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千人針へ託した想い
「大好きだったお兄ちゃんが・・・・・
いつも私の頭をその大きな手で優しく撫でてくれた
そんな私の大好きだった親戚のお兄ちゃんが
出征することになったんです・・・。」
「だから私は・・・・・
いろんな人にもお願いして
『無事に帰ってきて 必ず帰ってきて』の願いを込めた
紅い糸で “千人針” を施してた肌着を作って
お兄ちゃんに渡すことにしたんです・・・。」
「私も・・・・・
紅い糸でその肌着に
玉留めをしながら『弾を止めて』
返し縫いをしながら『無事に帰って来て』と
一心に願いながら結び目をこしらえたんですけれど
でも そんな千人の女たちの願いを込めた玉留めも
お兄ちゃんを守ってはくれませんでした・・・。」
そう言い終えると手にしたハンカチで
その方は目頭をそっと押さえた。