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6.俺に何ができるんだろう 2

「それで………。


どうなったら寄り添い認定されるの?」


 会ったばかりであるが、わさびが神じいさん最大の被害者のようだし、不幸の連鎖はここで止めてあげたい。


「『授けし者と協力し、世の中を面白くしてちょうだい。どうやって授けし者を見つけるのかって?簡単じゃ、自然に分かるわい。』だって。」


「適当だなぁ。いろいろ知りたいけど………。まずは、協力すると約束すれば、不幸の連鎖は止まるのかな。」


「もぅ止まったよ。」


「おぉ、さっきの会話の中に契約的な要素があったってこと?」


 この訳の分からない状況を打破するためにも、まずはこの不可思議なルールを理解しなければならない。


「違うよ。さっき神様の声が聞こえたの。

『おっけ~』だって。昨日までは、『早く決めた方がいいぞ~』って言ってたから………。」


「まじか!『ルール俺』かよ………。」


 これは非常に厳しい。神じいさんのご機嫌ひとつで、わさびの人生が左右されてしまう。


 なんか、わさびが可哀想になってきた。


 神じいさんの要求は、世の中を面白くすること。面白くできなければ、わさびが面白くないことになってしまう。俺がんばらないと。

 

 これは責任重大だわ。


「ビシバシいくからね。」


 わさびさん、かわいい顔してなに言っちゃってるんですか………。


 ヨウの心情がばれたのか、わさびにキッと睨まれる。


「う。が、がんばります。」


 それ以外、なんて言えばいいんだい?


 すでに主導権を握られてしまったヨウだが、これからのためには少しでも多くの情報が必要だ。気を取り直して、次の話題に移る。


「いくつか聞きたいことがあるんだけど。

まず、なんで俺を見つけられたの?」


「神様と話をした後、気がついたら自分の部屋にいてね。ドアにこれが貼り付けてあったの。」


 わさびは、がさがさっと、バックの中から1枚のポスターを取り出して広げた。

 

 SC横浜 vs 徳島ベルガーの試合広告だ。

でかい。駅とかに貼ってあるやつだな。


「神じいさんのヒント、さりげなさゼロ!」


「その直後、電話がかかってきて派遣切りになったの。面白くないことがすぐに起きたのよ。

 さすがに試合に行くよね………。サッカーなんて観に行くの始めてだから大変だったわよ。」


「神じいさん容赦ねぇな。悪魔か!で、どうやって俺を見つけたの?」


「なんかね。うまく言えないんだけど、能力を誰かが使うと感覚が共有される感じがするんだ。その人がやりたいこととか、少しだけ見えるの。」


「その口ぶりだと、俺以外にも『授かりし者』に会ったの?」


「昨日の試合、もう1人いたんだよ。その………『授かりし者』。」


「へ~」


 自分と同じような思いをしてるやつが他にもいたとは。ビックリだよ。


「彼の能力は、応援で味方に力を与えるチカラ。彼がチカラに目覚めた後、横浜の選手がどんどん勢いづいていったんだよ。かっこよかった~。」


 そんなやついたか?

まぁ、俺は自分のことばかり考えてたかもな。


「そんなにかっこいいやつなら、そいつと寄り添えば良かったじゃん。」


「そうなんだけどね~。彼、まだ高校生だったんだ。さすがに私がアプローチしたら問題になっちゃうでしょ。それで困ったな~と思ってたら、帰りがけにヨウを見つけたの。見なかったことにしたけど。」


 おいおい、めちゃくちゃ失礼なことを、さらっと言いませんでしたか?わさびさん。


 ヨウがムッとしているのも気にせず、わさびは話を続ける。


「神様は4人って言っていた。私とヨウと高校生と、あと1人いるはず。そう思って、ヒントを探したんだけど、あと1人がどうしても見つけられなかったの。そしたら、昨日の夜、彼氏から電話がかかってきて………。」


「フラれた?」


「ぐすん………。派遣切られたなら、俺のパチンコ代出せねぇじゃねえかって………。ぐすん………。」


 いやいや、わさびさん。それは別れて正解だと思いますよ。神じいさん、ぐっじょぶだ。

あ、もしかして、派遣先もブラック企業だったんじゃないのか?


 神じいさん、悪魔かと疑ってすまん。


「そ、それで、仕方なく俺のとこに来たと。」


「そう………。仕方なく。」


 お~い、わさびさんや、もう少しオブラートに包んでおくれ。こんなおじさんでも傷つくよ。


 早朝のカラオケボックスで、歌も歌わずうなだれるおっさん。そんなことは気にもかけずに、わさびは話を続ける。


「『まね~じゃ』の能力は、相手の能力を活かして世の中を面白くするチカラ。壁にぶつかった時、壁を破るヒントを見つけることのできるチカラ。」


 なるほど。確かに、マネージャーだな。俺専属の超敏腕マネージャー(美人)。もしかしたら、ものすごく良い話なのかもしれない。


 うなだれていたヨウは、上を向き直して彼女を見つめた。髪を束ねていて顔立ちが良く分かる。バランスの取れた目鼻立ち。化粧っけはないが、きめ細かい美しい肌。ヨウを見つめる大きな瞳。吸い込まれそうだ。


「………………………。」


「じゃぁ、私がこれからヨウをまね~じゃするからね。とりあえず………。


すぐに会社を辞めなさい。」


「………………………………………………………………。」


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