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アジュンマの話し VIII
でもね・・・・・
軍慰安所従業婦になる決意をしたのは
家族の為に生きるのがそれが長女の務めだから・・・
そんな家族思いの娘みたいなことをいって
慰安婦になったつもりでいたけれど・・・。
もしかしたら本当は・・・・・
あそこから あの あの家族の元から
アタシは逃げたかったからなのかもしれない・・・
父が失踪してからというもの母はいつも怒っていて
だから弟たちもいつも機嫌が悪くて泣いていて
アタシ一人が幾ら働いても生活は苦しくって
だから ここじゃなければどこでもいい・・・
そんなことを思って・・・。
同郷の男の話しにのったのは・・・・・
あそこから逃げる手段だったからなのかも・・・
そんなことをこの頃じゃ思ったりもするんだよ・・・
そう言って紫煙を吐いたアジュンマの眼は
どこか遠くを見つめていた・・・。