21.さかつくの未来2
「食事は楽しめた?」
楽しい、楽しい『てっぱんの日』から帰宅した2人は、荷物の片付けをしながら会話を始めた。
「もう最高、楽しかったよ。勇気君も、アリスちゃんと一緒で嬉しそうだったな。あの2人、あとちょっとなんだけどね~。」
「え?アリスには好きな男がいるって言ってたじゃん。」
「いろいろあるのよ…………。
それにしても、ヨウがお店を手伝ってくれたのは嬉しかったけど、もっと丁寧にお皿とか取り扱ってよね。洗い方も雑だから、やり直したんだからね。」
「す、すいません。」
完全に力関係ができあがっている。俺たちゃどんな関係なんだ?
「ところで、わさびに話があるんだ。」
片付けを終えると、ヨウはわさびを縁側に誘う。散りかけの夜桜を眺めながら、イレさんの夢の話をした。
「…………というわけなんだ。」
「なるほど、面白そうね。じゃ、私も仲間ね。」
簡単に言うな~。
「あ、そういえば、今日確信したんだけど、3人目の『授かりし者』を見つけたよ。」
「え?誰?」
あまりに突然の話に、ヨウも身構える。
「勇気君だよ。」
「マジか!どんなチカラ?」
「『周りの期待を、自分にプラスするチカラ』」
「なるほど…………。どおりで天才と言われるわけだ。」
「本人は気づいてないから、内緒だよ。」
天皇杯の目標といい、勇気にはいっぱい秘密にしないとな。ナイーブだからな……。
「ということは、俺の『1秒先が見えるチカラ』、わさびの『授けし者を導くチカラ』、勇気の『周りの期待を自分にプラスするチカラ』、横浜で見かけた『応援で相手に力を与えるチカラ』の4つのチカラだね。」
なんか俺以外若いな、とヨウは思う。
「で、俺達のチカラは、さかつくの目標に活かせるんだろか………。」
「わかんないね。」
「1回おさらいしよう。」
ヨウがノートを持ってきて、目標と達成の見込みを書き出す。
*****
さかつくシティを造る
さかつくを中心にしたサッカー都市を造り上げる。
目標:3年以内。
1.造園の力で、住みよい町を造る。
→ チカラは役に立たないように思える。
俺が努力すれば達成できる?
2.サッカーを中心に、人が集まる町にする
→ さかつくが強ければ、ファンがおしよせるか?
俺、勇気のチカラが役に立つ可能性あり。
3.さかつくで、天皇杯制覇する
→ 俺、勇気のチカラがあれば、達成できるか?
県リーグもあり、今のメンバーでハード
スケジュールを乗り越えられるか疑問。
4.さかつくで、J1制覇する
→ 2年以内にJ1昇格しないと、そもそも土俵
にすら上がれない。
さかつくはJ7リーグにいるわけで、
Jリーグの制度上、不可能なのでは?
*****
1と2は、イレさんの考えている規模にもよるが可能かもしれない。
3は、奇跡が起これば可能かもしれない。
4は、絶望的だな。
ヨウが愚痴をこぼす。
「ヨウ。成せばなるよ。やろう。」
「んな簡単に~。」
「大丈夫、ヒントもあったんだよ。」
「え?どんな?」
「なぜか、かばんの中からこれが見つかりました~。」
来週の川崎フューチャーズの試合チケット2枚が出てきた。
「じゃぁ、とりあえず行ってみようか。」
「ヨウはダメだよ。練習あるでしょ。試合は、アリスちゃんと行くことになってるから。」
「そ、そっか。アリス人選もヒント?」
「そう。アリスちゃんと一緒にいる時に、かばんからチケット見つけたんだ。
見つけた瞬間、アリスちゃんに電話がかかってきて、川崎に行くことになったの。なぜか失くしたお財布が、川崎で見つかったんだって。しかも、スタジアム最寄り駅の交番だよ。」
神じいさん、財布盗んじゃいけませんよ。
川崎か。やっぱり、もう1人の『授かりし者』につながるのかな?最初は、横浜SCのスタジアムで見かけたんだもんな。となり街だし、あり得るだろう。
「わかったよ。気をつけて行ってらっしゃい。」
俺は、イレさんと目標について内容を詰めないとな。あと、オープンカフェを成功させなければ。
「わさび、オープンカフェもアイデア相談するからね。」
「いいね!私も明日は歩き回ろう。」
「毎日、働きづくめで、休みの日も歩き回るの?無理したらだめだよ。」
「楽しいからいいの。」
ほんと、わさびはすごいな~。
「じゃ、俺も行くかな。」
「ヨウはダメ、おじさんなんだから、家でおとなしく体力回復させなさい。ご飯はキッチンに置いておくからね。」
「うへ~。参りました。」
*****
次の日は、家でのんびり過ごした。
夕方、わさびが帰ってくると、いくつかのポイントを提案してくれた。
「ヨウ、ココと、ココと、ココと、ココが良いと思うよ。特に、ココがおすすめだよ。」
わさびが地図を広げ、丁寧にヨウに説明する。
「たった1日でよく調べたね。的確にポイントついてるよ。」
「ヨウの資料見ながら歩いたからね。」
「ところで、なんでココがいいの?」
「ココの近くのお花屋さんのユミちゃん、あっ、店員さんがね、ヨウのこと好きなの。かわいい女の子だよ。」
「え………………………………え~~~~~?なんで?」
「散歩中にちょっと立ち寄って世間話したら、すぐに分かっちゃった。仕事中にヨウと話してるうちに、好きになっちゃったみたい。
アプローチしてごらん。すぐにラブラブになれるよ!!」
あ~。駅前の花屋『ひまわり』の店員さんか。確かに、いつも、いろいろ教えてもらってるな。20歳前後の、ちっちゃくて、おとなしくて、花を愛する清楚な感じの女性だったな。
「あんな、かわいい娘が俺のことを。誘惑に負けちゃいますよ…………。
だいたい、わさびはいいのか?俺に恋人ができたりしたら、また不幸が始まるんじゃないの?」
「別に恋人がいたって、寄り添えばいいだけじゃない。」
うわ、これはトラブル未来しか目に浮かばない。そもそも、ユミちゃんは、こんなおっさんとじゃ釣り合わないよ。俺とユミちゃんの父ちゃん、年齢ほとんど変わらないだろ……。
残念、無念。ちくしょ~。『ひまわり』のユミちゃん、わさびと同じく同世代として出会いたかったよ。
神じいさんのルールを思い出すと。わさびは、神の能力を『授けし者』と寄り添い、世の中を面白くしなければならない。ルールから外れると、わさびに不幸が訪れる…………。
わさびのおかげで今があるんだ。わさびが不幸にならないようにしよう。
「と、とにかく、ココのポイントで始めよう。駅から近いし、途中に商店街もあるし、狙ってた場所の1つだったしね。」
「ユミちゃんと仲良くね!!」
「あの、わさびさんにも好かれたいな~。」
「私もヨウのこと好きだよ!!」
お~、元気いっぱいに告白してくれた。初めて会った時から比べると、ものすごい進歩だ。でも、うん。なんか違う気がする。恋人ではない好きなんだろうな。
って、俺はなに考えてるんだ~。どうしたいんだ~。ハーレムか?ハーレム作りたいのか~?
ヨウが悶絶していると、わさびに見透かされて軽蔑の目で見つめられた。
だってしょうがないでしょ。
なんか、周りに美女が増えてきたんだもん。
(もんちゃんじゃないよ。)




