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23.少しずつ分かってきた

 次のリーグ戦は、5月の半ばに予定されている。第1戦の大勝から3日しか経っていないので、ちょうど1か月ほどの準備期間になる。

 

 月曜日の反省会で、とにかくヨウは体力をつけるよう言われたので、今日からの町散歩はランニングしながらやることになった。

 坂本造園に入社してから1か月ほどしか経っていないが、着実に体は締まってきた。たばこはやめたし、酒も『てっぱんの日』に少し飲む程度になったので、ヨウの年代にしてはかなりの健康体に近づいてきたように思う。

 しかし、ヨウが置かれた立場はアスリートだ。アスリートの体に近づけるためには、まだまだ道半ばだろう。

 そもそも、体作りだけに専念しても、アスリートと呼べる肉体にたどり着くことはできないかもしれないのだが、ヨウには他にもたくさんやらなければならないことがある。


「ヨウ、昨日の成果はどうだ。」


 毎朝の社長室報告で、イレさんから聞かれる。


「みんな素晴らしかったです。どれも面白いアイデアばかりでしたね。次は、メンバーを絞って検討会やろうと思います。たくさん揉んで、夢をまとめあげていきます。

 あと昨日の経費ですが、たった5万円でいいんですか?」


「そんなもん俺は知らん。連中が5万というなら、5万なんだろ?」


 食材や飲み物のお金でも、5万円じゃギリギリのはずだ。Tシャツはどうせ不良在庫だったから、お金はいらないと言われた。

 ありがたいので、余ったTシャツ37枚に『まちカフェあおい with 青空商店街 printed by ブンチン堂』となるよう追加プリントしてもらうことにした。商店会も『ブンチン堂』も、ヨウが毎日着て歩き回ることで契約成立。


『まちカフェあおいプロジェクト』の当面のゴールは7月1日のオープンだから、あと2か月。がんばらないと…………。


「ところで、相談なんですが。」


「なんだ?」


「あの土地、誰の土地か知ってますか?どんどん話が進んでいくんで調べてないんです。」


「あ、あれか。うちのだ。」


「え?」


「坂本造園の土地だよ。放ったらかしてたから、ちょっと大っぴらには言えなくてな。

 でも、近隣住民に苦情言われないくらいは整備してたぞ。夏前に草刈りもしてるし、害虫駆除とかもしてる。」


「じゃ、使っていいんですか?」


「もちろん。先代は土地持ちでな。サッカーグランドの裏山あるだろ。あそこなんか、むこう3つまで会社の土地だ。毎年、害獣対策とか大変なんだよ。」


「へ~。確かに山林は維持管理が大変と聞きますね。」


「先代からの言伝でな。ある時が来るまで手放さないようにと言われてる。」


「ある時ですか…………。」


「そう。今なんだけどな。」


「え?いまですか?」


「そう。わさび…………、葵ちゃんがここに来るまで手放すなと言われてる。

 そもそも、葵ちゃんは、うちの会社の大株主だからな…………。」


 ヨウには訳がわからない。


「葵ちゃんはさ、先代のお孫さんなんだ。

先代がなくなったあと、遺言で相続されている。あの子は小さかったから覚えてないみたいだけど、ここは葵ちゃんのふるさとだ。この金庫ん中には、葵ちゃんの権利書や株券がどっさり入ってる。」


「え~~~~~!?

わさびは、知ってるんですか?」


「いや、あの感じだと、たぶん知らないな。

今、楽しそうだから、時が来るまで言わないでおこうと思ってる。ヨウも、うちのオーナーがいなくならないよう、しっかり見守ってくれよ。」


 わさびは、来るべくして導かれて来たのね。

神じいさんって、天国にいる先代社長、つまりは、わさびのじいさんなんじゃないかな。


これは、なかなか…………。で、おれはなぜ?もしかして、先代の隠し子とか?


『そんなわけあるかい。』


 うわ。なんか聞こえた。

これが、神じいさんのお告げってやつか?


『神じいさん、聞こえるか?なんでおれ?なんでここにいるの?』


 その後、神じいさんのお告げが聞こえることはなかった。

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