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39.首長会議1

タイトルを”エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~”に変更しました。

前よりは内容が分かりやすいんじゃないかと思うんですが……

 オリンポスでドゥーランと話をしてから3日で、またアテナイへ戻ってきた。

 首長会議まではゆっくりできるかと思っていたのだが、4日後には会議が開かれる予定だ。

 今後のアテナイ周辺での軍備増強や補給体制なんかを相談していたら、あっという間にその日が来た。




 会議当日、俺は会議室の上座に着き、師匠とアーネストを横にはべらせていた。

 この会議には各集落の長か、もしくはそれに準ずる者が出席する。

 そしてアテナイ以外の集落は種族ごとに集まっているので、そこの長は各種族を代表する存在でもある。


 ちなみに旧エウレンディアを構成していた各種族は、森人族エルフ闇森人族ダークエルフ山人族ドワーフ猫人族リンクス狼人族ウルバス虎人族ティグラス獅子人族ライアス熊人族ベアラス狐人族フォクサスの9種族だ。

 ただしダークエルフは北の森林地帯に集まっているので、この場には来ない。


 出席者が揃うと、まずはアーネストが挨拶あいさつをした。


「今日は遠路はるばる来てもらって感謝する。私がこのアテナイの市長、アーネストだ」


 すると近くに座っていたフォクサスの女性が、辛辣しんらつな口調で応じる。


「フンッ、めったに連絡をよこさないアテナイからの召集なんて、一体なんの用だい?」


 茶色の髪に黒目のスレンダーな女性で、頭の回転が速そうな感じの人だ。

 タバコの煙を吐きながら悠然と構える様は、なかなかに手強そうである。


「それはすでに伝えてあるように、魔物対策についての相談だ。近年、魔物の脅威が高まっているので、諸君らと連携を取りたい……しかしその前に今日は、諸君らに伝えるべき朗報がある。我らエウレンディアの民に、新たな指導者が生まれたのだ。殿下、お立ちください」


 アーネストに促されて立ち上がると、俺の紹介が始まる。


「混乱を避けるため、ごく一部の者にしか知らされていなかったが、今は亡きヴィレルハイト王には、幼い継嗣がいた。それがここにおられるワルデバルド殿下だ!」


 アーネストの誇らしげな発言に対して、会場の反応は薄かった。

 出席者の声を代弁すれば、”今さら何を言ってるんだ、お前は?”、って感じだろうか。


 そんな微妙な空気の中で、さっきのフォクサスの女が口火を切った。


「アハハハハハハッ……わざわざ呼び出しておいて、なんの冗談だい、それは?」

「全くだ。よりにもよって、国を滅ぼしたヴィレルハイトの子供だと? 仮にそれが事実だとして、今さらそれがなんの役に立つ?」

「もしそれが本当なら、まずはそこで土下座でもしてもらわんとな。ガハハハハッ」


 それに続いて次々と暴言が出てきた。

 しかしこれはある程度、予想されていたことだ。

 元々、帝国に国を滅ぼされた前王おやじの評価は、著しく低い。

 それは戦闘力に優れる獣人種ほど強い傾向にあり、ここに集まった首長の多くがそうだ。


 その後もなかなか暴言が治まらなかったので、俺はその場で盾を展開し、七王を召喚してやった。


「出でよ、七王!」


 すると光と共に七王が現れ、白虎インドラ火竜アグニが低い唸り声を上げる。

 途端に静かになったところで、アフィが俺の頭上に舞い上がり、出席者に警告を発する。


「口を慎みなさい、エウレンディアの民よ。我が名は光王アプサラス。我ら七王はワルデバルド殿下を主と認め、王国再興に力を貸すものなり。殿下へのいわれなき中傷は、我らへの侮辱とみなすこと、ここに申し伝える」


 さすがにインドラたちの威嚇いかくとアフィの警告を前にして、文句を言える者はいなかった。

 しかしそのままでは雰囲気が悪いので、アフィだけを残して七王を送還すると、彼らに話しかける。


「さて皆さん、脅すようなことをして申し訳なかった。俺がエウレンディア王家の生き残りである、ワルデバルドです。以後、お見知りおきを」


 この言葉で、出席者の緊張が少し解けた。


「フ、フン、一応、七王の盾は使いこなせているようだね。しかし今さら王国再興に力を貸せだなんて、都合が良すぎやしないかい?」

「そうですかね? ええと、名前は?」

「シーリンだよ。フォクサスの族長代理さ」

「よろしく、シーリンさん。それで王国再興の件だけど、みんなが生き残るためにも、ぜひなし遂げる必要があるんだ」

「あたしたちのためだって? そもそもあんた、なんで今頃になって出てきたんだい?」


 ここで師匠が立ち上がった。


「それについては私が説明しましょう。14年前、王都が襲撃された際、ヴィレルハイト王とサリアリーア女王は、城と共に討ち死にされました。そんな中、近衛戦士長のアハルドが殿下を救い出し、隠れ里にお連れしたのです。しかし当時の殿下は無力な赤子であり、七王の盾も失われた状態。その存在を明かすのはあまりに害が大きいと我々は判断し、公表を避けました」

「そんなこたあないだろう。王族の名の元に力を合わせれば、もっと戦うなり、交渉するなりできたんじゃないか?」


 ベアラスの男から、反論の声が上がった。

 しかし師匠は淡々とそれに答える。


「当時、森林地帯に逃げ込んで、生活基盤を築くだけで精一杯だった我々に、帝国軍とやり合う力などありませんでした。そんな状態で殿下の生存を公表すれば、帝国軍に執拗しつように追い回されたことでしょう。帝国は王族の根絶を狙っていましたからね」

「む、それはたしかにそうかもしれないが……」


 ベアラスの男が口ごもる。

 その他にもいくつか反論が出たが、師匠が理路整然と論破した。

 いかに勇ましいことを言っても、敗戦後のエウレンディアが悲惨な状況にあったことは、誰でも知っている。

 やがて俺たちを非難する声は、上がらなくなった。


 その後はまたアーネストが話を引き継ぐ。


「さて、これで殿下の存在を隠さなければならなかった事情は、理解してもらえたと思う。そのうえで重要なのは、殿下が七王の盾を我らにもたらしてくれたことだ。これによって七王の戦闘力が加わっただけでなく、精霊との契約が可能になった」

「だからなんだって言うのさ?」


 シーリンがいらだたしげに噛みつくと、アーネストがていねいに説明する。


「七王の盾は精霊を呼び寄せるという話ぐらいは、聞いたことがあるだろう。加えて光王様には、精霊との契約を支援する能力もある。これによって、すでに隠れ里で新たな精霊術師が生まれているそうだ。今後、バラスでも術師を養成することで、魔法戦力の大幅な増強が期待できる」

「ハンッ、あんたらにとっては、大幅に戦力が増強できるってわけかい。いいねえ。あたしらにも少し分けて欲しいもんだ」

「それについて殿下は、他の集落とも連携して、魔物討伐に当たりたいとおっしゃっている」


 その発言に、会場内がどよめいた。

 よほど意外だったのだろうか。

 それを肯定するように、シーリンが皮肉そうに言った。


「へえー、ずいぶんと気前がいいじゃないかい。今までは相手にもしてくれなかったのに」

「それは状況が変わりつつあるからだ。実は先日、殺戮竜キラーラプトルという魔物によって、うちの狩人が3人やられた」

「おいおい、そんなのはよくある話じゃないか。俺たちは日夜、魔物と戦っているんだぜ」

「いや、今までとは違うのだ……おい、それをここへ」


 ベアラスの男が文句をつけると、アーネストが部下を呼び寄せた。

 その部下が布に覆われた物を運んできて覆いを外すと、下からラプトルのはく製が現れた。


「こんな魔物が20匹、巨大なボスに率いられて群れを作っていた。幸いなことに殿下と七王の力で撃退したが、我々だけで立ち向かっていれば、全滅していただろう」


 するとベアラスの男が、顔をこわばらせて言う。


「マジかよ……こいつは相当に厄介な奴だぞ。こんなのが20匹もいたら、俺らでも全滅しかねない……」


 それを見たシーリンが、意外そうに問う。


「そんなにヤバいのかい? こいつら」

「ああ、身体能力も凄いが、けっこう知恵も回る奴らでな。1、2匹のはぐれならなんとか倒せても、20匹の群れなんてとんでもない話だ」

「そうだな。これはたまたまはぐれて大魔境から出てきた、なんて問題じゃない」


 ベアラスの話に、ティグラスの男も同意する。

 すると他の集落からも、ポツポツと異変の報告が上がりはじめた。

 それらの証言を合わせると、確実に魔物の脅威が高まっていることが認識される。


 ここでアーネストが、準備していた対策を提案した。


「聞いてのとおり、帝国よりも先に魔物への対処をする必要があるのだ。しかしこれはある意味、いい機会だ。王国再興の前段階として、防衛態勢の見直しを図ろうと思う。まず各集落に遠話の魔道具を設置し、魔物の出現情報を共有したい。それと並行してエルフの魔法戦力をアテナイに常駐させ、魔物の討伐に当たるのだ。そのうえで旧エウレンディア国民を呼び戻し、開戦の準備を整えたいと考えている」

「なるほど、魔物の出現した所へ部隊を動かし、効率的に討伐するのか」

「そうだ。さらにリンクス、フォクサス、ウルバスなどから探知能力に優れた者を集め、偵察部隊を編成したい。偵察を積極的に行うことで、索敵能力を高め、確実に魔物を始末するのだ」


 そんなアーネストの提案を、多くの者が前向きに捉えていた。


 しかし、それでもなお納得しない者もいる。

 フォクサスのシーリンが、また噛みついた。


「へえ~。あたしらみたいなハンパ者を頼ろうだなんて、よっぽど困ってるんだねぇ」

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