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プリンセスセレクション  作者: 笑顔一番
第三章 紅の残虐姫
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73話 無敵の肉盾

メチアというプリンセスが突然の転入生として乱入してくるという事態の後、色々あって飯を食べに行くことになった俺達は校門の外で待ちぼうけしていたナニィを見つけた。


「なるほど、買い物が終わったから迎えにきてくれた訳か」


ナニィは家で待っているはずだったが、、事情を聞くとそういうことらしかった。


「学校って場所に興味があったというのもあったんですけどね」


ナニィはその綺麗な白髪をかきながら校舎を見上げる。

プリンセスであるナニィはあまりこういう同年代の人と集団行動したりするようなことはないのだろう。


「ところで私、なんかみんなに見られてるみたいなんですけど、何かおかしなことしましたか?」


「あー、この時間に私服姿で出歩いたら不思議に思われるかもな」


どこの学校も今日から授業が始まっている。

授業が終わって下校しようとしたところに同年代の女子が校門をうろついていたら興味を引いてしまうのも無理のない話だろう。


(それにナニィはどうしても目立つからなー)


こいつはポンコツな面も多々あるが容姿は極めて整っている。

その透き通った絹のように白い髪や、サファイアを思わせる青い目はどうしても人目を集めてしまうことだろう。


「そうだナニィ、気をつけろ。学校にあいつが来た」


とはいえ、今回ナニィがここに来てくれたのは不幸中の幸いだ。

これでメチアに対して切れるカードが一枚増えたことを意味する。


「あいつ……ですか?」


ピンと来ないようでコテンと小首を可愛らしく傾げる。

俺は指を後ろにクイクイとやってその人物を指し示して見せる。


「いよっ! まさかお前みたいな雑魚が予選をくぐり抜けてるとは思わなかったぜ」


「あ、貴方はあの時の!?」


ニヤつきながら軽く手をあげて挨拶するメチアに、ナニィは戦闘態勢を取る。


「いつぞやの夜以来だな? まあそう構えるなよ。俺様たちは今戦える状況にはいないってことぐらいは流石のお前でも知ってんだろ?」


今は予選が終わっての準備期間中であり、プリンセス同士はお互いを攻撃することは出来ない。

恐らく負傷したプリンセスが傷を癒して仕切りなおすために設定されたルールなのだろうが、今回はその縛りのおかげで敵同士が顔を合わせあっても一触即発の状態を回避できている。


「そういえば名前を名乗ってなかったな、俺様の名はメチアだ。この準備期間中だけはお前とやりあうこともない、まあ仲良くしていこーぜ?」


メチアは友好の印にとでも言うように握手を求める。


「……私はナニィです。でも、貴方と仲良くする気はないです」


「お? こいつは手厳しいね、まあその方が潰す時に後腐れねーかな」


しかしナニィが応じないのが分かると手を下げた。

口調とは裏腹に、特に気分を害した様子はないところを見ると、握手を断られるのはメチアの想定通りのようだ。

つい数日前に潰しあった同士で和解が成立するとも思えないので当然の反応か。


「とりあえず校門前で睨み合うのはやめるとして、今からこいつらと飯食いに行くんだ、ナニィも一緒にいこーぜ」


俺はメチアのほかに小太郎と委員長を指差した。


「ムクロさん? でもこの人は!」


珍しくゴネるナニィに、俺は耳打ちする。


「頼む、ルールで保護されてるのはあくまでプリンセス同士の戦いだけだ」


メチアが星見ヶ原の生徒を、一般人を攻撃できないわけじゃない、その事実に遅まきながら気づいたナニィはハッとした表情を作った。


「いざって時にメチアを止められるのは同じプリンセスのお前だけだ。頼む、お前の力を貸してくれ」


もしもメチアが暴れ出したら、ルール上攻撃を受けないナニィの存在は正に絶対無敵の盾になり得る。

未だ相手の出方がわからない以上はナニィの協力は必要不可欠なのだ。


「分かりました。そういうことなら……ムクロさん、何かあったらすぐに私の後ろに隠れてください」


頼もしいことを言ってくれるナニィに頷いて見せる。

メチアもナニィが一緒にいるこの状況では好きに暴れることはできないはず。

どうなることかと思ったが、これで目処は立ったか。


「そろそろいいか?いい加減腹が減ったから早く行きたいのだが」


そのピリピリした空気に入ってきたのは小太郎だった。

突然の張り詰めた空気にちょっと引き気味になっている。


「あ、斎藤さんお久しぶりです」


「壮健のようだな、もしかしてメチアとは知り合いだったのかな?」


「いえ、そういう訳ではないんですけどね。話せば長くなるというか」


まさか異世界からやってきた敵同士なんですとは言えずにナニィが言葉を濁す。


「ふむ、話したくないのであればそれでいいさ。同じ釜の飯を食えば何か変わるかもしれんしな」


「小太郎の言う通りだ。腹が減っては何とやら、早速行こうぜ」


小太郎は面倒な人間関係を嗅ぎ取ったのか、深く介入せず流すことにしたようだ。

それに先程のナニィとメチアの騒動で周りの生徒が遠巻きにこちらを見ていてとても居心地が悪い。

これ以上、あまり校門付近で話を続けたくない俺は小太郎に便乗して歩き出す。

どうやらプリンセスセレクションが準備期間中になっても、俺の日常はいつも通りは行かないらしい。

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