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51.オーク来襲4

 ううっ、何が起こった?

 たしか俺は……

 そうだ、オークリーダーにこん棒をぶつけられて、倒れたんだ。


 油断したな。

 一瞬の隙を突かれた。

 それで俺は、死んだのか?


 いや、俺はあそこに倒れてるけど、光王アフィが必死に治療してくれてるみたいだ。

 助かるのかな?


 ていうか、なんで俺は自分を見下ろしているんだ?

 ああ、たぶん闇王シヴァの視線を借りてるんだな。

 骨の体が見える。


 それはさておき、七王がオークを相手に暴れ回っていた。

 雷王インドラ風王ガルダ土王ソーマ火王アグニが狂ったように走り回り、オークどもをなぎ倒している。

 インドラはかつてない規模の雷をバリバリと放ち、ガルダはごうごうと渦巻く竜巻で敵を吹き飛ばす。

 さらにソーマは次々とオークを地中に引きずり込んでいるし、アグニは火炎ブレスで敵を焼く。

 うん、本当に強いわ、あいつら。


 それと、あのオークリーダーに巻きついてるのって、水王ナーガだよな?

 巨大な白い蛇がリーダーの首に巻きつき、ギリギリと締め上げているのだ。

 普段はおっとりしてる彼女だが、今日だけは殺気に満ちている。


 たぶん、俺がやられたのを見て、みんなブチ切れたんだろうな。

 彼らには悪いことをした。

 生き残ったら、しっかり謝ろう。


 おっと、1匹のオークがこちらへ向かってきた。

 シヴァ独りで大丈夫か?


 うおっ、シヴァがオークのこん棒を盾で受けとめたぞ。

 そしてお返しとばかりに、剣でオークを一刀両断しちまった。

 シヴァって、こんなに強かったんだな。


 それとも火事場の馬鹿力なのかな。

 いずれにしろ俺が無様にやられたもんだから、みんなして怒り狂ってるんだ。

 情けない主で、ごめんな。


 とりあえずこの場はなんとかなりそうだから、後でしっかり謝ろう。

 そして二度とこんなことを、繰り返さないようにしなきゃ。

 ああ、また気が遠くなってきた……



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ふいに目が覚めると、そこは見覚えのない部屋だった。

 はて、俺は何をしてたんだっけ?

 しばし記憶を探っていると、ふいに巨大なオークリーダーの姿がよみがえってきた。


「そうだ、オークリーダーは! ツッ!」


 急に起き上がろうとしたら、胸と左腕に激痛が走った。


「……ワルド、起きたの?」

「大丈夫?」


 すぐそばにいたアニーとレーネが、泣きそうな顔で近寄ってくる。


「アニー、レーネ……俺はどうなったんだ? たしかオークの群れと戦って……」

「あなた、2日間も寝てたのよ! 本当に心配したんだから!」

「そうよ! かっこつけて1人で飛び出したくせに、あっさりやられちゃって」


 ぐう、耳の痛い話だ。


「ま、待ってくれ。とりあえず俺が生きてるってことは、オークの撃退には成功したんだよな?」

「そうよ、ワルドが倒れて動かなくなった途端に七王たちが暴れだして、またたく間にオークを殲滅せんめつしたの。あなたは大ケガしてたけど、アフィが必死に治療して、なんとか命を取り止めたみたい」


 どうやら俺が気絶した途端、タガが外れたように七王が暴れだしたらしい。

 インドラの雷撃が、ガルダの竜巻が、ソーマの落とし穴が、アグニの火炎ブレスがそれぞれに暴走して、一気に戦況を巻き返した。

 さらにナーガがリーダーの足を止めているうちに周りを片付けて、最後は総攻撃でリーダーも仕留めたらしい。

 なるほど、最後まで見れなかったけど、おぼろげな記憶はあるな。

 みんながんばってくれたみたいだ。


 そしてリーダーを仕留めた途端、アフィ以外はその場で消え去ったらしい。

 おそらく力を使い果たして、盾の中へ帰ったんだろう。

 そして力の限り俺に治療を施したアフィも盾に戻り、俺は2日間寝っぱなしだったそうだ。

 こりゃあ、いろいろと迷惑を掛けちまったな。



 その日は1日中、安静にしながら、状況の把握に努めた。


 アフィも呼ぶと現れて、事情を話してくれた。

 今回のように召喚主が生命の危機にひんして意識を失った場合、七王は危険を排除するために暴走することがあるそうだ。

 それこそ召喚状態を保てなくなるほどに魔力を使い尽くした後は、強制送還される。


 アフィも暴走こそしなかったものの、魔力が尽きるまで治療を施してから、盾の中で眠っていたのだ。

 おかげでほぼ傷は治ったものの、魔力不足に陥って回復に2日かかったようだ。

 俺の腕や胸の骨がボキボキに折れて、大変だったらしい。

 ちなみにアフィには、メチャクチャ文句言われた。

 七王の主として自覚が足りないとか、軽率だとか、もうボロクソだ。


 そしてアフィの後には、じっちゃんにもこってり絞られた。

 彼は声を荒げはしなかったが、静かに淡々とミスを指摘されるってのも、けっこうキツイものがある。


 アニーとレーネにもネチネチと責められるし、なんなんだよ?

 おっかしいな~。

 俺って一応、オークの群れを撃退した最大の功労者だと思うんだけど。





 そして体が動くようになれば、身内以外との付き合いも待っている。


 体が治った早々、俺はギルド支部長のバシルに呼び出された。

 会議室に入ると、バシル、ダリウス、カイルの他、数人の冒険者の顔が見える。

 しかしせっかく生き残ったばかりだというのに、なぜか彼らの顔は暗い。

 俺が席に着くと、バシルが口火を切った。


「それでは先日のオーク撃退戦と、今後のことについて話し合いたい。まず先日の被害だが――」


 バシルが淡々と被害報告をしていく。

 奇跡的に村の被害は少なく、負傷者が数人出ただけで済んだようだ。

 もう少しで防壁がぶっ壊される寸前、ふいにリーダーが群れを呼び戻したため、その程度で済んだとか。


 それに対して、得られた成果は大きい。

 50匹のオークと、オークリーダー1匹が倒されたのだ。

 オークの皮は鎧などの素材になるし、肉も美味とされている。

 俺もオークの肉を食わしてもらったけど、たしかに美味うまかった。


 村人と冒険者が総出で解体したので、すでに膨大な素材が積み上がってるそうだ。

 肉は保存が利かないので自家消費するとして、革を売るだけでもけっこうな収入が望めるらしい。

 その辺はダリウスがさばいて、村と冒険者に還元してくれるそうだ。


 それらの報告が終わると、バシルが改めて咳払いをする。


「ゴホン……というわけで、報酬の分配について話をしたいんだが、今回の最大の功労者は、誰が見てもワルドさんだ」

「アハハ、1人だけ暴走して、大ケガしちゃいましたけどね~」


 雰囲気が硬いので、冗談めかして言ってみたのだが、誰もクスリともしない。


「いや、そうは言いながらも、オークのほとんどを仕留めたのは君だからね……しかしなんと言うか……」


 バシルはチラチラ俺を見ながら、何か言い淀んでいる。

 それを見かねたカイルが、横から割り込んだ。


「ワルドさん、あなたは一体、何者ですか?」

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