即死魔法とは対になりそうな聖女様のお話聞くけど質問ある?
幽霊の聖女はこう言った。
「あなたからは、勇者に近い魂を感じるんです。てっきり輪廻転生とかでこの地に帰ってきてくれたのかと思ってしまいました。」
聞けばこの聖女。
転生者なのだそうだ。
私が転生してきたのは、今から数百年前です。
呼び出された理由も単純明快で、魔王の討伐でした。
平和な国から呼び出され、いきなり戦えと言われた私たちはとても混乱しました…ですが、助けてくれと泣きつかれては否定はできませんでした。
それに私たちは強かったのです。
どんな魔法でも使える勇者に、どんな傷でも治すことのできる私。
負けるはずがない。
そう言われてきましたし、私たちもそう信じていました。
それから私たちは数年かけて世界中を回り、魔王の住む城を探しました。
仲間との出会いと別れもあった。
つらい時もあった。
回復するからといっても、傷つけられたときは痛かった。
でも、それ以上にこの世界の人にかけられる声は暖かくて嬉しかった。
絶対にこの世界を救う。
決して折れてはいけない目標だったのです。
私たちは進んでいくしかありませんでした。
魔王を私たちは追い詰めました。
あと一歩で世界を救える。
あと少しで世界に帰ることが出来る。
勇者がとどめを刺そうとしたとき、魔王は言いました。
『命だけは助けてくれ』
私たちは…きっと甘かったんでしょう。
見逃す。
そう決断した、その時でした。
勇者が前に倒れたのです。
…きっと気を抜いた途端に攻撃を食らったんだと思います。
回復をしたかったのですが、死にかけている人を見て私は動けなかった。
怖かった。
痛いとか、辛いとかではなく、死。
親しかった人の死。
目の前が真っ暗になりそうになった時、勇者は≪転送≫を使い、私たちは別々の場所へ逃げたのです。
そして気が付いたときにはこの街にいた。
それからというもの、聖女はこの地で死ぬまで生活をしていたらしい。
勇者の事は気にはなっていたが、あの事を考えると足が動かない。
それでも噂は聞こえてくる、勇者たちが魔王に負けた。
魔王は弱っているだけで、今はとある国が抑えている。
勇者は逃げた。勇者は殺された。勇者は魔王側に着いた。勇者は今も魔王討伐を狙っている。
何が嘘なのか分からない。
助けるなんて、自分にはできない。
そう思いながら、死んだ。
「無念でした。でも、そんなところにあなたがやってきた。」
僕と勇者は魂が似ていた。
魂が別の身体に宿ったのではないか。
そう考えたらしい。
「でも、魔王を倒したのはあなたなんですね。」
「はい、まぁそうです。」
僕なんかが簡単に倒していい存在ではなかったのかもしれない。
「いいえ違います。あなたが倒してくれて、私は感謝しています。心残りのうちの一つが消えました。」
ありがとうございます。ヤギリさん。
僕は今、初めて魔王を討伐したことについて感謝された。
あれ、目から汗が。
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