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塹壕の中で喉を掻き毟って
「戦車が兵士を殺す手段は・・・・・
なにも戦車砲や重機関銃だけじゃねえんだ・・・。」
「野戦で・・・・・
日本陸軍では散兵壕と呼んでた
敵の銃砲撃から身を守る為の陣地の塹壕の
そのほとんどの塹壕の幅は1m足らずなもんだから
その中に逃げ込むと塹壕を跨ぐようにして戦車が止まって
そして逃げ込んだ者たちをあぶり出す為に塹壕の真上で
戦車のエンジンを容赦なく空ぶかしさせるもんだから
堪らずに塹壕から外へと出た者たちは撃ち殺されて
残った者は苦しくて狂ったように銃を撃つんだが
歩兵に渡されていた三八式歩兵銃なんかじゃ
戦車の厚い装甲なんかを貫通する訳もなく
跳弾になって自分たちのことを傷つけて
その挙句排気ガスで窒息死・・・。」
「だから・・・・・
塹壕の中では皆喉を掻き毟って死んでいた・・・。」
その人は顔を顰めてそう言った。