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護岸の上で遊ぶ子どもたちの影
年の離れた先輩と二人して・・・・・
富士山の手前に見える島の灯台の明かりが灯る頃に
10月の人気のない海水浴場で缶ビールを飲んでいたときのこと・・・。
「危ないなぁ もう暗いのに子どもだけで・・・・・」
左手の先にある 川が海へと流れ込むその両岸の
コンクリート製の護岸の方を見ながら僕がそう呟くと
「もしかして もしかしておまえ おまえおまえには見えるのか・・・」って
先輩がなんだか凄く驚いたような顔をしてそう言うもんだから
「見えますよ もう薄闇の中でシルエットになっているから
顔はわからないけれど それでも黒い小さな影が幾つも
あの護岸の上でみんなで遊んでいるのが・・・」って
何も知らない僕がそう言うと・・・。
「俺には見えないんだけど・・・・・
おまえに見えてるその黒い小さな子どもたちの影はな
戦後様々な事情で産むことの叶わない子どもを身籠った女たちが
あの川に浸かってお腹の子ども流した その霊らしい・・・。」
その街にもう長く住んでいる先輩が人伝に聞いた
そんな哀しい話しを教えてくれた・・・。