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プリンセスセレクション  作者: 笑顔一番
第三章 紅の残虐姫
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83話 おままごと

 今の時点では一番会いたくない人間がそこには立っていた。メチア……顔立ちは整っているのに、こちらを見下すような目線や挑発的なニヤケ顔、特徴的な吊り目も相まって野生の虎を彷彿とさせる。


「イジメとかじゃねえよ。適当なこと言うなって」


「どーだかな?やってる本人は意外とそんなつもりはなかったって言うみたいだぜ?」


 茶化したような物言いに俺は内心で苛立ちを募らせた。目の前の少女との出会いは最悪で、俺は訳も分からないままメチアの朱槍に貫かれて命を落としたはずだったのだ。

 その後、ナニィが持ち込んだ宝珠なるものを偶然飲んでしまっていた関係で命拾いした俺はこの少女を殴り飛ばしている。

 お互いに良い印象がないのは自明といえた。


「ち、違うんです。神無くんは私のこと虐めたりしてないです。泣いてたのは、その……私が悪くって」


 一触触発となって睨み合う俺たち。その間に割って入るように委員長が俺を庇うように立ち塞がる。


「だから、神無くんは何も悪くないんです。私の大切な友達を、悪く言わないでください!」


 委員長から普段聞けることのない大きな声。自分を擁護する声に頼もしさを感じるが俺は内心で冷や汗を書いた。目の前にいるのは常識が通用しない凶悪な相手だ。神経を逆撫ですれば何が起こるかは誰にも分からない。


「……うん?」


 最悪な事態になる前に、自分が盾になろうと委員長の前に出る。啖呵を切られてメチアがどんな行動に出るか……。


「……はぁー、めんどー」


 しかし予想に反し、メチアの顔には憤怒も苛立ちも浮かんではいなかった。あからさまに煩わしそうな表情を浮かべていた。


「ま、なんつーの?そいつの勇気に免じてここは引き下がってやるぜ。俺様の器がでかすぎることに感謝するこったなー」


「あっ、おい!」


 呼び止める間もなくメチアは教室から出ていく。荒れごとにならなかったことに拍子抜けしてしまった。


「一体何だったんだ?」


 俺は頭に疑問符を浮かべて、メチアが出ていった教室の扉を呆然と見つめる。


「……」


 そして俺の背中に隠れる形となった委員長がぴったりとくっついて離してくれそうにない。


「参ったな……」


 メチアと対峙するのがよほど恐ろしかったのかもしれない。

 無理やり引き剥がす訳にもいかず、委員長が落ち着くまでしばらくこのままでいることにした。

 




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