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ベース⚾ガール!!! ~Ultimatum~  作者: ドラらん
第四章 その先は……
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53rd BASE

 六回表、代打に送られた先頭打者の藤木が、追い込まれていながらもセーフティバントを仕掛けてきた。彼女は器用にも一塁ベースとマウンドの中間に転がす。菜々花の感じた覇気の無さがバントを悟られないための演技だったのかは分からないが、結果的に亀ヶ崎守備陣は意表を突かれる。


「オ、オーライ」


 最初に真裕が慌てて捕球しにいく。更にはファーストの嵐も処理へ向かったため、セカンドの昴はベースカバーに入った。


「え?」

「え?」


 真裕と嵐、どちらが捕っても間違いではなかった。だがそれ故に両者は一瞬だけ譲り合うような間を作ってしまう。


「しまった……」


 すぐさま真裕がボールを拾って一塁へと投げる。しかしそれでアウトにできるのなら、藤木もバントはしてこない。


「セーフ」


 記録は内野安打。真裕と嵐の(まず)い連係ミスにより、藤木の出塁を許す。


「ごめん真裕、私が大人しくベースに就いてるべきだった」

「いや、私もボールに夢中で周りが見えてなかった。もっと声を張ってプレーしなきゃいけなかったね……」


 自責の念に駆られる二人の間に沈んだ空気が流れる。そこへボールを持った昴が割って入ってきた。


「真裕さん、嵐さん、元気出してください。なってしまったことはどうしようもありませんし、最悪このランナーが還ってもリードは残ってます。それよりここから繋がれないように締めていきましょう」

「昴の言う通りだね。……真裕、次はしっかり守るから、ファーストに打たせて」

「了解。私もピッチングで挽回する」


 気を取り直し、三人がそれぞれの守備位置に戻る。残るイニングは二回。そして浜静打線が上位へ回る巡り合わせを考えると、この回で結果如何で勝敗が決するかもしれない。


 迎える打者は一番の濱地。ここまでは彼女のボール球に手を出す癖を利用してバッテリーが抑えており、この打席も初球はアウトコースに外れるカーブから入る。


「ボール」


 だが濱地は打ってこなかった。バッテリーにとっては計算外のボール先行となる。


(試合も最終盤に入ってるし、集中力が高まって打つべきボールをきっちり選別できるようになってると考えた方が良いな。それならストライクゾーンで勝負しなきゃならない。……さて、どうしたもんかな)


 菜々花は真裕に牽制を入れさせ、その間に配球を練り直す。二球目として選んだのは再度カーブだった。


「ストライク」


 真ん中低めへの投球に対し、濱地はタイミングを崩された見逃し方をする。どうやら速い球に照準を合わせていたようだ。前の打席までなら狙い球が違っても構わずスイングしており、その点では大きな変化が伺える。


(今の感じだとカーブは待ってないな。おそらく狙いを変えてくることもないでしょ。だったらもう一球続けるか。勝負所だし、とことん相手の嫌がることをやらないと)

(分かった)


 サインの交換を手短に終え、真裕がセットポジションに就く。今日は気温も湿度も高いが、その中で投げても簡単にはスタミナが尽きないような鍛錬を日頃から積んでいる。球威もコントロールも未だほとんど衰えていない。それを証明するかの如く、彼女は三球目のカーブをアウトロー一杯に投げ込んだ。


「ストライクツー」


 緩い球は傍から見れば打ちやすそうに感じられ、投手としては何球も続けるには相当の勇気がいる。しかし真裕に恐れは無い。


 これでワンボールツーストライク。濱地はカーブしか見ないまま追い込まれたため、決め球はスライダーなのかストレートなのか見当が付かない。

 この利点を活かすためにも、バッテリーは現在のボールカウントの間に勝負を決めたい。そのための鍵となる四球目、緩急を効かせて外角のストレートを用いる。


 濱地は振り遅れながらも打ち返した。だが前に飛ばすことはできず、ライトのファールゾーンに打球は消える。


(濱地も三振はしたくないだろうし、限界まで引き付けるバッティングに変えてきたね。けどそれも今のファールも想定内。打ち取るビジョンは見えてる)


 菜々花は打球の行方を見届け、マスクを被り直す。五球目として真裕に要求したのは再度アウトコースのストレート。ボール気味のゾーンに投じられたが、ストライクと言われたら終わりの濱地は手を出すしかない。


「ファースト」


 力の無いフライが一塁側ベンチの手前に飛び、嵐が捕球に向かう。だが打球はネットに当たって彼女の足元に弾んだ。


「ちっ、ファールか……」


 嵐は口を尖らせてボールを拾う。先ほどのミスを取り返す意味でもアウトにしたかったが、こればかりはどうしようもない。


「真裕、良いボール行ってるよ! 次は捕るからね」


 真裕が嵐からボールを受け取り、菜々花とサイン交換を行う。投じる球は思いの外あっさりと決まった。


 ストレートを二球続けているため、次はスライダーで空振りを奪いにいくのだろう。濱地は何となく勘付いているが、前の打席の体験から見極めることは難しいと感じ、どうにかしてバットに当てようと考える。


 セットポジションに入った真裕から七球目が放たれる。濱地はスライダーの軌道を思い起こし、左足の踏み込みを強めて打つ姿勢を作る。ところが投球は内角を直進してきた。


「わっ⁉」


 まさかまさかのストレート。濱地は差し込まれないよう咄嗟に右足を引いてスイングするも、タイミングが合わずバットが空を切る。


「バッターアウト」


 バッテリーが濱地を二打席連続三振に仕留める。外のストレートを続けてスライダーが来ると思わせておき、巧みに虚を衝いたのだ。


(二打席目でスライダーを空振りさせておいて良かった。ランナーも進ませなかったし、理想通りに打ち取れたんじゃないかな)


 嫌な流れでランナーを出した真裕だったが、一つアウトを取れたことで落ち着きを取り戻す。二番の穂波は二球目のストレートを詰まらせ、平凡なセンターフライに抑えた。藤木を一塁に釘付けにしたままツーアウトまで漕ぎ着ける。


 続く打者は三番の土橋。二打席目では甘く入ったストレートを捉え、ライトへのヒットを打っている。一打席目もレフトフライに倒れたものの、放った打球の質は悪くなかった。真裕相手でも好感触を持っており、この打席にも気分良く臨めているだろう。大野に繋がせないためにも、真裕はここで切れるか。



See you next base……

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