努力の蕾は地味に咲く
コツン...コツン...コツン...コツン...コツン
太陽が沈み、夜が世界を支配している。その中に明かりを抱えた大きな建物があった。中は閑散とし、そこにいるのはカウンターの向こうでうつらうつらと船を漕ぎ始めた従業員だけ。その中には一定のリズムで小さく何かがぶつかる音が響いていた。
コツン...コツン...コツン...コツン...コツン
本来なら誰の耳にも止まらないほど小さな音は、周りに全く音がないため、建物に響き結果として従業員を夢の世界へと導いていた。その音は地下の大きな空間から広がり、上の建物を満たしていた。その小さな音は一人の少年によって生み出されている。少年は目の前に設置されている古いカカシを素手で叩いていた。
少年は叩く。ひたむきにカカシを叩く。そこには何か意味があるのだろうか。他人が見れば無意味と切り捨てる行為もその少年にはとても大切な意味があるのだろう。そんなことを彷彿とさせる少年の瞳はとても真剣であった。
コツン...コツン...コツン...コツン...コツン
絶えることなく響き続ける。そんな建物に一人の老人が近づいていった。せっかちなのか早歩き気味に歩み寄り、ドカンと音を立てて中に入る。音にびっくりして従業員は飛び起きたが、そんなことには目もくれずその老人は先ほどよりも少し早めに地下へと向かっていった。急な来客に目を白黒させた従業員であったが老人のかをを見ると落ち着きを取り戻し、手元にある自身の涎がかかった書類を見つめ静かにため息を吐いた。
老人が地下で見つめる先には未だにカカシを叩きつけている少年がいた。先ほど大きな音がなったがそれに気がついていない様で、今でも叩きつけていた。
老人は見つめる。少年はかれこれ一ヶ月ほど暇を見つけてはここでカカシを叩きつけている。それは武術の会得を目指しているのか見方次第では正拳突きを繰り返している様にも見える。しかしその様はフラフラしていて側から見ると子供のお遊びに見え滑稽であった。しかしその老人の目には少年を侮る様子はなく、ただ心配そうに見つめていた。
少年は一ヶ月前から全く進歩をしている様子はない。いや、叩ける様になっただけマシと言えるだろう。始めの頃は叩こうとすれば足を滑らせ転んだり、勢いをつけすぎてカカシに突っ込んだりそれはもうひどかった。はっきりいって才能はない。それどころかやるだけ無駄だと言える。しかしそれを少年に告げることはできなかった。少年は今こうしている中でとても楽しそうにしている。そんな少年に対しておもちゃを取り上げる様な真似は老人にはできなかった。
しかしいつまでも見つめるわけにはいかな。少年を微笑ましく見守っていた老人であったが意を決して少年に話しかけた。
「おーい。坊!もう帰るぞい!」
「あ。ガレ爺。わかった!今いく!」
そういって満面の笑みを浮かべた少年に対して老人の方も笑みを深めた。
ここは挑戦者ギルド。ギルドは二十四時間営業しており、地下は挑戦者のためにトレーニングエリアとして解放されていた。そして一ヶ月前からここを利用している少年は亀の様に遅い成長を見せていた。そんな遅い成長でもくじけることなく努力できる少年はある意味では挑戦者に向いているのかもしれない。挑戦者にとって大切なのは諦めずに挑戦し続けることなのだ。
~少年side~
ギルドで徒手戦闘の練習をしていたらガレ爺の声が聞こえた。もう帰る時間になっていたらしい。ガレ爺は僕がここで練習する様になってから、毎回迎えに来てくれる。もちろん夜が怖いとか、帰り道がわからないとかそういうわけではない。
装備の相談をしにいった一ヶ月前、その時ガレ爺が戦闘訓練をするならギルドの地下がお勧めだと教えてくれたのだ。その日はガレ爺のお手伝いがあったので、早速次の日にいってみた。最近は僕以外の挑戦者はあまり見かけない。見かけたとしても朝クエストボードの前に数人見かけるくらいだろう。夜になればまず見かけることはない。そんな中での訓練はとても快適であった。静かな場所で誰にも邪魔されず自分の世界に入り込める。そんな状態は僕から訓練を中断するという選択肢を奪っていった。
夢中になりずぎ朝まで訓練していたところ、家にお手伝いの呼び出しにきたガレ爺が僕は帰ってきていないと聞いてギルドにやってきた。それはも怒り心頭でやってきたガレ爺に僕は説教を受け、疲労でそのまま倒れた。ちなみにミトーおばさんはお手伝いでガレ爺のところに泊まりにいっていると思っていたそうだ。
倒れて目を覚ました時はそこは僕の部屋で、隣には看病してくれていたミトーおばさんがいた。そして二度目の説教。結果的にガレ爺が迎えに行ける時のみギルドに行くという条件でこの事件は解決した。
それからはほぼ毎日お手伝いが終わったらギルドにきて訓練をしている。やはりこういう努力ができるものは好きだ。訓練にしても最初はカカシに当てるのでさえ苦労したが今では100発100中。やっと戦闘らしい戦闘ができる様になった。
宝珠ラッシュから約一ヶ月。あの時の初心者たちは早々に階層を上がっていき、少し前にはもう他の攻略組と合流して前線に参加したらしい。昨日23層を突破したと挑戦者新聞に書かれていた。挑戦者新聞はギルドが発行していて、階層突破の報告からフィールドの情報など様々な情報が掲載されている。たまに50くらいをNPCが踏破したとか書いていて読んでいると楽しかったりする。そんな挑戦者新聞にはよく攻略組のことが掲載される。彼らは歴史上最速で塔を登り詰めているそうだ。だいたい「期待の新人」などと書かれることが多く1面を飾ることは多くあるので、前線の活躍は1層の僕まで届いている。
そんな活躍を聞いて僕も焦ったりする。同時期にスタートした彼らはもう23層に辿り着いているのかなんて考えて憂鬱になったりもする。でも焦ったらすぐに死んでしまうことは初めてフィールドにいった時に実感した。もうそんなバカのことはしない。
その直後に反省せず、突撃しようとしたことなんてもう忘れた。でもそいういったことを差し引いてももう頃合いなのだろう。盾はすでに受け取っている。使用方法も聞き、試着もしているので特に問題はないはずだ。ついに二度目の挑戦の時がきたんだ。
~ガレーside~
わかっていたことじゃが、あやつは本当に不器用じゃのう。天才でなくとも常人でれば一ヶ月のうちでそれなりの技術を身に付けるものじゃが、結局初心者に毛が生えたくらいにしかならんかった。いや最初がひどかった分それなりに成長はしておるのか?いやそれでももう少しなんとかならないものか...
「ねぇガレ爺。そろそろだと思うんだ。そろそろもう一回挑戦してもいい頃だと思わない?」
そんなことを考えているとなんと坊がそんなことを言ってきた。挑戦といっているが、これはフィールドに出たいといっているのだろう。あの出来でそろそろだと思っておるのかこやつは。カッコつけて言いおってからに。まぁ確かにここらのモンスターであれば問題なく倒せると思うがな。もちろんあの盾があってじゃが。普通の戦闘ではまだまだ危うくて許可できんわい。
「そうじゃなぁ。確かにそろそろ実戦で盾の性能テストをしたいのう。今が頃合いか。ただし条件がある。」
「条件?」
「わしもついていく。」
「えー。ガレ爺もついてくるの?っていうか戦えるの?」
「こやつめ,ちょっとできる様になったからと調子にのりよってからに。少なくともおぬしよりは戦えるわい。わしは鍛治の素材は自分で集めたりするからの。まぁ、もし何かあった時の保険くらいに考えておればいい。」
えーといまだにブツクサ言っておるが無視じゃ無視。こやつには前科があるからの。前は一人で行き、挙げ句の果てには死にかけて帰ってきておる。あの時は先輩挑戦者に助けられたみたいだが、ここ最近はギルドは閑散としておる。前の様にはいかんじゃろう。というかこやつ前回死にかけたこと忘れておるのか?これはまた勇猛なのか無謀なのか、全く呆れるわい。
本当であれば旅にもついていってやりたいが、こやつは嫌がるじゃろうな。それに店のこともあるしな。いやしかしこの様子を見ていると心配になってきおったぞ。こんな危機管理ガバガバでいきていけるのか?全く。爺をここまで心配させるとはなんともまあ爺不幸な孫よのう。
「まあいい。明日は戦う前に装備の確認するからわしの店に寄れい。整備してやるわい。」
えーとまたもやブツクサ文句を言っている孫を見てわしはため息を吐く。本当にこやつ一人で旅立たせて大丈夫なのだろうか。これは旅立つ前になんとかせねばなるまいな。わしは密かに決心した。
~翌日~
心臓が激しく脈打っているのがわかる。血液を循環させ、来たる危機に備えているのだろう。だがそんな行為は虚しく無意味であるということは日々の経験によりわかっている。悪夢はどこまで行っても夢であってそれが現実になることはない。現実ではないと言い聞かせてなんとか心を落ち着かせる。徐々に正常な思考を取り戻していく。クリアになった思考で夢を振り返ってみる。
挑戦者になると決意してから、悪夢は日に日に形を変えていった。前まではただ闇から逃げる夢だったのが、最近は壊れた盾を装備した状態で逃げている。この夢は僕に何を訴えているのか。まるで努力したところで意味はないとでも言いたかのように、闇は僕の努力を超えてくる。
ふとベットの脇に立てかけている盾に触れる。少し前にガレ爺が作ってくれた盾。その形容は特異の一言に尽きるだろう。1対の盾は両手に装備し、端を合わせることで一枚の大きな盾となる。そのシルエットは拳がモチーフにされ。グリップ部分を覆いかぶさることで、緊急時には盾で攻撃することもできる。これだけであれば少し形状が独特な盾で済んだであろう。しかしその盾の表面には物々しい棘が無数に乱立していた。細く鋭い棘はもろさを感じさせず、見つめるだけで背筋に冷たいものが走る。
ただ異常はこれだけではない。盾の下部には大きな杭がそれぞれ存在する。それは表面のものが「棘」であるのに対してこちらは「杭」であると言えるくらいに大きく太い。こちらは棘と違いそこまで鋭さを認識できない。この杭は地面に突き刺すことで攻撃の衝撃を減らす目的でつけられている。
ガレ爺は機能を増やさないと言っていたのに現物を見たら聞いていない大きな杭がついていた時には目をむいて驚いた。ガレ爺はこれで後ろからの奇襲に対抗できると言っていたが僕にはそんな器用なことはできない。いずれでいいと言っていたができるようになるのはいつになるのだろうか。
それは前の初心者装備と違って頼りなさは一切ない。悪夢のように壊れる姿が想像できないほどに堅牢であるそれらは十分に信頼してい。しかし信頼していても警戒はするべきなのかもしれない。必ず壊れないと決まったわけではないのだから。
時計を見ると少し早めに起きてしまったようだが、ゆっくり支度すればちょうどいい時間だろう。とりあえず支度してガレ爺のとこにに行こう。
久しぶりの冒険だ、少し心を躍らせて支度を始めた。結局、集合時間より少し早めに支度が終わった。仕方ないのでもういってしまおう。
~ガレ爺宅 玄関前~
少し早めにガレ爺の家に来たら、そこにはすでに完全装備をしたガレ爺がいた。背中には大きな斧、おそらくバトルアックスといわれるものだろう。鎧は重厚で堅牢な印象を与える全身鎧。そんな全身から金属の鈍い光を見て僕は引きつった笑みを浮かべていた。はっきり言ってドン引きである。え?今日どこに行くんだっけ?ドラゴンを狩りにでも行きそうなほどの装備に僕は先が不安になっていた。気合い入りすぎ。
「ガレ爺、おはよ。なんで玄関先で待ってるの?中で待っていればいいのに。」
本当に。そんな物々しい姿をご近所さんに見られたら不審がられるから中にいてほしい。
「おう、おはよう。支度が思ったより早く終わってしまってな。せっかくの機会だし扉の立て付けでも直しておこうと思ってな。」
「やっと直す気になったんだ。じゃあ終わるまで待ってた方がいい?」
「いや。さっき終わったから。もう行こうか。」
えー。もう終わったとかどんだけ早くから待ってたの?歳をとると早起きになるっていうのはどの世界でも一緒なんだなぁ。
「それで?坊はもう準備できておるのか?アイテムの確認はしたか?ポーションは持ったか?装備忘れてないだろうな?」
「大丈夫だって。ちゃんと確認してきたから。回復ポーションも下級だけど10個用意してるし、ちゃんと装備も持ってきたよ。」
「下級か...なんか不安じゃの...そうじゃ。ほれ中級ポーションやるから持っていいけ。」
「いや中級はいらないから。回復しすぎだから。」
「貰うのはタダなんじゃからつべこべ言っておらずに貰っておけい!それと盾も持ってきておるならすでに装備しておけ。」
「えー。今日来た時にも思ったけど、ガレ爺なんでもう装備してるの?あっち言ってから装備した方が楽じゃん。カードあればすぐに装備できるしそっちの方が断然いいよ!」
「まぁ最近はそっちの方が流行っておるというのもわかるんじゃがの?でもできるだけ身につけることで装備を体に慣らすという目的がある。重い装備は取り回しが大変じゃからの。」
「なにそれー。そんなの聞いた事ないよー。僕これでもちゃんとギルドとかで情報収集してるんだからね!バカにしてもらっちゃ困るよ。」
「ええい!うるさい奴じゃ!確かに普通ならそこまでする必要はないから聞かないかもしれんが、お主は普通ではないじゃろう?いい加減自身がおかしいってことを自覚せい!」
「なにその言い方!確かに僕は不器用だけどそこまで言わなくてもいいじゃん!」
「かー!物分かりの悪い奴じゃ!じゃ今装備してみい。それでちゃんと動けたら装備しなくてもいいわい。」
言ったな!?だったらやってやるよ!盾を貰ってから自分の装備ができたことが嬉しくてつい何回も装備したことがある。
慣れた手つきで僕はカードを操作して盾を一瞬で装備した。確かに最初に装備した時は、急に重たいものが体にのしかかるのでバランスを崩して転んでいた。でもそれはもう過去の話!何度も練習した結果何事も無かったかのように自然体で装備できるようになったのだ。
一瞬で腕に現れた大きな盾しっかり装備できていることを確認し、僕はガレ爺にむかって精一杯のドヤ顔を向けた。
ふふふ。心なしかガレ爺が目を見開いて驚いているように見える。
「ふふふ。ガレ爺。まさか僕がこの程度で転ぶとでも思ったの?」
「そうか。ちゃんと装備出来るのか。ならなにも問題ないのう。ささ。装備も出来たことだしちゃっちゃとフィールドに向かうとするかの?」
そういってガレ爺は僕に背を向けて門の方に歩き出した。ちょ。え!?装備しなくてもいいって言ったじゃん!騙したな!
「ちょっと待ってよ!装備しなくていいって....」
ガレ爺の背中を追いけるために駆け出そうとしたら、世界が回った。急に駆け出そうとしたことで重心を崩し、漫画みたいにビタン!と倒れるように転んだ。
混乱している僕の背中にズシリととても重いものがもしかかってきた。言わずもがな、ガレ爺が僕の背中に腰掛けていた。
「装備というものは腕や胴体など体でも高い位置に身に付けるものが多い。そうすれば必然的に重心は上によるわけじゃ。ただ剣や胸当てなどの軽装であれば確かに転ぶといった結果にはならんじゃろう。しかしおぬしが身につけているのは、重装備。思った以上に重心は崩れるものじゃ。それに普通なら盾でなく全身鎧を身に付けることで重心のバランスを整えるが、おぬしは盾だけじゃからのう。歩くのも困難になる程バランスが悪くなるのは自明の理。そんな制限ギリギリの超重量物体を手に持っていてバランスを崩さないと思っていたことの方が驚きじゃわい。」
「う〜。わかったから!そんな落ち着いて解析してなくていいから早く降りてよ!重いってば!」
「全く.ひとが優しく解説してやっておるというのにわがままなやつじゃ。」
この爺は...自分が今重量級の装備ってこと忘れているのか?重すぎてちょっとダメージ入ったし....しかしガレ爺の言っていたことは一理ある。というかもう申し開きができないほど完膚無きまで論破された。わかっていてやらせるとは性格の悪い爺め。
それからはバランスをとるのに四苦八苦しながら門に向かって歩き始めた。時折転んだりバランスを整えるのに立ち止まったりしていたら、いつもの倍以上の時間がかかってしまった。
久しぶりのフィールドにワクワクしている心とは対照的に体の方は疲れ切っていた。門番のおじさんが僕を見るなりびっくりした顔をになり駆け寄ってきて大丈夫か?と聞いてくるほどに誰から見ても疲れているのだろう。でもガレ爺の顔を見るとホッとしてあまり無茶させたらダメですよと言い残して持ち場に戻っていった。
ガレ爺は顔が広いのか、門に来るまでにも色々な人に話しかけられていた。その度に少し立ち止まり、休憩できなければここまで来ることすらもできなかっただろう。ただその度に僕が盾しか装備していないことや、その見た目の恐ろしさが話題になり少し恥ずかしかった。そしてそれを見てニヤニヤしているガレ爺は相当に腹が立った。あんたの作品だぞこれ。
そのまま門をくぐる。頰を撫でる風。運ばれてくる緑の香り。感じるすべての感覚がとても懐かしかった。一ヶ月ほど前に1回だけ来ただけなのにあの時のことが心に深く残っているみたいだ。そんな心地よい感じとともにあの時の負の感情も湧いてくる。フィールドに出たと感じる。その事実は僕の心に深く突き刺さり、いつモンスターに襲われても遅くないと不安になる。
そんな僕を気遣ってガレ爺が大丈夫か?と聞いてくる。正直怖いよ。だって一度死にかけているんだ。そんなの怖くないなんて言ったら、そんなやつ頭がおかしいよ。でもそれでもフィールドに出たいと思うのはなぜだろう。あの時の出来事がそんなにも悔しかったのだろうか?でも例え怖くても僕はこのまま進みたい。なんでかはわからないけど多分それが正解だから。
「うん。大丈夫。大丈夫だよ。僕頑張れる。」
「そうか...でもとりあえず疲れておるようじゃし一度門の近くで休憩するぞい。」
そんな僕の決心は虚しく直ぐに進むことはできなかった。まぁ疲れているのは確かだけど、僕の決心を返して....
「それで?今日はどのモンスターを狩る予定なんじゃ?」
「あれ?ガレ爺が決めるんじゃないの?」
「何言っておるんじゃ。これはおぬしの冒険じゃろ?ならおぬしで考えい!それにわしはただ着いていくだけじゃと言ったはずじゃ。」
えー。あんなに口出しておいて今更放り出すの...まぁ何をやるって言ったら結局は最初と一緒だよなぁ。
「まぁそういうことなら、最初は豚かなぁ?ギルドで聞いたら一番人気があったし。それに色々調べたら一番倒しやすそうだったから豚で問題ないかな?僕の戦闘スタイルとの相性も良さそうだし。」
「ふむ...まぁ良いじゃろう。よく調べておるし、今のおぬしなら特に問題もないだろう。」
よいじゃろうって....回答次第ではまたなんか言うつもりだったな?まぁ確かに助言は助かっているけどさ...
「盾の方はどうじゃ?そろそろ慣れてきたか?」
「うーん。まぁぼちぼち、かな?もう転びはしないから大丈夫。ただ素早く動けないけどね。」
「そんだけできれば上々じゃ。もともと動く気などなかったわけじゃし。それじゃあ、自分のタイミングで始めなさい。」
「はーい。」
しっかり休憩して、イメトレも終わってから万全の状態で挑んでやる!待ってろよ!豚!
~代1フィールド~
ドガン!
大きなものが硬い何かにぶつかる音か鳴り響く。その衝撃は周りの草花を揺らし、草原に広がって消えた。音の中心には物々しい大きな盾を両手に持った一人の少年と血だらけの豚がいた。
血だらけの豚はそれが致命傷にも関わらず、一度距離をとって少年に向かって走り出した。普通の人間であれば吹き飛ばされ最悪命を落とすほどの威力を持った突進はそのまま少年が構えた盾に突き刺さり、ドガン!と大きな音を立てた。これが今ので5回ほど繰り返されている。そしてそれがトドメとなったのか、突進した豚は大きく血飛沫をあげ、緑が綺麗な草原を赤く塗りつぶして倒れた。
最後に立っていたのは盾を構えた少年。敵を討伐したその少年の顔は喜びではなくなんとなく不満げな表情を浮かべていた。
「これなんか違くねーーーーーーー!?」
そんな少年の主張は広大な草原に響き、虚しく消えていった。
書いてて気がついたけど、この戦闘スタイル。びっくりするほど盛り上がりに欠けるよね。一応見応えがあるようにする対策は考えているけどそうなるのはもう少し後かなぁ....
これなんか見応えなくね!?そんな作者の主張でした。