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気がついたらいつの間にか
喫茶店で待ち合わせたその人は・・・・・
どこからどう見ても見るからにヤクザだった・・・。
「オレだってよ・・・・・
端からヤクザだったわけじゃねえんだぜ・・・
小学5年の時に集団疎開先から上野に戻って来たんだけどよ
駅でいつまで待ってても誰も迎えになんか来やしねえもんだから
しかたがねえから巣鴨にあった家まで一人で歩いて帰ったら
そしたら家が在った場所には柱の一本も残って無くってよ
それ見てわかったよ 親父もお袋も死んじまったんだって
この先オレは一人で生きてかなきゃ成らねえんだって
それで生きてく為に闇屋の手伝いをしているうちに
気がついたらいつの間にかこのザマだぜ」って
人差し指を頬の脇でサーっと滑らせて
そして・・・。
「にいちゃん・・・・・
今度会ったらまた 話し聞かしてやっからよ・・・。」
そう言うとその人は僕の伝票を手にして
後ろ姿で手を振って店を出て行った。