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あの状況下での私の生きる力は
「丸4年以上も・・・・・
シベリアで抑留されているその間
何か心の支えが無いと死んでしまうから
私は 心が折れないように毎日如何なる時でも
私は 私の帰りを待っている家族のことを思って
あの過酷な状況に耐えていたんです
なのに・・・。」
「やっと・・・・・
引揚げ船で日本に戻って来れて
港についたその脚で家族の元へ急いで戻ってみれば
私の帰りを喜んでくれる筈の妻も子供たちも
もうみんな戦争で死んでいました・・・。」
「シベリアで・・・・・
日本の家族のことを考えていた頃は
絶対に生き抜いて日本の家族の元に帰ってやる‼
そんな生きる力があったんですけどねえ・・・。」
終始 遠くを見つめる虚ろな目をして
その方はそんなことを口にした。