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ぼっちと遅刻

最悪だっ!最悪だっっ!


なんでだ?今日の家を出た時間はいつもと変わらなかったはず...、ちょっと歩くのが遅かったか?

なんにせよもう遅刻は確定。

状況は絶望的どころか、終末への一直線であった。



息を切らせながら階段を駆け上がっていく。

心臓が張り裂ける思いで2段飛ばし。

だてに体力測定E判定12年連続受賞していない。

間取りのせいで、踊り場の窓からの日光が目を焼き付ける。


途中の「何だあいつ」みたいな教師の視線をすっ飛ばしつつ階段を駆け上がる。


てか、さっきの前の陽キャ軍団間に合ったのか?!強すぎん?




遅刻―、内申やら成績やらばかりを気にする優等生らからすれば無縁の単語であろう。


別に将来有望なわけでもない俺の場合、成績の減点と云う点においては何の問題もない。


最大の問題点を挙げるとすれば...



...死ぬほど目立つ!!



黒板の遅刻者欄に名を刻み、学級日誌にも同様に名を刻む。

石碑に書かれてる偉い人ばりに名前を残す。

先生に注意を受けるかもしれないし、最悪の場合、それをネタにされて高校生活中ずっと友達にいじられたr....

あ、友達いねえわ!



やっとの思いで最後の踊り場にたどり着く。

『地味に時間かかる靴脱ぎ』

『地獄の2段飛ばし』

『ちらほらいる教師の痛い視線』

『踊り場の窓からの直射日光』

これらを四天王とするならば、この最後の階段と長い廊下は、チャンピオンロードと言えよう。

そんなラスボスへの道の直前にして、


「どうせ遅刻なのは変わんねえだから別に急ぐ必要なくね」


その真髄に気が付いた。

普通なら攻略サイトでも見ながら、「チャンピオンこいつだったのか」だとか「このタイプ使うんだ〜」だとか思いながら自分の手持ちポ○モンの最終整備に入るチャンピオンロードを悠々能能と歩いていく。


「何ならチャンピオンなんじゃないか俺」とかよくわかんない思考を生み出しつつも、

...全身の毛穴と云う毛穴から冷汗を滲み出し、毛穴図鑑コンプリート寸前であった。



....着いた。


深く...、深く、深呼吸をする。


緊張のせいか、それとも大運動のせいなのかはわからないが、確実に鼓動は高鳴り、致死寸前とも思えた。

視界が揺らぎ、平衡感覚を失い、吐き気を催す。

いつしかキリンの血圧はクソ高えとか聞いたことがあるが、そんなのちっぽけに思えるくらい、生きた心地がしなかった。


だが...、行くしかないんだ。

この扉を開かなければ何も始まらない。

そうだ。ポジティブに行こう。後ろ向きなことを言ってたって始まらない。


きっとこの向こう側には希望に満ちた学園生活が...っ!


ガラガラガラ...


今更意味はないというのに、何故か極力音を立てずに、慎重に、ゆっくりと引き戸を開いていく。


幸い、席は廊下側の一番端、そして最後尾。あまり目立ちはしないだろう。

周囲の様子を伺いながら席に着く。

ふと、黒板の方を向くと、自らの名がないことに気がついた。周囲からこれといって視線があるわけでもない。何なら担任とも目が合わない。

そして、薄々勘づいていたことの確度がどんどんと増していく。


え...、...忘れられてる...の?


何事もなかったという安心感と、謎の不服感で複雑な心境の中、


...ぼっち最高ゥ!





...だよ...な?



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