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あの仔犬は戦争が終わっても
「今でも私は時折り・・・・・
うちにいたあの仔犬のことを想いだします・・・。」
傍らにおとなしく座る老犬の頭を撫でながら
その方が僕に話してくれたこと・・・。
「父が 戦地へと赴くその前に・・・・・
せめて家族が淋しい思いをしないようにと
どこからか雑種の可愛い仔犬をもらってきたんです・・・
でも その仔犬は短い間しかうちには居られませんでした
『御國の為に』そう言われたら逆らえないそんな時代
まだ幼かった妹と遊ぶことしかできない
そんな仔犬でさえもがあの当時は
軍用犬として徴集されて
そしてどこかへ・・・。」
「戦争が終わった翌年・・・・・
父はなんとか無事に家に帰って来れました
でも あの仔犬は戦争が終わって何十年経っても
未だにうちには戻っては来ていません
どうなったんでしょうね・・・。」