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遺骨も遺品もなくただの石ころが
「役所の人が・・・・・
包んでいたその白い布をほどいて
英霊になった兄が入っているその四角い箱を
母に向かって何かを告げながら手渡した際
ゴロンって箱の中で何かが転がるような
そんな音がしたんです・・・。」
「まだ子供だった私は・・・・・
どうにもそのことが気になって
家に誰もいないときにその箱を開けてみたんです
そしたら その四角い箱の中の骨壺のその中には
大人の拳ぐらいのただの石ころが一つだけ
一つだけ入っていました・・・。」
「このあいだ・・・・・
母が亡くなって納骨したんですけれど
お墓の中には兄の骨壺が納められていました
あのとき見た丸っこい石が入っているだけの骨壺が・・・。」
そう言うとその方は哀しみの裏返しなのだろう
不思議な表情をして ふっと笑った。