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殺せ殺してくれって頼まれて
「私は歩兵部隊にいました・・・・・
敵の壕を奪い取って中に入ったときのことです
その中に砲弾をうけて両腕が肩から吹き飛ばされて
腹からも血が噴きだしている敵兵がまだ息をしていました
放って置いても直に死ぬことは目に見えていたので
そのままにして行こうとしたら
そしたら・・・。」
「その敵兵が・・・・・
私に向かって叫んだんです
言葉はわからなくても何を言っているのかはわかりました
『殺せ 殺してくれ』ってその敵兵は血を吐きながら
私に懇願したんです
だから・・・。」
「嫌なものですよ・・・・・
幾ら頼まれたからといっても
幾らもう助からない命だとわかっていても
あれは 銃撃戦で敵兵を撃ち殺すのとは全然違います・・・。」
そう言うとその方は顔を顰めた。