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あの沼の底には今でも
「あの沼の底には・・・・・
今でも大勢の死体が沈んでいる筈よ・・・。」
「満州に・・・・・
それこそいきなり
侵攻してきたソ連軍に
軍人民間人老若男女問わず
惨殺された多くの日本人の死体は
見せしめの意味もあったんだろうけれど
弔うことも土の中に埋葬することも許されず
集落のすぐ近くの沼の中に放り込まれて
そのまま放置されたの・・・。」
「知っているかしら・・・・・
水の中に放置されたままの死体は
いったんは水の底に沈むんだけれど
でもね しばらくするとまた浮かんでくるの
まるでブヨブヨの風船みたいに膨らんで
しばらくプカプカ浮かんでいるのよ・・・。」
その人は淡々とそう語った。