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うんこの中に見つけた胡麻
「どうにも・・・・・
日本に戻って来れた今でもよ
あれからもう何十年も経ってんのによ
それでも当時のことを鮮明に思いだしちまってよ
胡麻だけはどうにも未だにダメなんだよ・・・。」
「シベリアに抑留されてたんだ・・・・・
食い物なんか当然十分じゃねえからよう
うんこなんかそれこそ滅多にでやしねえんだけど
そのたまにでた真っ黒いうんこの表面によう
白い胡麻の粒がくっついているのを
それを目にしてオレは・・・。」
「その胡麻の粒を・・・・・
うんこの中から摘まみ上げて そして
腹の足しになんかならねえのはわかってても
それでも口に入れるその衝動を抑えられなくてよ
その胡麻を奥歯でしっかり何度も何度も噛んで
咽喉を鳴らして飲み込んだんだよ・・・。」
そう言ってその人は頭を掻いた。