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2話 問題はいつも唐突に

不幸体質系主人公です。

数十分経ったのち、先程の二人が申し訳なさそうに駆けつけてくれた。


縄を解き、ひとまず落ち着こうと彼女達にリビングだと思われる所に案内された。


「座って座って! さっきはごめんね、すっかり"這い寄れ触手君"を作ってたこと忘れてたよ」


「元凶はお前か」


文句を垂らしながら、二人と対面する形でソファへ腰を掛ける。


「まぁまぁ! 解いてあげたし結果オーライってことでっ! ちょっと助けるのは遅れたけど……」


「聞こえてるぞー」


後半小声になり、目を逸らすピンク髪の少女。


ゆるふわとしたミディアムパーマに青い瞳。

短いチェックスカートが目立つ赤を基調としたドレスアーマーを着ており、随分と華やかな見た目だなと青年は驚く。



「それにしても君ここら辺じゃ見ない服装だね?」


「んっ?そうか?」


そういえばと自分の服装に目を向ける。

先程まで全く気にして無かったがよく見ると意外と凝った服装をしていた。


黒髪で髪は長い方、前髪が長すぎるためかヘアバンドをつけている。

そして赤銅色のシャツに黒のジョガーパンツにスニーカー。


珍しいのは全身を覆い隠す程の深紫色のローブコートを身につけ、首にはオレンジのスカーフ、左手にはじゃらじゃらと数珠を巻いていた。


「うっわ……着るのめんどくさそ……」


自分が着ている服のくせに手間を渋っている。



自分の服装について難色を示していた青年であったがそこに少女から挨拶をされる。


「私はイーリル! この家でお店をやってるんだ! 君はなんていうの?」


その質問に青年は戸惑う。

それもそのはず、彼は自らの記憶が一切抜けており、その他の記憶だってあやふやだ。


「……すまん、めっちゃ怪しいとは思うけど今までの、というか自分自身の記憶が一切無いんだ」


「えっ? 自分が誰か分からないの?」


「ねぇイーリル、やっぱりこの人召喚してしまったんだと思うよ。 記憶の欠如も転移の衝撃が原因なんじゃないかな」


警戒されると思ったが何故か話が進んでいるようだ。



「君はさっきの絶叫の方か。 召喚ってなんのことだ?」


「そ、それに関しては忘れて欲しい……随分と失礼なことをしたなと結構反省してるんだ……」


いや、人ん家であんな奇行をしていた俺の方が悪いだろと心の中で青年は思うが釘を刺したくはないので口には出さない。


「僕はアスティ。 イーリルと二人でこの店を経営しててね。 多分君は僕らのせいで記憶を失ってるかも知れないんだ」


かけている眼鏡をくいっと直し、彼女は自分をアスティと名乗る。


身長はイーリルより少し高く、薄緑色の髪を三つ編みにして後ろにまとめ上げている。

イーリルと同じく青い瞳をしており、服装はイーリルよりもかなり気楽な服装だ。

パーカーのような上着にホットパンツと黒のストッキング。


しかし腰にポーチやら小型の道具やらなんやらをガチャガチャと身に付けており、青年はすげぇ邪魔そうだなという感想しか出てこなかった。



「俺が君達のせいで記憶を失ってる? どういうことだ?」


「いや〜まぁ……怒らない?」


「怒るかどうかは聞かないと分からないだろ」


「怒らないなら話す」


そう言ってイーリルは子供みたいに口を閉ざす。


「子供かお前は……分かったよ、怒らないから聞かせてくれよ」


「うんっ! 実は暇だから異世界から人を召喚しようと思って召喚したら本当に成功しちゃってさ! 転移の衝撃で記憶も無くしてるしほんとギャグだよねあはははははーー」


「暇つぶしで俺は記憶を失いあんなとこで監禁されてたのかぁぁぁあああ!!」


「うわーー! 怒らないって言ったのにーー!」


リビングで逃げるイーリルと追いかける青年。

そしてその光景を頭を抱えながら眺めるアスティ。


「だからやめとこうって言ったのに……本当に転移したら大問題だよって……」


「だって本当に成功するとは思ってなかったんだよっ! あれ……?もしかして私って天才だったのかも……?」


「反省をしろ馬鹿」


あまりの逃げ足に息を切らし、簡単なツッコミしか返せない青年。



「それにしても名前すら思い出せないとはね〜、どうにかして思い出せないの?」


「そう言われても自分のこと以外もあまり思い出せないんだぞ、無茶言うなって」


「だったらこっちが勝手に名前つけちゃうけど君はそれでいいのかい?」


「それはやだ」


自分の名前が"オットセイ"や"おうおうさん"になることを危惧した青年は記憶をたぐる。


「……………キサ」


「キサ?それが名前?」


イーリルは首を傾げ考え込むこちらの顔を覗く。


「いや、多分これじゃ無いと思うがこの二文字は名前にあったような……」


「それじゃもうキサでいいじゃん! はい決定っ! 名前付けるのめんどくさいし……」


「聞こえてるぞー」


イーリルという少女はどうやら一言余計な節がある。



「んじゃそれでいいや、俺の名前はキサ。 ま、仮の名前だから好きに呼んでくれ」


自己紹介を終え、本題へと入る。


「聞きたいことはかなりあるんだが……二人にずっと聞きたいことがあったんだよ。 この中に浮いてる光の球みたいな奴らはなんだ? ずっと付き纏ってくるんだが」


目を覚ましてから至る所でふよふよ浮いている光の球、生きているように思えるがなんなのかが未だ不明。


すると二人からは予想外の反応が返ってくる。


「? どういうこと?」

「光の球なんて見えないけど……」


「えっ?」


二人にはこの謎の光が見えてないのか、なんのことだか分からないという表情だった。


「いや!至る所にいるだろ! この……なんて言ったらいいか分からないが色々なカラーの光を帯びた精霊みたいな奴らがふよふよと!」


「「っ!!!」」


二人は時が止まったように驚き固まる。


「……ど、どうしたんだよ? なんか変なこと言ったか俺?」


予想外の反応だらけで、もしかして地雷でも踏んだのかと後悔するキサ。



「ねぇキサ、もしかして私とアスティの側にもその光の球みたいなのが1匹いないかな?」


恐る恐るという表情でイーリルは質問を返す。


「? あ、確かにいるな。 イーリルの方は黄色の光を帯びた奴とアスティの方は青色だな。 ……それがどうかしたか?」


「すっごーーーいッ!!!」


「うわっ!なんだよ急に!!



イーリルは目を輝かせながらこちらに顔を寄せ、アスティもこちらを興味深い目で見つめる。


「な、なんなんだ?」



地雷でなかったことに安堵するも、結局状況は理解出来ないキサであった。


古いカメラで暗闇を撮れば精霊達が見れるかも!

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