プロローグ
初めまして。
初投稿になります。
1話5000字以上をモットーに投稿するつもりです。
□ ???? ???? ある会議室での会話より
報告書
販売元:有限会社アナザーワールド
電話番号:0X-XXXX-XXXX
所在地:日本国東京都
発売元:不明
販売価格:約3万
過去販売タイトル:なし
開発者:不明
販売方法:通販のみ
入手難度:S
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以上
『……これはふざけているのか?』
『いえ、本当にこれ以上の情報は出てきませんでした。まぁ、今は。ですが。』
『……サーバーの場所すら不明とはどういう事だ。』
『IPは確かに販売元です。ですが、あそこにはサーバーは確認できません……その先が不明です。』
『……確かにこの外観でどこかにサーバールームがあるというのは信じられないが。』
『大事にして良ければまだ探りますが?』
『いや、それはやめておこう。はぁ……仕方ない。僕も怒られることにするよ。』
『では、失礼いたします。』
**********
□東京都XX区 とある民家
そもそも何故こうなったのだろうか。
「なぁ、そういえばどういう風の吹き回しだ?」
分からないので今日の……いや、今の惨状の原因に聞いてみる。
「何がだ? 俺が宿題をやっている事か? それとも俺がお前の妹まで呼んだ事か? もしくはお前の膝の上にいる俺の妹の事か?」
俺の隣、テーブルの長辺でペンを走らせてる幼馴染に問い返された。
質問を軽く噛み砕いてから返事を返す。
「全部だな。お前が夏休みも始まっていない今日に、宿題を手伝えと呼んだことも、呼び出しが俺の妹セットなことも、よく分からない姿勢で宿題をやってるお前の妹も、俺には全部が分からん。」
「宿題は後顧の憂いを断つためで、お前の妹はうちの妹と宿題のため、その状況はっ……俺にも分からん……」
途中までスラスラと答えていたのに最後は間があるのは何故だろう。
確かに質問には答えてもらったのだが……釈然としないのは何故だろうか。
俺が今もって悩んでるいると逆隣り、同じく長辺、幼馴染の向かいに座り宿題をしていたうちの妹から声がかかる。
「大樹さん、私の分の『若葉ちゃんの』宿題は終わりましたよ。あとは何やれば良いですか?」
「おー、相変わらず助かるよ冬華ちゃん、若葉の分まで押し付けて悪いな。で、ここ教えて欲しいんだけど、分かる?」
中学生に勉強を教えてもらう高校性……うん、並べると情けなくて涙が出てきそうだ……
そして、そんな情けない幼馴染にスラスラと答えれるうちの妹もどこかおかしいのだが、それは置いておく。
そんな幼馴染の二人、上地大樹とその妹若葉の宿題消化のために俺、天城秋悟と妹冬華は上地家を訪れていた。
と、いっても隣の家なんだけどね? もっと言えば両親の仲が良すぎるのか、家は繋がっているんだけどね。
そんな風に思考がうちと上地家の家庭環境に差し掛かるあたりで冬華がいる側のちょっと低いところから声がする。
「終わったー。これで先生にも、お姉ちゃんにも怒られなくて済むよっ! きゃっほー。」
……人の膝の上で喜びを表現しないで欲しい。
「若葉ちゃん、私に半分押し付けたことは夏織姉さんにちゃんと報告するからね?」
「そんなーっ!? 冬華ちゃん、お願いだからそれはやめてーっ!?」
喜びを表していた顔が、妹の一言で絶望に塗り替わった。うん、良い具合に青いな。
「それが嫌だったら、大樹さんみたいに教わるだけでちゃんと自分でやりなさい。」
追い打ちのように正論をぶつける。容赦ないなぁ冬華……
それにしても、本当にこの兄妹はどうしたのだろうか。夏休みの宿題なんて最終日にしかやらないと思っていたんだけど。
そして横の大樹からも喜びの声があがる。
「終わったっ! これで勝つるっ! これで遊べるっ!! 俺は自由だぁぁぁあああっ!!!!」
喜びすぎだろう。まぁ、でも宿題が終わるといつもこんな感じだった気もする。
夏休み最終日の深夜、言い方を変えれば学校が再開する日の早朝も、こんな感じの叫びで起こされてた気がする。
まぁ、終わったならお暇しよう。自分の分もとっくに終わってるんだし。
「じゃあ、買い物に行こうか。冬華と若葉ちゃんはどうする? 晩御飯何食べたい?」
ちなみに大樹は強制的に荷物持ち決定。慈悲はない。
「あたしは寝る! 晩御飯は中華が食べたい!」
「私は一緒に行くわ。晩御飯は簡単なものが良いと思う。それから量が増せるもの。具体的には具沢山炒飯がお勧めね。理由は秘密よ。」
「俺も寝る! 夜に備えて寝るぞ!! 晩飯は夜食にも転用出来るものが良いと思う。」
だから大樹は荷物持ちだ。そしてお前に意見は聞かなかったはずだ。
それより何故か全員一致な意見が出ていることの方が不思議だ。
いつもはメニューを決めるのに悲喜交々でじゃんけんしたりするのに……何故「大樹さんは多分荷物持ちで運用されると思いますよ。ですよね? 兄さん?」……だ……
「あ、あぁ……大樹は荷物持ちだな。じゃあ夜食に出来て、割り増し出来て、中華か……冬華の言う様に炒飯にしようか。五目炒飯なら量も多くなるし、一部炒めずにおにぎりにでもしておけば夜食になるだろうし……添え物と汁物作れば良いから、楽だしな。」
考えてた事が軽く飛んだけど、まぁ、良いだろう。
「じゃあ、買い物行くから片付けて……若葉ちゃんは寝るなら楽な格好でね。いつも見たいに寝たら駄目だよ?
それに、大樹も逃げるなよ。逃げたらお前だけ一週間ぐらい特別メニューにしてやろう。それじゃあ、支度して玄関前な。
冬華も勉強道具を置いておいで。その間に米研いどくから。」
「はい、兄さん。」
「うっ…… はぁーい。 分かりました。」
「容赦ねぇ……」
軽く注意しただけなのに、何故そこまでしょんぼりするのか……
それに大樹はあれだけ前科を作っておいて何故そんな感想か。特別メニューにするのも手間が掛かるんだぞ。
そんな感想を抱きながら部屋を出て、一階にある台所へ向かう。
何にしても変な違和感は消えないわけだが、まぁいい。
自分の家の方の台所に立ち、今晩のメニューを頭の中で振り返る。
うちの天城で食べるは俺と妹の冬華、それに今は居ない弟の3人。
それに、上地で食べるのは大樹と若葉ちゃん兄妹の2人。
5人分の晩御飯と食べ盛りどもの夜食も賄うとなると……いくらメニューが炒飯で、割り増すといっても5人で5合じゃ足りない気がする。というか足りないだろう。
もういっそ1升炊いてしまって、残ったら残ったとき考える方が速そうだ。
よし。と軽く気合を入れて冷蔵庫に掛けてあるエプロンを付ける。
次にシンクの下から、大きめのボウルを手に取る。
次に棚を引き出し、一番下の米袋から米を掬う。1回、2回、3回…………10回と。
ちょっとボウルが重い。確か一升は1.5kgだったっけ? そのままシンクに向かい米を研ぎはじめる。
やっぱり一升釜の炊飯器を買ってくれたおばさんには感謝だな。
これが無かったら何回かに分けて炊かないと行けないし、手間が多くなる。
研ぎ終わった米を釜に入れて水を足す。よし。っと。
あとは冷蔵庫の中を見て買い足すものを考えないといけない。
ちなみに冷蔵庫はうちの親が買い替えてかなりデカい。735リットルという大容量だ。
買った後に母親がぐったりしていたのが記憶にある。そういえばあれは何でだったんだろう。
中身を一通り確認し終わった頃に冬華が声を掛けてくる。
「兄さん、終わりました? 何か手伝いますか?」
「いや、特には無いよ。明日の朝をどうしようか考えてただけだから。行こうか。」
俺はエプロンを元の位置に掛けながら返事をする。
「はい、兄さん。」
妹の返事を聞きながらいつも通りに買い物へと出かける。
玄関前で大樹と合流しそのままスーパーへと向かう。向かうのだが……
「大樹さん、荷物って今頃でしたっけ?」
「そうだなぁ……春夜が受け取るって言ってたけど今頃のはずだぞ。」
「確か14時から16時の間でしたね。間に合って何よりですよ。」
荷物? また何か通販で買ったのだろうか。
大樹が通販で何か買うのは常だから良いとして、その通販物に冬華が噛むのは珍しい様な。
聞けば分かるか。という事で早速訊ねる。
「また何か買ったのか?」
「あぁ、いつものだよ。」
「って事はゲームか……。おばさんにまた小遣い止めらるぞ?」
「今回に限ってはそれはないなぁ……」
……ん?
それはどういう事だろう。ゲームを通販で買って、5回に1回は小遣いを止められて、こっちに泣きついてくるのに……
「まぁまぁ兄さん、今回の買い物は春夜と私と若葉ちゃんから頼んだ物ですから。おばさんに叱られそうになっても庇うって、そういう取り決めなんですよ。」
「へぇ、ゲームに興味の無い春夜や冬華が頼むなんて、珍しい事もあるもんだな。」
「そうそう。だから俺は叱られない。叩き出されない。閉め出されもしない。小遣いも止められない。端末も取られたりしない……はずだ。」
大樹がやや遠い目をして過去にされたことをあげていく。
それ、フラグって言うんじゃないか……? まぁ、そういう理由なら俺も庇う側に回ってやろう。
それにしても春夜までがゲームねぇ……
うちの家族はゲームしない人が多いんだけどなぁ…今は単身赴任中で家事万能の父さん、職場に缶詰にされる暴走家族愛の母さん、両親は共にゲームはしない。しても怒りはしないが。
大学進学で家を出た、穏やかマフィアの夏織姉さんもあまりする方ではない。俺もほぼしない。
弟の体育万能な春夜もしない。というか出来ない。する時間が無いと以前言っていた。
妹の勉強万能の冬華もしていなかったはずだ。こちらもそんな時間が勿体ないと言っていた気がする。
変わって上地は兄妹揃ってゲーマーだ。テーブルゲームとかコンシューマーゲーム、PCゲームまで手を伸ばしてるのは知っている。
「まぁ、ほどほどにな。のめり込んでも良いけど、節度は守るように。」
「はい、兄さん。」
「……特に疑問も挟まずに、その台詞が出るお前が分からねぇよ……」
やりたいならやれば良いと思う。もちろん思うだけじゃなくそれなりに応援もする。
家族がやりたいって言うなら特別反対する理由もない。春夜の成績はもともと絶望的だし。冬華がゲームをしたぐらいで成績を落とすとも思えない。
若葉ちゃんは元々ゲーマーだ。節度ぐらい守るだろう。
そう思ったからそのままを言葉にしたのに、何故疑問を挟むと思うのだろうか。
「ところで兄さん。何を買うのですか?」
冬華がカートに買い物かごを入れながら聞いてくる。
「そうだなぁ。野菜がほとんどであとは鳥肉と牛肉。それからパンとシリアル。あとは飲み物かなぁ……」
「じゃあ鳥肉を多めにして、唐揚げを添え物にしましょうか。汁物用につみれも買うと楽になりますね。明日の朝は卵とじゃがいもがあれば、それなりになりますね。」
「じゃあ、そうしようか。牛乳と卵が追加で必要かな。」
「……重量物と壊れ物……こき使う気全開だな……」
「今晩と明日の朝食が要らな「全力で荷物持ちさせて頂きますっ!」……よろしい。」
嘆きに相応しい返答をしたら、手のひらを返してきた。周りで主婦っぽい人たちが微笑んでるけど、気にしない。いつもの事と3回ほど繰り返して平静を保つ。
そのまま欲しいものをかごに入れ、清算を済ませて、重量物を優先的に詰めたマイバックを大樹へと渡す。
俺は壊れ物や液漏れしそうなものを詰めたマイバックを持って、その他の軽そうなものを詰めたものを冬華へと渡す。
「今日はいくらだったんだ?」
「5千円ってところかな……どうしたんだ?」
「いや、俺たちの食費って一体どうなってるんだろうって、ふと疑問に思った。」
「食費は毎月貰ってるぞ。月末か月初めに食費用の財布に一定額が収まってる。余った分は回収されてるみたいだ。ちなみにおばさんが居ないときの、お前の昼食代もその財布から出してるな。」
「は? ……ちょ、えぇ……!? 初耳なんだけど!?」
「ん? まぁ、今まで聞かれなかったからな、と言うか知らなかったのか?」
「えぇ……なんか他にも今更な初耳がありそうで怖いんだけど……」
逆に今まで気にもしなかった方に驚くよ。てっきり知ってるものだと思っていた。
じゃあ二人のお小遣いを管理してるのが夏織姉さんで、居なくなった後は冬華が管理してるのも知らないのかな?
冬華の方を見るとこちらに気づいたのか、軽く首を振る。
はいはい、言うなって事ね。了解。了解。
「今まで通りに、気にしなければ良いんじゃないのか? 特に発覚して困ることも無いだろうし。」
「いや、そうだけど……もしかしてお前を怒らせたら、昼飯代が貰えないとかあるのかと……」
「何を言っているんだ。俺がどれだけ怒っていても、お前の昼食代を出さなかったことはないぞ。」
「あぁ……そういえば、お前が口を聞いてくれなくても、先に学校に行ってても、昼食代は置いてあったなぁ……」
「そういう事。出さないで置こうかと悩むことはあっても、出さなかったことはない。」
「悩んだ事はあるのかよ……」
「そりゃあ、それぐらいは悩むだろう。」
そんな馬鹿話をしてるうちに家に着きそうだ。
「この後はどうするんだ? 最初の宣言通り寝るのか?」
「ん。そうするつもり。16時には若葉も起きるだろうし、18時には俺も起きる予定だ。今からなら3時間は寝れる。19時には全部終わってないといけないからなぁ。」
「19時に何かあるのか? まぁ、大樹の事だからオンラインイベントとかそんなものだろう?」
「そうそう。よくお分かりで。」
「はいはい、じゃあご飯は18時な。」
「あいよー。ほい、荷物。またなー。」
そんな挨拶をして大樹は俺に荷物を押し付け、上地家の玄関に入っていく。
こっちはこれから夕飯の支度だ。冬華もいるしそれまでには全部終わるだろう。
予定を軽く組み立てながら俺達も自分の家の玄関を開けて帰宅する。
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