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欲しがりません勝つまでは
「ぜいたくは敵だ・・・・・
欲しがりません勝つまでは・・・
戦時中この国の政府はそんな標語までつくって
国民に耐乏生活を強いてひもじいおもいをさせていた癖してさ
なのにあるところには幾らでもあったんだよ
自分たち用の贅沢品が山ほど・・・。」
「うちの近所にさ・・・・・
戦時中でも政治家や軍関係者のお偉いさん御用達の
粋を売り物にする辰巳芸者のお姐さんが一人で住んでいてさ
その家の細々とした事をあたしが頼まれてやっていたもんだから
だから戦後の闇市でも手に入らないような色んな物を
姐さんからナイショでもらっててさ・・・。」
「だからね・・・・・
うちなんかじゃ戦時中だって
いい日本酒が常に一升瓶で三本もあったんだよ
でもねそのことを旦那に言ったりしたら一気に吞んじゃうから
戦争が終わるまでナイショにしてたけどね・・・。」
そい言ってその人は笑った。