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アジュンマの話し I
その人は・・・・・
もう食べることは叶わないけれど
僕の中では今でもなに一つ疑うこともなく
世界で一番美味しいカルビを食べさせてくれる
そんな焼肉店を一人でやっていた
在日朝鮮人の女性だった・・・。
店は・・・・・
都内の片隅にあったその店は
テーブル席の無いカウンターだけの古びた店で
客はその街に住んでいる店主と同郷の者たちばかりで
僕はその店が地上げで無くなってしまうまで
僕以外の日本人をその店で見たことは
一度も無い・・・。
そして僕は・・・・・
在日朝鮮人のその店主のことを
その店に来る店主と同郷の者たちと同じように
韓国語で “おばさん” とう意味らしい
『アジュンマ』と呼んでいた・・・。