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即死魔法使いが酔って吐きまくってるけど質問ある?

 湖に落ちるという表現は、湖に突き飛ばされたのかという誤解を受けそうだ。


 突き飛ばされたけどね?なんなら蹴り飛ばされたけどね?


 ただ今回はそうではなく、湖の中心からの落下。


 フロウの魔法で開いた水の穴に飛び込んだのだ。


 え?今の状況をもっと詳しく?


 では説明しよう。


 僕は今、


「…ヤギリ大丈夫?」


「ありがとうウィリス。もう少ししたら回復す…うっぷ。」


 ものすごい吐き気に襲われていた。


「ゲート落下中の景色は綺麗だけど見てると酔っちゃうのよね。ごめん、説明忘れてたわ。」


 けらけらと笑うフロウ。


 絶対悪いと思ってねえ。


 めちゃめちゃ大事なところじゃねーか。


 ただ口を開けると三秒で吐きそうだから何も言えない。


「ウィリスはセーフだったのね。良かったわ。」


「…怖くて目を閉じてたから。」


 ウィリスが無事で本当によかっ…




 ここから先を記しても良いが、ここは『地獄絵図』という言葉で穏便に済ませて頂きたい。


 皆さんの察する能力に頼らせてほしい。


 ただ一つだけ言う事があるとすれば、


 フロウさんごめんなさい。でも僕には妖精の服の弁償方法がわかりません。




「…はぁ。」


「…ヤギリ。」


「どうしたウィリス。」


「…頭の三点リーダーは私の特権。」


「ごめんなさい。」


 吐き気と格闘して数分。


 テンションはがた落ち、気分は最悪だ。


 現在、妖精王様をわざわざ呼びに行ってくれたフロウを待っている。


「…王様が来てくれるのってどうなんだろう。」


「普通こっちが行く側だよな。」


 …どーしよう。王様めちゃめちゃ怒ってたらヤバいかな。


「…村に戻されちゃうかもしれない。」


「それは…」


 それだけは、避けなければいけない。


 最初こそ連れて行ってよいのかと思ったが、既にウィリスにはいろんな世界を見てもらおうと心に決めたのだ。


「もしそうなったら、僕が何とかするよ。ウィリスは心配しなくていい。」


「…うん。」


「ま、あんたがダウンしてなければそんな心配もいらなかったんだけどね。そしたら私の服も汚れなかったわけだし?」


 …すいません。ぐうの音も出ません。


 タイミング良く帰ってきたフロウが連れてきたのは、


「まあまあ。いいじゃん、久しぶりのお客さんだし。…で?君が例の、裸眼で僕らが見えるっていう?」


 妖精王様その人だった。


 見た目は子供っぽいが、何故か風格を感じる。


 …相も変わらず、服はフワフワしている。


「ああ、それは僕です。って、用事があるのはこっちの子で…」


「…その、ウィリスです。村から旅立つことにしたのでご報告に来ました。」


「あー、あの村の子か。うんうん。小さい子には旅をさせよって言うからねえ。うんうん。気を付けて行ってきなさい。」


「…!ありがとうございます!」


「いいのいいの。決めるのは君自身なんだから。」


 なんていい妖精王様。話が分かるとはこのことだ。


 フロウがこっそり聞いてくる。


「ヤギリ、小さい子には旅をさせよってどういうこと?」


「え?…そのままの意味だよ。きっと。」


「さてさて。ヤギリ君だね?フロウから少し話は聞いたが、僕は君に興味があるよ。」


 よく見れば、王様は手に紙を持っており、それをひらひら遊ばせている。


「妖精王様!まさかそれは!」


「そうそう。フロウはよく知ってるよね。これ、妖精に伝わる預言書。そして中にはこう書かれている。」


 『導きなく隠れたる者を見破る者、後に世界を変えん。良くも悪くも。』


 …もしかして、僕だったりする?


 そりゃあ、魔王を倒したのは紛れもなくこの僕だけど。


 ただ何か世界が変わったという事は無いし、むしろ僕だけが酷い目にあったと言っても過言ではない。


 預言でそんなショボい事を書かれていてはたまったもんではない。


「ショボいかどうかはともかく、問題は君が世界を変えるかもしれないという所だよね。」


 王様が座りそうないかにもな椅子に腰かけながら、妖精王は話す。


 というか、いつの間にそんなものが?


「もっと言うと、世界が悪い方向に傾く。これが一番恐れていることだ。所詮ただの預言と言ってもいいけど、妖精の王として少しの可能性も無視はできない。」


「…ヤギリは危なくないよ。」


「うんうん、きっとそうなんだろうね。ヤギリ君自体は安全なのかもしれない。でも、君の能力は善悪で言えば、どちらかな?」


 知られている。僕の即死魔法を。


「≪(デス)≫は、善ではないです。」


 だが、悪用もしていない。


 この力を使い過ぎてはいないはずだ。


「そうだね。ただ、一度知ってしまえば許容できるものではない。」


 あるだけで。恐怖の対象になりえる。


 世界を変えるほどの力を、即死魔法は持っている。


「だから今、僕はひとつ決めたことがあるよ。」


「な、なんでしょう。」



「ヤギリ君の旅に、フロウを同行させようと思うよ。」


「えええええ!?」


 ちなみにこの驚きの声は、フロウのモノだった。

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