神に愛された聖女をおろそかに扱うと国に災厄が起きるわよと聖女の姉に脅され続けてきた妹が、王太子に頼まれ、姉との婚約を策をもって破棄させた話。
「私をおろそかに扱うと国に災厄が起きるわよ!」
ある日突然、姉がこんなことを言い出した。姉が10歳になった途端でした。
両親が慌てて医者に見せたが、その途端姉が怒り屋敷が地震に襲われました。
屋敷のみが地震に襲われ聖女の天罰だと皆が姉を恐れるようになった第一歩でした。
ここから姉の恐ろしい脅しに私は屈し続けることになったのです。
私は姉より2歳年下の妹のマリエンヌと申します。
姉が私は聖女よと言い出してから6年が経過しようとしていました。
姉の恐怖政治により、両親は姉を腫物に触るように扱いました。
聖女をおろそかに扱うと天罰が起きたという伝説があり、姉は聖女認定されましたが。
局地的地震が日に何回も起こる我が家はもうめちゃくちゃでした。
姉の機嫌を損ねないように私たちは生きてきたのです。
「私は王太子殿下の婚約者になるのよ! 聖女なのですから!」
「ああそうだな、お前は婚約者にふさわしいよ。リリエンヌ……」
「ええそうですわ聖女様」
両親は姉の言いなりです。気持ちはわかるので非難はできません。
「お姉さまは聖女ですから、相応しいですわ、絶対に婚約者に選ばれますわ」
姉に逆らうことは死を意味するというか……。いや大けがをしたこともありました。
そして姉が王太子殿下の婚約者に選ばれ、王宮に局地的大地震が起こるようになり、我が家は平和になりました。
「あれをなんとかしてくれアレクシス殿!」
「いや私にも無理です……」
王太子殿下が涙ぐみながら我が家に現れたのはそれから二週間後でした。
聖女が王家の中に組み入れられるのは絶対とかなんとかで決まったらしく、あんなのとは知らなかったというのです。お父様が揉み消してましたから。
おいおいと泣く殿下、困った顔のお父様。
お母様はやっとあれから解放されたと旅行に出かけられています。
私は二人を見て悩みましたわ。
「殿下、なんとかなるかもしれませんわ」
「マリエンヌ、あれをどうにかできるのか!」
「ええ、まず……」
災厄そのものの姉がいなくなってやっと平和になりましたが、国単位で災厄を起こされるとどうにもなりません。私はお姉さまが以前言われていた言葉を思い出し、一案をだしたのです。
「リリエンヌ、婚約破棄をしたいというのか、わかった。受け入れよう」
「ええ、ありがとうございます殿下」
お姉さまはうれしそうです。隣国の王が我が国に来てからというものご機嫌で地震が起きませんでしたが、やはりそうかと私は思いました。
以前、隣国の王がとても素敵だと言っていたことを思い出したのです。
私は隣国の王に聖女があなたに会いたいと言っているという趣旨のことを伝えればいいと殿下に伝え、何気なくといった感じでそれが伝わり、聖女を国に取り込みたい隣国の王が動いて、姉は隣国の王と……。
殿下は残念そうにしています、お願いですもう少し演技をしていてください。
「では皆様ごきげんよう」
にこにこ顔で歩く災厄の姉が隣国の王とともに去っていきます。
ある意味そうですわね兵器にもなりますけど、制御ができていないようですから自滅するとは思われます。
自滅しなかった時の策も考えていますの。
あれを制御できると考えている隣国の王は、お顔はいいですけどダメダメですわ。
絶対神が認めたとか神託がどうとかとか嘘ですわよ。あれは悪魔ですわ。
地震によって大けがをしたことも私はありますし、人死にがでたこともありますのよ……。父がもみ消しましたけど。
歩く災厄の姉に虐げ続けられてきた私の逆襲が始まります。
あの局地的大地震を引き起こす聖女……神に愛されているとか絶対嘘ですわよ。
いつもいつも妹のものは私のものとかいって取り上げられたり、いろいろいじめられましたもの!
10歳まではそんなところもありましたが、優しいところもありましたけど聖女様になってからはやりたい放題でしたわ。まるで悪役令嬢のようでした。
王太子殿下がやっとやっと平和になったと喜んでおられます。父上もにこにこ笑っています。
しかし聖女様がいなくなってこれじゃあ、聖女様の存在価値ってなんなのでしょうね。
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