っ掛かる。


 二球目、バッテリーは外角のストレートを外して様子を見る。今度は万里香は打つ体勢で見送った。


(流石に続けてバントは無いか。なら次はこれで行こう)


 菜々花は三球目として内角低めのストレートを要求する。真裕はほぼミットの構えられたコースに投げ込む。


「ストライクツー」


 万里香は全くと言って良いほど反応せず。これで真裕が追い込んだ。


 ここから厳しいコースを突いてボールを増やすのも嫌だが、それ以上に出塁を許したくない。バッテリーは慌てることなく、四球目はボールになるカーブを挟む。万里香はバットを動かしかけて止まる。


 五球目はアウトコースのストレート。万里香は振り遅れながらもバットに当て、一塁側へのファールを打つ。


 六球目も真裕は同じようなコースにストレートを続ける。これも万里香にはファールにされたものの、バッテリーとしては想定内である。


(今のコースで差し込めてるってことは、真裕の球威が勝ってるんだ。コントロールも悪くないし、今日の調子は良いみたいだね)


 七球目、菜々花はツーシームを要求し、インコースにミットを構える。真裕はそれに従って投球を行う。


 万里香は前の二球でアウトコースへの意識が強くなっており、内外に揺さぶられると対応も難しくなる。しかし彼女は咄嗟に腕を畳んでスイングし、打ち返した。打球は三塁ベンチ前を転々とする。


 これで三球連続のファール。今の一球で打ち取りたかったバッテリーだが、思惑が外れた。真裕は口元を僅かに尖らせつつ、球審から新しいボールを受け取る。


(うーん……、思った以上に粘ってくるなあ。まさか態とファールを打ってるわけじゃないよね)


 万里香と真っ向勝負ができることを楽しみにしていた真裕だが、どうにも肩透かしを食らった気分になる。それでも気を取り直し、菜々花と次のサインを決める。


 八球目、外角高めに来たストレートを万里香が打ち上げる。ライトのファールゾーンを舞うフライを、ファーストの嵐、セカンドの昴、ライトの紗愛蘭の三人が追いかけていく。だが打球はフェンスに当たってまたまたファールとなる。中々決着が付かない。


「真裕、ファールになるのは良いボールが行ってる証拠だよ! 負けるな!」


 ショートのポジションから京子が真裕を励ます。フラストレーションの溜まる勝負となっているが、何とか踏ん張ってもらいたい。


 九球目、真裕はカーブを投じる。外角を狙ったものの、コントロールミスで真ん中に入った。


(やばっ!)


 真裕の背筋が凍る。ところが万里香も万里香で唐突に来た甘い球を捉え損ね、三遊間にゴロを打ってしまう。


「オーライ」


 素早く前進してきた京子が逆シングルで捕球し、一塁に送球する。ようやく万里香を打ち取った。真裕はレフト方向のどこでもない場所を見つめ、仄かに安堵の表情を浮かべる。


《二番レフト、中本さん》


 ただしまだワンナウト。あと二つアウトを取らないとチェンジにはならない。真裕はストライク先行を心掛け、中本への初球は真ん中やや内寄りのストレートを投げる。


「ストライク」


 中本はあっさり見逃す。先日の亀ヶ崎との練習試合では一戦目に代打、二戦目にスタメンで出場。チーム内では一番小柄な左打者で、その時に登板していた祥には非常に投げ辛い印象を与えた。


 真裕とは初めての対戦となる。二球目、彼女はストレートを続ける。先ほどよりも内角を抉り、中本にバットを出させない。


「ストライクツー」


 あっという間に真裕が追い込む。三球目のカーブがボール、四球目のツーシームがファールになった後の五球目、彼女はアウトローのストレートを決め球として投じる。


 これに対し、中本は何とセーフティバントを試みる。既にツーストライクを取られているにも関わらず、三塁線上を狙って転がした。


「サー……」

「オーライ!」


 共に前へと出た真裕の声をかき消す勢いでオレスがダッシュし、素手でボールを掴みにいく。今度こそ彼女の強肩の見せ場が来たか。


「オレス捕るな! ファールになるぞ!」


 しかしそれを菜々花が止めた。彼女の言った通り、ボールは最終的に白線の外側に出る。オレスはそれを確認してから拾い上げる。


「アウト」


 意表を突く中本のスリーバントだったが、菜々花の好判断で失敗に終わった。三振が記録され、真裕はツーアウト目を取る。



See you next base……

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