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死なない為に死に物狂いで
「お国の為なんかで・・・・・
そんなことで死にたくないとそう思って
妻とそのお腹の子どもの為に生きたいと強く願って・・・
私はあの戦争を生き延びました
だから・・・。」
「仲間たちからは・・・・・
臆病者と嘲笑われることぐらい平気で
幾ら笑われても罵られても侮られてもそれでも私は
それこそみっともないくらいの臆病者に日頃から徹して
激戦中も死んだふりをして味方の死体の下に隠れたりして
それこそ死なないその為には死に物狂いで生き抜いて
そうやって誰よりも見苦しくてみっともなくても
生きたいと強く願って戦場で死ななかったから
こうして私が今ここに居るんです」と
その方は誇らしげにそう語った・・・。
「でも 今でも時々夢に見ます・・・・・
仲間たちから卑怯者と罵倒されて殴られた日の事を・・・」
そう言ってその方はフッと笑った。