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エピローグ:周りの女子は肉食系

 記念式典を終えてからも、俺たちは忙しく過ごしていた。

 国を再建するだけには留まらず、周辺国を巻き込んだ巨大な商圏を作ろうというのだから、それも当然だ。

 しかし、式典の演説で火のついた国民の勤労意欲は凄まじく、あれよあれよというまに国と市場が形を成していく。


 普通なら絶対に行政機構が追いつかないところだが、そこは師匠の辣腕らつわんが発揮された。

 厳選された官僚たちが、師匠にビシバシとしごかれ、バリバリと仕事をこなしているそうだ。

 王城の官僚区域は夜遅くまで灯りが消えず、エウレンディアの不夜城と呼ばれているらしい。


 もちろん、俺も働いてるぞ。

 たとえばどこかに宿場町を作る、なんて計画が出たとするだろ。

 すると俺もそこへ派遣されるんだ。


 ガルダにアニーとレーネを同乗させ、さっそうと駆けつけると、民衆が熱狂的に迎えてくれる。

 そして町の建設を宣言したついでに、ソーマを召喚して、行政庁舎をその場でおったてるんだよ。

 俺とアニーたちでな。


 大きな建物がわずかな間にできあがる夢のような光景に、民衆はさらに熱狂し、命懸けで働いてくれるって寸法だ。

 別に命は懸けなくていいんだけどな。

 そんな感じで国中を回ったから、開拓は進んでるし、俺たちの人気もうなぎ上りだ。

 おかげで国全体がまだ夢の中にいるようで、フワフワした感じだ。

 まあ、もう少ししたら、落ち着くだろう。



 ちなみに帝国と東方3国との紛争だが、西から回された兵力が効いたのか、だいぶ帝国が押し戻したそうだ。

 一時は帝国領の2割近くが占領されたらしいが、半分は取り戻したらしい。

 しかしさすがにそこで帝国の巻き返しも止まり、今はにらみ合ってるとか。

 近々、現状の支配地を認める形で、停戦協定が結ばれるんじゃないかって、もっぱらの噂だ。





 こうして内外の状況に目処が付いた頃、もうひとつのイベントが発生した。

 俺の結婚式だ。

 記念式典からさらに1ヶ月を経て、俺はアニーとレーネと結婚することとなったのだ。


 まず俺たち3人が神殿で結婚の誓いを交わし、正式に夫婦となった。

 その後は揃って、王城までパレードだ。

 一応、俺も白い礼服でゴテゴテと飾り立ててはいたが、アニーとレーネはそれ以上だ。


 純白のドレスと装飾品に身を包み、きっちりお化粧した2人は、とても美しかった。

 特に金髪のアニーと、銀髪のレーネが見事なコントラストを成している。

 そんな2人を両腕に抱く俺は、間違いなく野郎どもの羨望の的だろう。



 そして王城前の広場で、また俺が演説をぶちかますことになった。

 民衆に見守られる中、彼女たちと一緒に壇上へ上がる。


「エウレンディアの民よ。今日、私は2人の伴侶を得た。ここにいるアニエリアスと、レーネリアだ。2人とも、エウレンディアの3魔星として俺を支えてくれる、掛け替えのない存在だ。しかし皆の中には、不思議に思う者もいるのではないだろうか? なぜハーフエルフが、王の伴侶になったのかと。たしかに従来の価値観からすれば、ハーフエルフは半端な存在とみなされている。しかしそれは過去の話だ。彼女はその類まれなる才能を光王アプサラスに認められ、さらに精霊魔術という新たな魔法を産み出した逸材なのだから」


 ここでちょっと間を置いて民衆を見ると、意外に反発はないようだ。


「あえて私がこの場でこの話をするのは、皆にも意識を変えて欲しいからだ。これからのエウレンディアは、ただ魔物の侵入を防ぐだけではない。周辺諸国の盟主として、この大地の平和を守護する存在となるだろう。そのためには、今までのように人種など気にしていてはいけないのだ。エルフだろうと、獣人種だろうと、ヒュマナスだろうと、そんなものは関係がなくなる。その血統ではなく、自身の意志と、行動で評価される国。私はエウレンディアを、そんな国にしたい」


 再び言葉を切って、聴衆を見回した。

 そして最後の思いを、言葉にする。


「だから民よ、今日という日を祝うと共に、覚悟して欲しい。これからは古い考えを捨て、この国を盛り立てていくのだと。今日また、エウレンディアは未来に向けて、新たな1歩を踏み出すのだと!」


 その瞬間、王都が再び歓声の渦に包まれた。

 皆が口々に俺の名を叫び、新生エウレンディア万歳と叫ぶ。

 その喧騒は途切れることなく、夜を徹して続くこととなる。




 その後しばらくして、俺たちはようやく解放され、王城の居室に戻ってきていた。


「2人とも、お疲れ」

「本当に疲れたわ。あのドレスのきついことと来たら、もう」

「ほんと、次からはもっと楽なのにしましょうよ」

「ハハハ、でも2人とも、本当にきれいだったよ」

「ありがと……でも私たち、本当に結婚したのね」

「ああ、そうさ、王妃様」


 そう言ってキスをすると、アニーは嬉しそうに微笑んだ。

 続けて他人事のような顔をしているレーネにも、声を掛ける。


「レーネも2番目だからって安心するなよ。今日、宣言したように、お前はハーフエルフの希望として、生きていかなければならないんだからな」

「うえ~、そういうの、勘弁して欲しいわ」

「い~や、やることはいくらでもあるんだから、バリバリ働いてもらうぞ」

「はいはい、国王様。でも、一番大変なのはワルドよね」

「ああ、そのとおりなのが、ちょっと悲しいな……」


 レーネにもキスをして、少しくつろごうと思っていたところへ、他の女性陣が押しかけてきた。


「ワルド、かっこよかったぞ。俺のことも頼むな」

「お前はまだ決まってねえだろうが」


 まずは竜人族ドラグナスのサツキが、自分も嫁にしろと催促しやがった。

 しかしドラグナスの中では、誰を嫁に出すかで揉めているのだ。

 まあ、十中八九、サツキに決まるとは思うが、いずれにしろまだ先だ。


 すると今度は、ソフィアとリディアが俺の肩をもみながらせがむ。


「陛下、私たちはいかがですか? こうやってお耳も治してもらいましたし」

「そうですわ、陛下。私たち、帝国でキズモノにされたって噂が広まって、もらい手がありませんの。お慈悲をお願い致します」

「いやいや、あんたら、モテモテなんでしょ?」


 たしかに彼女たちが帝国の後宮に囚われていたことは隠しようがないが、それでも彼女らはモテモテなのだ。

 その美しさもさることながら、マルレーン家という有力貴族であることも大きい。


「いいえ。私たちを救いに帝城へ乗り込んできた陛下に比べたら、物足りない方ばかりですわ。それに私は陛下のために、全てを捧げると誓いましたもの」

「そうですわ、陛下。ちゃんと豚皇帝への復讐も、果たしてくれたのですよね」

「ああ、まあね」


 先日、公職を退いたゲルハルトとジブレの始末に成功したと、報告が届いていた。

 さすがに現役の皇帝と副宰相を暗殺するのはまずかったので、いろいろと策を弄して引きずり落としてから、刺客を送ったのだ。

 まあ、そのほとんどは、師匠がやったんだけどね。

 メチャクチャ嬉しそうな顔で、報告してくれた。


 そんな話に、猫人族リンクスのリムルも割り込んできた。


「陛下、私を忘れないでください。私は本当に陛下しかいないんですから」


 それも嘘だ。

 危ないところを俺に救われた彼女は、すっかり俺に惚れている。

 見ためも良くて働き者の彼女は、それこそ引く手あまたなのだが、俺以外は目に入らないらしい。


 普通なら身分の違いであり得ないと諦めるんだが、一度ぶっこわれてから再興したばかりのこの国では、あまり問題にならない。

 おかげでチャンスがあれば、こうしてたびたび求婚してくるのだ。

 なんか俺の周り、肉食系の女性が多いな。

 しかもかわいい娘ばかりだから、あまり強くも断れない。

 う~ん、悩ましい。


「相変わらず、モテモテね、ワルド」

「ああ、男冥利に尽きるね」


 アフィが茶化しに出てきたから、こっちもヤケクソで答える。

 しかし考えてみれば、1年前に彼女と出会ったのが、人生の大転換の始まりだった。

 あれからずいぶんといろいろなことがあったのに、まだ1年ちょっとしか経ってないのだ。

 そう思うと、急におかしくなる。


「フハハッ」

「何よ? へんな笑い方して」

「いや、アフィとの最初の出会いを思いだしてた」

「あら、懐かしいわね。でもまだ、そんなに経ってないわよ」

「そうだな。ついこの間のようだ」

「そうね……でもまあ、ワルドは良くやったと思うわよ」

「ありがとう。だけどアフィたちも、良くやってくれた。とても感謝してる」

「どういたしまして。だけどまだ、これからよ」

「ああ、そうだな。今後もよろしく頼む」

「そうね。付き合ってあげるわ」


 アフィの軽口が、とても心地よい。

 なぜなら俺たちは魂でつながる、同盟者だからだ。

 彼ら七王に見守られ、エウレンディアはまた長い繁栄の時を享受するのだろう。

 願わくば、それを長く続けたいものだ。


以上で完結です。

今まで拙い文章にお付き合いいただいて、ありがとうございました。

本作は筆者の初期作をリメイクしたものですが、想像以上に難航しました。

自分なりに直したかったところは変えたつもりですが、あまりうまくまとまったようには思えません。

やはりよくよく考えて書かないと、良いものにはなりませんね。

感想などもらえると嬉しいので、よろしくお願いします。

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