即死魔法をセーブして活躍を見てるけど質問ある?
僕は謝罪をせねばならない。
今から、依頼を受けた者として風上にも置けないことをする。
僕はこの依頼の戦闘中、手を抜く。
ゴブリン残り5体。
これくらい…いや、最初の段階から≪範囲死≫を使えばどうとでもなった。
それでも使わなかったのは、ほかならぬウィリスのを活躍させるためだ。
決してウィリスをいじめたいわけではない。
ウィリスの事を裏切りたいわけでもない。
ただ活躍させたい。
正直、ウィリスは強い。
なぜ奴隷商人に捕まったのかわからないくらいには強い。
しかし原因をあえて言うのなら、それは自分に自信がなかった事だろうと思う。
弓がないと魔法が使えない。
自分自身に結果がないから、自分の事を評価できない。
だから捕まった時抵抗できなかった。
終わりだ。と、決めてしまった。
だが今回、ウィリスは家族のために覚悟を決めた。
その覚悟を、僕が潰してはならない。
「力」を振りかざす場面は選ばなければならない。
そら、そうこうしているとウィリスがまたゴブリンを仕留めた。
雷の魔法が矢に乗ってゴブリンを貫く。
やはりあの子は強いのだ。
才能なのかもしれないし、隠れた努力なのかもしれない。
どちらにせよ、結果が必要なのだ。
自分が母を救った。
己を自覚する第一歩。
「≪死≫」
僕は、ウィリスの補佐に過ぎない。
「…あと…3体!」
ウィリスの強みは魔法をほぼノータイムで打つことができることだ。
狙った時には、すでに矢へと魔法がまとわれている。
しかし、
「おわっと。」
弓が目の前で火を放ってゴブリンに刺さる。
「臨時焼きゴブリンだ…」
何を使うか分からないので、とにかく連携がとれない。
「≪死≫」
さて、残り1体。
と、思い後ろを振り向くと
「もう終わってたか。」
「…うん。」
息を切らしながら、ウィリスは頷いた。
ゴブリンの額には矢が刺さっている。
魔法の必要はなかったか。
動き回っていたから、疲れているだろう。
「…行かなきゃ。お母さんが、待ってるから。」
「ああ、そうだな。」
成長は、結果の上に成り立つのだと思う。
ウィリスの覚悟の火は未だ消えない。
目指すは、オーガとゴブリンたちの住む洞窟である。
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