子機VS.携帯
この小説は、偶然とノリと勢いをPSPからお送りいたします。
― おい貴様。
― ンだジジイ。
― 何故其処に居る?
― 似合うダロ?
― 何故其処に居ると聞いている。
― 置かれたからに決まってんダロ。モンクあっかコラ。
― 其処は我の居場所だ。
― 知ってるケド? それで?
― どけ。
― 無茶言うなよ。ポルターガイストでも起こせっての?
― む、しかしこのままでは我も貴様も電池切れだぞ。
― 俺様は大丈夫。後五日はイケる。
― そうか。しかし我は貴様の様に長時間持ち歩けるように出来てはおらんのだ。電池が切れるのも時間の問題……
― いいじゃん。親機があるダロ?
― 何? 貴様、据え置き電話の子機たる我が登場してからというもの、どれ程電話が便利になったか、知らぬ訳ではあるまい。
― 携帯電話である俺様の便利さには遠く及ばないがな。
― 何だと? つい先程電話帳として使われた挙句、ついうっかり我の充電器に入れられた分際でよくそんな事を口に出来るものだな。
― 電池が少ないにも関わらずついつい机にポイされた奴よかマシだ。
― くっ、大体貴様、電話と呼ぶには少々無駄な機能が多過ぎるのではないか?
― ンだそりゃ? ヒガミか?
― 否、その分短命なのかと思うと、余りにも哀れでな。
― はぁ? イミ分かんネェんだけど?
― ふっ、携帯は所詮使われるとしても二、三年が関の山。その頃にはより高機能な機種が出回るからな。そこでアッサリと見限られ、買い換えられる運命なのだ。それに比べ、我ら据え置きタイプは特に大きく変わる所が無い故に、我の様に十数年と使われ続けるのだ。判るか? 貴様は我の様に手垢にまみれる事も無く、せいぜい後一年余りで無惨にも廃棄処分になるのだ。しかし我はこれから先何年も使われ続ける。貴様が廃棄処分された後もな。わっはっはっはっ。全く、皮肉なものだな
― テメェ……言うじゃネェか。テメェがムダに長持ちなのは暗に俺様の活躍のせいで仕事がメッキリ減ったからじゃネェのか? そりゃ使われなきゃ壊れたかどうかも判んネェからなぁ。
― ほう?
― 今となりゃテメェの通話以外の唯一の補助機能、FAXでさえ俺様のメールの前では霞んでみえるぜ。
― ああ、そうだな。そのメールとやらには多いらしいな。迷惑な輩が。彼らの活躍に持ち主も大層苦労している様だったぞ?
― テメェにだって迷惑電話掛かってくんダロが。
― 一方的なメール等と一緒にするでない。我の場合は相手によってはいい鬱憤晴らしにもなる上、問答無用で切ればそれまでだ。何より、貴様の方はその量が桁違いではないか。受信料も嵩む一方だ。
― 俺様は定額制だコノヤロウ。つーかそういうのの量が多いのは持ち主がいつでもどこでも持ち歩いてる物だという社会的・一般的な認識があるからだろう? それ程俺様は持ち主に必要とされてんだよ。短命? 上等だぜ。太く短くが俺様の生き様だ。
― ほほう? いつでもどこでも? その割には今貴様は我の充電器に置き去りではないか。
― 限りなく薄っぺらい生き様晒してるテメェに言われたかネェよ。その充電器から追い出されて、机の上に転がってるテメェにはよ。
― しかも外でも通信出来ない場所があるらしいな。山とかトンネルとか。思っていたより大した事は無いんだな。
― スルーかよ。自分の事は棚上げかよテメェ。つーかその辺は電波届かネェんだからしゃーねーダロが。テメェなんざ親機から何メートルの世界でしか機能しネェクセに何言ってやがる。
― おいおい、そこで張り合うのか? 携帯電話が据え置き電話の子機に対して? これはこれは随分と器の大きな携帯電話に出会えたものだ。
― テメェ、マジでムカツクな。
― それ程でも。
― そんなに悔しいのか?
― ……何がだ? 先にも言ったが、貴様の多機能には哀れみの情しか湧かんぞ。
― 違う違う。そっちじゃネェよ。
― 何だと言うのだ。
― 俺様が余りにもこの充電器にマッチしてるって事にだよ。
― ……!
― あらら? 図星?
― ソ、ソンナワケナカロウガ。
― どうだか? テメェはただ足元でつっかかって立ってるだけみてぇだが、見ろ。俺様はポケットにスッポリって感じじゃん? 雰囲気がもうさ、ここが俺様の場所っぽくて焦ってんダロ?
― 何を言うか! 其処は誰が何と言おうと我の寝床だ!
― なぁにムキになってんだよ? 誰もこんな場所欲しいなんて言ってネェダロが。俺様コレじゃ充電されないしぃ。ケッケッケッケッ。
― ぬおぉぉぉ! もう我慢ならん! 勝負だ! この際我と貴様、どっちの方が持ち主に必要とされているのか!? 白黒ハッキリ着けようではないか!
― お? いいのか? そんな事言って後で吠え面かくのはテメェだって事は目に見えてるぜ?
― ふん! 十年に渡って使われ続けてきた我が、買われてからまだ一年程度の貴様なんぞに負けはせん!
― 人間ってこういうの新品の方に愛着湧くモンなんだぜ?
― 携帯なぞ一年も経てば立派な古種だろう!
― ぐはっ! い、痛いトコ突いて来やがる……すでに前時代の機械となっているクセに……いいだろう。その勝負、乗ってやろうじゃネェの! ……で、どうすんだ?
― この状況を見た時の持ち主の反応で勝負だ!
― いや、それどうなったら勝ちよ?
― 雰囲気だ!
― ……えらく直感的だな。まぁいいけど。
「母さーん。俺の携帯ドコ行ったか知らねー?」
― む、早速来たようだな。
― スゲェ計った様なタイミングだな。つか今のセリフの時点で俺様の勝ちじゃね?
― 言ったハズだ。この状況を見た時の反応で勝負とな。まだ持ち主はこの状況を見ておらん! 戦いはまだ始まってすらいないぞ。
― あぁ、計算済みって訳か。
「あ、そうだ。さっき電話した時あったな。あそこに置きっぱかな?」
― ふふふふふ、さあ来たぞ。どう反応する!?
― てか何で俺様こんな事やってんダロ? アホクセェ。(←早くも冷めた)
「アレ? あ~また子機戻すの忘……れ…………」
― ………………
― ………………
「………………」
― ………………
― ………………
「……ウ…………」
― ウ?
― ウ?
「ウハハハハハハハハハ! ちょっコレ……ブハハハハハハハハ! サイコ~~~~~~~! 母さん来てみー!」
「えーなにー? ……アラ、これは……プ……」
「何かさ! 携帯がさ!『ここ、俺の場所だけど何か?』って言ってるみたいに見えるんだけど! スッゲェ偉そうなんだけど! ハハハハハ面白れぇ~メッチャハマッてるし!」
― ………………
― なあ、コレどうなんだ?
― ……携帯よ。
― おう。
― 参りました。
― ……あ~、おう。
その後、子機の充電器にハマッた携帯の姿は他の携帯に写メで撮られ、子機は無事あるべき場所へ戻された。
数週間後。
「もしもし、あの、すいません。携帯、電車の中に落として来たみたいで……一先ず電波止めて貰いたいんですけど――」
携帯は落とされた。
そして二度とこの家に戻って来る事は無かった。
― ふむ。試合に負けて勝負に勝つとはこの事だな。
所詮世の中生き残った者勝ち。
さて、家に子機のある据え置き電話と携帯電話をお持ちの読者様、是非一度携帯を子機の充電器の上に置いてみて下さい。
そして子機を使用後、戻そうと思った時のシチュエーションを思い浮かべてみて下さい。
うまくジャストフィットすればもれなく爆笑必至です。こんな小説目じゃないです。
小説の評価・感想よりもむしろそっちの感想の方が聞きたいくらいです。
では、いつかまたどこかでお会いすることを楽しみにしております。m(_ _)m