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干し柿欲しさになんでもした
「俺はよう・・・・・
せんべいの柿の種を見てもよ
学童疎開をしてたあの頃の嫌なことを今でもよ
思いだしちまうんだよな・・・。」
「今頃の時季は・・・・・
どこの農家の軒下にでも
干し柿が紐で吊るしてあってよ
甘いものに飢えていたもんだから
目にするとどうにも食いたくってなぁ
だから言うことを聞いたんだよ ソイツの
『オレの言うことを聞けば一つやるぞ』っていう
ソイツの言うことを・・・。」
「なのにソイツは・・・・・
『ほら食え』って蔑むように笑いながら
自分が齧ってた干し柿の種をペッて吐き出して
あぁーまた嫌ことを思いだしちまった・・・。」
その人はそこまで話しただけで
もうその先を話さなかった。