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戦争の後遺症
その方は・・・・・
僕と一度も目を合わせずに
ただ顔を伏せて小刻みに震える自分の手を
ずっと見ていた・・・。
付き添いの・・・・・
その方のお母さんの話しによると
「終戦後 帰還してから暫くの間はなんともなく
それこそ普通に生活をしていたのですが
それがある日突然なんの前触れもなく
恐怖に怯える顔をして頭を抱えて
そして訳の分からないことを
始終呻くようになって・・・。」
「戦後間もないあの頃は・・・・・
戦争による兵士の心の後遺症のことなど
医者でさえもそんなことは何も知らなくて
『あの家の息子が発狂した』と噂されて
辛い思いをしました」と言いながら
そのお母さんは涙を零した・・・。