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戦時下でもお正月にはお餅を食べてたよ
「戦時中は・・・・・
国家総動員法で米も野菜も魚も生活必要物資はそれこそ全部が
なんでもかんでもそれこそ切符制配給制で十分な割当てがないから
だから誰もがみんな飢えていたってそう思っているんでしょう
確かに十分な割当てなんかなかったんだけれど・・・。」
「だけどね・・・・・
終戦の年のお正月だって
どこの家でも戦時下で大っぴらにはできないけれど
それでもどこの家でも大抵なにかしらの食べ物は隠し持ってて
今みたいな色とりどりで品数の多いそんなお節ちじゃないけれど
それでもお正月にはお餅の入ったお雑煮も黒豆もきんとんもなますも
家に無い物はなんとかしてヤミで手に入れてこさえて食べてたよ
そういうのを全部どこの家でも女がやってたんだよ・・・。」
「いつの時代だって女は現実的だから・・・・・
戦争するだけしか能がない男と違ってバカじゃないから
どうすりゃ食べ物が手に入るか生き延びられるか常日頃から考えて
そうやってあの戦時下でも強か(シタタカ)に生きていたんだよ・・・。」
そう言ってその人は愉快そうに笑った。