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土蔵のその中には
「近所に・・・・・
イヤなお大尽が住んでいたの
親も子もほんといつも偉ぶってて・・・
ある日 そのお大尽の所に爆弾が落っこちて
家が焼けちゃって家の人も全員亡くなっちゃったの
でもねぇ その家の土蔵だけが無傷で残ったのよ
だから皆でその錠前を壊して中に入ったのよ
そしたらなんとその土蔵の中には米俵が
どこにも物の無い時代だったのに
米俵が積んであったのよ・・・。」
「だから・・・・・
悪い事だとわかっていても
どうせ家の人はもういなんだからって
組内で皆で相談してそのお米をないしょで分けたの・・・。」
「あの時だけは・・・・・
あのイヤなお大尽のことも皆で感謝したものよ・・・。」
そんな出来事を懐かしい思いででも語るようにして
その人はそんな戦時中の話しを僕にした。