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25.トライ・アンド・エラー

 最近のヨウは、毎日のランニングと町の人達への挨拶が日課だ。もちろん『まちカフェあおい』の黄Tシャツを着て走る。


 こういうプロジェクトは、とくにコミュニケーションが大切なのだが、実はそれが一番難しかったりする。だからヨウは、とにかくたくさんの人と話をすることを日課と決めた。


 せっかく素晴らしいモノを作っても、誰の賛同も得られなければ何かを始めることすらできない。

 そういった意味では『まちカフェあおいプロジェクト』設立検討会は、最高のプロジェクトお披露目の場だった。

 議員さんや、町の代表、商店街の人達、さらには女子高生とまで知り合いになることができたし、プロジェクトに夢を抱いてもらうことができた。あとは、ただ良いものを構想するだけで良い。



 余談だが、とかく日本人は、PDCAのPとDが得意で、CとAが弱いと聞く。


 Plan:計画する

 Do:計画を実行する

 Check:実行した後で見直しをする

 Act:悪いところは改善していく


 勤勉なお国柄か、日本人は自分達の理想を実現しようとする風潮があるとヨウは思っている。できたら満足、そこが、プロジェクト最高到達点。がんばったんだから、成功するに決まってる!


 ヨウはこれを『自己満足追求型プロジェクト』と勝手に呼んでいる。

 あんなに残業して必死になってやり遂げたプロジェクトも、誰も見直しをしないもんだから、あっという間に古くなって忘れ去られていく。いつしか誰かの出世のため、人事考課シートに書かれた一行のみが存在意義になっている。そんなプロジェクトを、エリートサラリーマン時代に山ほど見てきた。



 ヨウは、イレさんの目標のひとつを思い返した。


『造園の力で、住みよい町を造る。』


 設立検討会の時に、ヨウは決めた。

このプロジェクトは、町の人達に権限を委譲しよう。坂本造園は裏方に徹する、それがこの目標の到達点だ。自己満足は厳禁だ!!


 その代わり、ちゃんとPDCAを町の人に回してもらうぞ。そのためにも、『まちカフェあおい』を本当の意味で、みんなの夢にしなければ。


みんなに夢を見てもらうため、とにかく走り回ることをヨウは決意した。


 *****

「だ~、疲れた~。」


 ヨウは帰って来るなり、縁側にぶっ倒れる。


「こら~、ヨウ。早くお風呂に入って!洗濯しちゃいたいから。」


 とにかく疲れてるが、わさびの方が疲れてるはずなので、さっさと風呂を浴びて洗濯物干しと洗い物を手伝う。最近は、わさびに叱られる回数も減っている。スキルアップしたね!


 22時過ぎに、やっといろいろ終わり、麦茶を飲みながらビーズクッションを2つ並べて居間でごろり。わさびはドラマを見始める。同時に本を読み、同時にスマホをいじっている。


「よくそんなことできるな。結局、なんにも頭に入らないだろ。」


「女はいろいろ同時にできるの。男がダメすぎるんじゃない?そもそも、ヨウは1つのこともちゃんとできないじゃない。」


「んなことないよ。ただ、同時は無理だな。テレビ or スマホ or 本!みんなそうだよ。」


「ぶっぶ~、ヨウだけです~。おじいちゃんだからね。」


 ガク…………立ち直れるんだろうか…………。


「と、ところで、『まちカフェ』だけどさ。今週から模擬店みたいなのをやろうと思うんだ。とりあえず作ってみて、町の人に来てもらって、いろいろ試してみようと思うんだよ。」


「へ~、いつから?」


「明日から。平日の昼から夕方にかけてやろうと思うんだ。」


「残念、私手伝えないわ。あ、ちょっと待ってね。」


 わさびが急に電話をかけ始めた。


「あ。もしもし、ユミちゃん?起きてた?えっとね………………………………。それでね…………アハハハ…………、でね…………。」


 な、長い。

とりあえず、ニュースでも見るか、ポチっとな。あ、痛てっ!


「見てるからチャンネル変えないで!」


 わさびに腕をツネられた。


 え?見てるの?うそ~ん。おじさんには分からんよ。


 仕方ない。明日の計画でも練るか。


「ヨウ、ヨ~~~オ~~~。」


 しばらく集中して考えている間に、わさびが電話を終え話しかけてくるが、集中しているから気づかない。


「ヨウ~!この~~~~~」


「うわ。あ、あははははは。は~、は~。

何だよ、もう、くすぐったいなぁ。」


「ヨウが私の話を聞いてないからだよ。」


「え?何?明日の予定を考えるのに熱中してた。で?」


「明日から、ユミちゃんが一緒に模擬店やってくれることになったよ。ラブラブできるね。」


「し、しないよ。俺は、わさびとラブラブしたいの。」


 冗談を言いながら近寄ったら、おもいっきり腕をツネられた…………。


 忙しい2人の団らんの時間は短い。


 気づけばもう寝る時間になっていた。


「さ、こんな時間だ。そろそろ寝るよ~。」


 ヨウがベッドに入ると、わさびも自然についてきて抱きついてくる。電気を消し、ヨウもわさびを抱きしめて眠る。


 ヨウは思う。


 これから、わさびとどうなるかは分かんないけど、俺はわさびを不幸にしないって決めたからな。


 こうして忙しい1日は、まったりと終わる。


 *****

 翌日も、いつものように挨拶巡りをする。


「おぅ、あんたんとこ、あとで顔出してみるわ。何時からやってんだ?」


「今日は13時から17時までやります。」


 今日から模擬店をやってみることは伝えてある。商店会長も気になって声をかけてくれた。


 一通り挨拶が終わった後は、『ひまわり』にユミを迎えにいく。


「あ、ヨウさん、おはようございます。今日は、よろしくお願いします。」


 ユミが丁寧に挨拶してくれた。


「急なお願いでごめんね。お店があるのに大丈夫?」


 すると、花の束の向こうから、店長(親父さん)が声をかけてくる。


「ヨウさん、ユミは、おとなしくて、あんまり前に立って何かをやることはなかった。そんなユミが、やりたいと言ってるんだ。どうか仲間に入れてやってもらえないかな。」


「もちろん、大歓迎なんですけど…………。」


「うちの店のことだろ?うちの店は気にしなくていいよ。何よりも、娘の幸せが一番大事さ。」


 ん?これは解釈が難しいな。などと思いつつ、店長にお礼を言って『まちカフェ』予定地に向かう。


「ユミちゃん、今日は、おままごとみたいな店を開くからね。」


「おままごと?」


「そう。テーブルと椅子に、ポットに紙コップにインスタント飲料。軽いピクニックみたいな感じでおしゃべりしようと思うんだ。ユミちゃんは、かんばん娘としてウェイトレスをしてね。」


「は、はい…………。」


 ユミが不安そうだ。

ここはしっかりコンセプトを伝えておこう。


「あまりにノープランでびっくりしたでしょ。今日からしばらくは、ありのままをみんなに実感してもらいたいんだ。そうすれば、あれが足りない、これが良いとか、みんなも実感できるでしょ?ユミちゃんも、仕事しながら、気づいたことはメモしておいてね。」


「分かりました。たくさんメモしますね。」


 不安もあるけれど、ヨウと一緒に働くことが嬉しそうだ。


 準備は簡単だった。

会社から借りてきた花見用の丸テーブルを4つと、それぞれに椅子を4つ配置。

フリーに使える椅子を5つ配置。

丸テーブルの1つにティーセットを置く。

残りのテーブルには、らくがき帳とペンを何セットか置いておく。

トイレは、もんちゃん達が、設立検討会の日に持ってきた工事現場用トイレを置いて行ってくれたので、鍵を開け軽く掃除をしておしまい。


 準備完了だ。


 準備も終わった頃、わさびが自転車で弁当を届けてくれた。


 3人で弁当を食べながら、夢を語った。


「さぁ、目標に向かって101歩目を踏み出すぞ~。」


 101歩目を3人で踏み出した。

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