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プリンセスセレクション  作者: 笑顔一番
第三章 紅の残虐姫
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80話 朝早いんですね?

 通学路、学生が学校に行くために誰もが通る道だが、普段ほど人がいない。

 それもそのはずムクロが家を出たのは始業開始よりも幾分か早い時間だったためだ。


「それで誰が怪しいと思うんですか?」


 とてとてと軽い足音を奏でながらナニィがそう上目遣いで聞いてくる。

 この少女を伴うために、いつもより30分は早い登校になる。


「んー?」


「んーじゃないですよ!協力者ですよ、メチアさんの協力者!」


 俺たちは談笑しながら歩き慣れた通学路を進む。

 周囲にはちらほら学生服を来た生徒たちが歩いていた。

 いくら早めに家を出たとはいえ日直などで早めに家を出た生徒はちらほらいる。それで学生の比重が高いせいか、隣にいる私服姿のナニィが目立っているような気がしてしょうがない。

 さきほどからこんな時間に年若い少女が私服姿で歩いているのだから人目も引くのは当然と言えた。


「証拠がある訳じゃないから適当なことは言えねーが、まあやっぱり先生連中が怪しいわな」


「どうしてそう思うんですか?」


「単純に身元不確かな奴を学園に編入させるなんて芸当は普通の生徒には無理だ、かといって協力者が外部の人間ならメチアを学園に放り込むメリットがなさすぎる」


 どうやってメチアをねじ込んだかは知らないがかなりの手間はかかったはずなのだ。

 それをする以上は協力者に相応のメリットがなければおかしい。


「でもこれはあくまで本当に協力者が居たらの話、メチアが独力で学園に編入するための手はずを整えていた可能性を0にするもんじゃないが」


「来たばかりで右も左も分からないのに、そんなことできるものなんでしょうか?」


自分が一人なら右往左往していた自信があるのかナニィからはそんな疑問が出てくる。


「そんなことをやってのけた連中がいる。お前も覚えてるだろ?奴らのこと、つい最近まで戦ってたんだから」


「そうです!選定官の人たち」


 ジャウィン、アリス、ヘカテア。遭遇しただけで三人のプリンセス達は何らかの手段を用いて本試練開始を前にこちらの世界に潜入していた。

 彼女たちの話では1年だが、それだけの準備期間があるなら前提が変わってくる。


「後は一応メチアが使う魔法がジャウィンみたいに潜入、隠蔽なんかに向いてる可能性もあるが」


「それはないと思います。一度だけ手を合わせてなんとなく分かるんですけど、彼女はゴリゴリの肉弾派近接タイプです。そういう搦め手はやってこないと思うんですよね」


「それについては俺はそう思う、あいつ……戦うのが本当に楽しくてしょうがないって顔してたからなー」


 あの時、夜の学園での戦いは突発的に起こったものだったがそれすらもあいつは獣のような形相で楽しんでいたのだから。


「とりあえず協力者については俺も探ってみる。お前は学園の周辺近くで待機しててくれ、何かあればこれで連絡する。使い方は昨日教えた通りだ、スマホ貸してくれた小太郎に感謝だな」


 俺が今持っているスマホは小太郎のものだ。

 昨日事情を話した際、半信半疑ながらもナニィの魔法を体験させてなんとか納得してもらった。

 その時にネックになっているナニィとの連絡ラインの有無、それを解消するために貸し出してくれたものだ。

 自分のスマホをナニィに渡し、小太郎のスマホを自分が預かる。


「時間に余裕が出来たらもう一台契約するかー」


 月額料金も馬鹿には出来ないんだが背に腹は変えられない。

 ナニィが来てからハプニング続きだったせいで余裕がなかったとはいえ、こういう状況を想定して連絡手段ぐらい用意しておけばよかったと思う。

 後悔先に立たずというが、小太郎が協力してくれて本当によかった。


「とりあえず俺はこのまま学校にいく、ナニィは昨日行った店あるだろ? あそこで待機しててくれ、何かあったら連絡するから」


「了解です! ムクロさんもお気をつけて下さい!」


 じゃあといって別れて、走り去っていくナニィを見送る。

 一度昼休みにでも様子を見に行った方がいいだろう。

 そう思って学園へと向かうための坂道を踏みしめるとこれから始まる苦行に眉をひそめた。


「あれ? 神無君じゃないですか?」


「ん?」


 突然声をかけられて、後ろを振り向くと、そこには清楚に微笑む一人の少女が居た。


「委員長か、おはよう」


「おはようございます神無君、朝早いんですね?」


 優等生然とした振る舞いをして立つ委員長がそこに居た。




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