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プリンセスセレクション  作者: 笑顔一番
第三章 紅の残虐姫
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67話 賭け事

「ふあぁ」


 中途半端に眠りを妨げられたものだから未だ眠気が抜けきらない。

 あくびをしながら通学路を歩いていた。


「随分と眠そうだな?」


 突然後ろから名前を呼ばれて振り向くとそこには見慣れた男が制服姿で立っていた。


「んあっ? なんだ小太郎か」


「なんだとはなんだ、久しぶりに会ったというのに」


 小太郎が肩を竦めて残念そうに言うが、この休みは人生でも一番濃厚な時間を過ごしていたせいか感覚がおかしくなってるようだ。


「悪りい悪りい、GW何してた?」


「店番だ、まったく華の高校生の貴重な休日に家業をせねばならんとは」


「それだけ頼りにされてるってことだろ?」


「まあ、そういうことにしておくか。それで? そっちは何をしてたのだ?」


「ああ、お姫様のわがままに付き合ってたよ」


「お姫様? あー、あの銀髪の子か……あまりわがままを言うタイプには見えなかったが」


 小太郎はナニィに着せる服を、どちらから選ぶのかと聞いた時に、ナニィが安い方でいいと発言したことを覚えているためか、そんな風にナニィを評した。


「んー、なんというか巻き込まれやすい性質みたいでな」


「そうか、ならお前が守ってやるといい。知らぬ異国の地だ、知り合いが側に居るだけでも大分違うだろう」


 ナニィの事情は知らずとも、小太郎は相手の心情を慮る。

 俺もまた、小太郎の言葉に頷く。


「まあ、しばらくはそうなりそうだな」


 結局のところ、この試練が終わるまでは少女に振り回されることになるだろうと思う。

 この調子だとナニィの姉が探しにくるまでは続きそうだ。


「ところでだな、有栖院四葉のライブ行っていたのだろう?」


「そっちが本命かよ?しゃーねえなあ」


 俺は鞄に入れておいた色紙を取り出して小太郎に手渡す。


「ほらよ、お前に土産だ」


「お、おお!!こ、これはまさか!?」


「ククッ、そのまさかだ。四葉直筆サイン入り色紙だ!」


 あの事件の後、四葉に依頼してもらったものだ。

 ちなみに俺とナニィもそれぞれ書いてもらったので、家に並べて飾ってある。


「お、おお……しかも『小太郎さんへ、いつも応援ありがとうございます』って書いてあるだとぉ?」


 小太郎は感激のあまり天下の往来で男泣きしていた。


「ありがとう、心の友よ!」


「よせよ、俺らの仲だろ?」


 熱い握手を交わす俺たちを周囲の通行人が怪訝な目で見ていた。


「あー、まあとりあえず歩きながら話すか?」


「ーーすまん、おかしなテンションになってたようだ」


「気にすんなって、欲しいもんが手に入った時って浮かれちまうもんだしよ」


 楽しみにしていたゲームが店で買った後とか思わず奇声あげてしまうことは誰にでもあると思う。


「それにしてもこんな直筆サインなんてよく手に入ったなー。サイン会でもあったのか?」


「んー、まあそんなとこ?」


「そいつは惜しいことをした。有栖院四葉はサインは全然書かないんだ、その割りには何故か握手会は頻繁にあるんだがな、俺も足繁く通ったものだが、俺の顔とか覚えててくれないかな?」


 小太郎の独白に俺は心の中で頷く。

 確かアリスは条件で握手一万人とか言ってたし、それで握手会を開催してたんだろう。

 アリスは四葉と入れ替わってアイドル活動をしていたので恐らく小太郎が握手したのは四葉ではなくアリスの方だ。

 結論から言えば別人なので覚えてる訳ねーんだが、そんな真実をあえて親友に伝えるのはあまりにも忍びない。


「まー、多すぎて難しいんじゃね?」


「だよなー」


 なのでお茶を濁して、通学路を歩く。

 こんなのんびりした時間も久しぶりだ。


「そういえば例の噂はもう聞いたか?」


「噂?なんかあるのか?」


 面白そうな話のアンテナは高く持ってるつもりだが、特に聞いたことはない。


「俺達の学校に転校生がやってくるらしい」


「転校生? 随分と時期外れなんだな」


 もう5月だぞ? 普通転校生がやってくるとしても学期が始まる4月だろうに。


「なに、きっと家庭の事情という奴なのだろう。それよりも問題はそいつが男か女か」


「やっぱみんな好きだねえそういうの」

 

 絶対ざわめくよな。転校生が来るってなると教室の浮足立った空気伝わってくるもん。


「なんだ、相変わらずこういうゴシップにだけは乗ってこないな」


「俺は俺、他人は他人ってな。人の噂話より面白い物なんて探せばいくらでも転がってるもんだぜ」


「そんなもんか? じゃあ骸にも面白いようにするか」


「ほう? なんかあるのか?」


 面白いと言われると途端に興味を引かれる自分の性分が憎い。


「転校生の性別を当てた方が今日の昼食をおごりでどうだ? 授業は午前中までだし、どこかファミレスでも行こう」


「いいねえ、そういうの好きだぜ俺。あ、ナニィも呼んでいいかな?」


 あいつの昼飯だけ弁当じゃ可哀そうだしな。


「ん、構わんぞ。なら三人分の昼食代をまとめてといこうか」


「OK、ただし選択権は俺に譲ってもらうぞ? 実はお前が情報を持ってたなんてなったら損だからな」


「いいだろう。では選択するがいい、さすれば道は開かれん」


 小太郎の仰々しい台詞を聞きながら、思案する。

 やっぱり健全たる日本男子たるもの可愛い女の子に賭けるべきだろうか?

 そんなことを考える俺の脳内に、ふとナニィやアリス、ヘカテアの顔が浮かんでは消えていく。

 最近女続きだし、もう女はいいかな? また面倒ごとに巻き込まれそうだし。


「あー、男がいいかな?」


「ということは女だったら俺の勝ちか、どうせだったら可愛い女子がいいな、うん」


 小太郎が横でうんうん頷くのを尻目に、俺達は学校へと歩いて行った。


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