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自由主義に憧れて
「主人は・・・・・
優しくていい人だけれど
私があの人と結婚を決めたのは
あの人がアメリカ人だったからなの・・・。」
「戦前戦中の・・・・・
窮屈な軍国主義の中で育った私は
個人の自由な思想活動を可能な限り保障する
そんな自由主義に憧れてアメリカに行きたくて
あの人と結婚したの・・・。」
「でもね・・・・・
アメリカに行ってみてわかったの
いくらアメリカが自由の国だといっても
当時は敗戦国の東洋人に対する不自由もあって
それに見下すような露骨な差別もけっこうあって
そう思うと日本人にとってはこの日本がどこよりも
一番自由に暮らせる国なんだってそうわかって
日本びいきの主人と一緒に帰って来たの・・・。」
そう言ってそのご婦人は微笑んだ。