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「江口」くんから「氵」をとってみた。  作者: えぐみちゃん
江口くんがYouTuberを目指してみた
4/6

キミはそうやっていつも焦らすんだ。

「ねぇ、ちづちゃん」


「どうしたの?江口くん」


「突然だけど、僕あることを決意したんだ」


「江口くん。悪いけど学校では私に話しかけないでって言わなかったかしら?⋯って待って。この流れ前回もやったわ」


「そう、僕の今日のこの決意は後世に遺り永遠に語り継がれることだろう⋯。そして君はその歴史の変わり目の最初の目撃者となるんだ⋯」


「すごい、まったく聞いちゃいないわ。それにあなた、今のところ前回の冒頭と一字一句言っていること同じよ。大丈夫?」


「そこでだ、ちづちゃん。放課後僕のうちに来て欲しいんだ。君にもぜひ意見を聞きたい」


「嫌よ⋯、いや待って。仕方ないわね、いいわよ。帰ったってやることないもの」


「えー⋯、お願いだよ。そこをなんとか。どうせ帰ったってやることないんでしょ?」


「えっ⋯⋯、ウソ怖い⋯。江口くんが前回と全く同じことしか言わないじゃない⋯。なにかしら、ツェリードニヒの念能力かしら⋯」


「ツェリードニヒって、そのネタ割と最近だし通じるのかな?」


「え⋯?」


「あっ⋯⋯」


「あらあら、正体あらわしたね」


「⋯⋯⋯」


「今さら黙ったってムダよ」


「⋯⋯⋯」


「ねぇ、江口くん」


「⋯⋯⋯」


「ねぇってば」


「⋯⋯⋯」


「⋯⋯私、江口くんの狙いが分かってきちゃったわ」


「⋯⋯⋯」


「⋯⋯⋯」


「ふふ⋯⋯」


「⋯⋯⋯!」


「さもなくばちづちゃんが小学校の時に書いた作文『しょうらいのゆめ』をこの場で音読させてもらうッ!!」


「やっぱりそれが狙いね!このクソ野郎ッ!!」


「実はここにその原文の複製がございますッ!!」


「貴様ッ!!それだけは命にかえても絶対にさせないわッ!」


「えー、コホンッ!!それでは教室の皆様ご清聴くださいッッ!!!『しょうらいのゆめ 一ねん二くみ びっちゅうちづみ』ッッッッ!!!!」


「させぬッッ!!!喰らえ!!奥義『尊形胎蔵(そんぎょうたいぞう)曼荼羅(まんだら)』ッッッ!!!!」


「いっっ⋯⋯⋯たッッ!!!!ただのスネ蹴りじゃないか!何だよその大層な技名は!?あ痛っ⋯⋯!悪かった、悪かったって!!ごめんて!!」


「シッ!シッ!」


「イタッ!イタタッ!!やだ、謝ってるのに執拗にスネを攻めてくる⋯ッ!」


「もうしないと誓えばこのままスネは返してやるわ」


「すみません、もうしないです⋯」


「命拾いしたわね。ぷっ!」


「スネを蹴られた挙句、唾吐きかけられたぁ⋯⋯。普通にご褒美だよォ⋯⋯」


「やめてくれない?普通にキモいわ」


「えへへ、罵られたよォ⋯⋯」


「シッ!シッ!」


「イタタッ⋯!痛いって!!ご⋯、ごめんて!!」


「次は死刑に処すから覚えておきなさい」


「いや、ちづちゃん力強くない⋯?なんか骨にヒビでも入ったかのように結構痛いんだけど⋯⋯」


「キック力で八トンはあるもの」


「仮面ライダーか!逆によく耐えたよ僕の足」


「通りすがりのスネの破壊者よ。覚えておきなさい」


「そんな十周年記念作品みたいに」


「で、何よ。今回はこのくだらないくだりがやりたかっただけなの?」


「ああ⋯。いや、あることを決意したのは本当だよ」


「えぇ⋯、またすごくつまらない小説読まされるの⋯?だったらこのまま締めでいいわ」


「いや流石にもう小説はやらないよ。別のもっと面白いことだからさ」


「じゃあ私が『布団が吹っ飛んだ!』って言うから、江口くんはそこでよしもと新喜劇みたいにわざとらしくズッコケてくれればそれでいいわ。それをオチにしましょう」


「とりあえず話を聞いて!そして、もう締める方向で話を進めないで!さらに言えば二話続けてダジャレでオチは色々と良くないと思います!」


「何よ、うるさいわね。そこまで言うなら江口くんがオチを考えてみたらどう?」


「だから、終わる前提で話を進めるんじゃない!!えぇい!!いいから話を聞けッ!!このアマッ!」


「え、怖っ。急にヒスるの本当にやめてくれないかしら。見る側も読む側も気持ちのいいものじゃないと思うわ」


「えぇ⋯、なに僕が悪いの⋯?」


「こっちとしてはキャラ設定の段階でそんなつもりもなかったのに、江口くんはすぐヒステリーを起こすキャラとして定着しちゃうわよ?江口くんがいいならいいけど、本当にいいの?」


「作り手目線でモノを言うんじゃないよ!いや、僕だって不本意だよ!」


「ならおだやかに行きましょうよ」


「もう何が何だか⋯」


「で、何だってのよ。また何かしようってことでしょ?」


「まぁ⋯、そうですね。じゃあまた放課後、僕の家に来てもらうってことで」


「えぇ⋯、また?今話せばいいじゃない。面倒だわ」


「いや、もう言質もとってあるんで」


「⋯は?」


「僕の誘いに対して『嫌よ⋯、いや待って。仕方ないわね、いいわよ。帰ったってやることないもの』って冒頭でちづちゃん言ったのを僕はしっかり覚えている」


「くっ⋯、江口くんまでコピペを使うなんて⋯!卑怯だわ!」


「使えるモノは使っていくスタイルなので」


「⋯⋯まぁ、いいわ。一度言った以上どこにだって行ってやろうじゃないの」


「素直で助かるよ」


「⋯⋯ところで江口くん」


「どうしたの?ちづちゃん」


「何だか外が騒がしくない?」


「言われてみれば騒がしいね。校門に子犬でも紛れ込んだのかな?ちょっと窓から見てみるよ」


「女子は好きよね、そういうの」


「⋯⋯⋯⋯⋯あぁ、なるほど」


「⋯え?⋯⋯何よ。どうしたのよ、江口くん?」


「ふぅ⋯⋯。犬は犬でも、来たのは国家の犬だったみたいだよ。どうやら僕のお迎えらしいね」


「ようやく通報されたのね⋯⋯」


「体育終わりの着替え中に来たのは流石に悪手だったみたいだ」


「普通に裁かれるやつよ」


「まぁ、損より得の方が大きかった気がするから良しとするよ!目の保養になりました」


「恐ろしい。ただのサイコ野郎だわ」


「じゃあちづちゃん、また後でね」


「その『後で』があればいいわね⋯⋯」


 *


「ピンポーン」


「やぁ、ようこそちづちゃん。安定のセルフSEだね」


「あら江口くん、地の文がないから仕方ないわ。それにしてもよく出所できたわね」


「未成年だったからね。親呼ばれて厳重注意で済んだよ」


「終身刑で死ぬまでムショで働かされれば良かったのに」


「⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯え?何よ黙っちゃって」


「⋯いや、普通に傷ついた」


「加害者のクセに偉そうね。一番傷ついたのは江口くんみたいな猿のチンカスとゴリラのケツ毛をよーく練ってから一ヶ月発酵させて生まれたような男に着替えを見られた女子達の方よ」


「うわ、普通に生きていたら絶対聞かないような罵られ方をされた。泣きたい、ってかもう既に涙目だよ」


「罪に対して罰が軽すぎるくらいだわ」


「おかしいな。ギャグなんだからこういうのって普通スルーされる所じゃないかな」


「は?何言ってるのかしら。普通で言ったら女子高生の着替え覗いたらこんなもんじゃ済まないわよ」


「まぁ、そうだけどさ。なんて言うかクマ吉くん的な許され方をすると思ったんだよ」


「その考えが愚かだわ。ギャグで良かったわね」


「まぁ、いいや。とりあえず上がってよ」


「おじゃまするわ」


「で、今度は何をしようってのよ」


「それは僕の部屋を見てくれれば分かるんじゃないかな」


「焦らすわね」


「まあまあ。どうぞ、こちらが僕の部屋でございます」


「⋯⋯あら?模様替えでもしたの?前来た時と家具の配置が変わってるわ」


「まぁ、そうだね。撮影用にね」


「撮影?なに、どういうこと?」


「ふふん、どういうことか分かりますかね?千鶴美さん?」


「うわ。面倒臭いわ、なにこの男。私は別に興味ないし、できれば今すぐにでも帰りたいのよ」


「まあまあ、そう言わずに当てて欲しいんだよね」


「じゃあ、こうしましょう。あまりにつまらない事だったら今回の話もダジャレで締めることにするわ」


「怖っ⋯!いや、待って待って⋯。いやいやいや、それはダメだって流石にさ?」


「ふん。何よ、自信ないの?」


「正直自信ないっすね⋯⋯」


「はぁ、どうせYouTuberとかそんな所でしょ?違う?」


「⋯⋯⋯⋯⋯はぅ!?」


「⋯え?なに、本当に?ウソでしょ?」


「いやぁ⋯⋯。そ、それは⋯、うん、どうかな⋯?」


「ふぅん⋯⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯⋯」


「隣の家に塀ができたんだってね!!」


「うわああぁぁぁぁぁ!!!ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!!!!」


「何よ」


「⋯⋯いや、ちょっとだけ考える時間を頂けませんか?」


「ふん、いいわよ。三分間待ってやるわ」


「⋯⋯えー、どうしよ。どう足掻いてもダジャレオチな未来しか見えない⋯⋯」


「時間だ!答えをきこう!」


「⋯⋯え、早くない?待って、割と一瞬だったよ。もうちづちゃんそれ言いたいだけでしょ?」


「なーまーむーぎ!!なーまーごーめ!!なーまー⋯⋯」


「あああああ!!分かったよ、もう!!!つかそれダジャレじゃないし、早口言葉だし!!」


「見苦しいわね、早く答えなさいよ」


「えぇ⋯⋯、じゃあ⋯、うん。まぁ⋯⋯、映画監督⋯⋯?⋯⋯とか?」


「いいのね?ファイナルアンサー?」


「ええい、ままよ!!ファイナルアンサー!!!」


「はぁ、残念だわ⋯⋯」


「え⋯⋯⋯?」


「じゅげむ!じゅげむ!ごこうのすりきれ⋯⋯!!」


「分かった分かった!!せめて僕の口から本当のことを発表させて!!!てかそれ落語!落語だから!!」


「はぁ、面倒だわ⋯⋯。どこまで引き伸ばすのかしら。まぁ、いいわ。早くしなさい」


「分かったよもう⋯。オチは諦めるよ、くそ⋯」


「恨むならつまらない事しか言えない自分を恨みなさい!」


「じゃあもう言っちゃっていいですか?」


「腹を括ったみたいね」


「それでは発表します!!⋯さぁ、僕が今回挑戦することとは!!?」


「ゴクリ⋯」


「ドコドコドコドコドコ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「バンッ!!」


「そうです!千鶴美さん、ご名答!!ずばりYouTuberでございます!!」


「うおーー!!ヒューヒュー!ドンドン!バンバン!!」


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


「覚悟は、できてるわよね?」


「ええい!ひと思いに殺せッ!!」


「その意気や良し!!いくわよ!」


「来いッ!!」


「隣の家に囲いができたんだってね!!!」


「カッコイイーーーーーッッッ!!!!」

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