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先生とわたし

先生の話③

作者: 生徒

「わたしはあなたが思うほど賢くはありませんし、知らないことのほうがまだ多い。世の中の全てなんて熟知していませんよ。君はわたしを過大評価しています。……まあそれはさておき、あなたはわたしに有名になってほしいんですか?」


 先生は首をかしげる。


「多くの人は有名になることを望んでいます。一度でいいから、たくさんの人々に囲まれて、ちやほやされたいと誰もが考えます。恥ずかしながら、わたしも若い頃はそんな妄想ばかりしていました」


 先生は照れくさそうに微笑む。


「有名になれば、多くの人々に尊敬されるでしょう。色々な人が自分に会いに来てくれるでしょう。それは光栄なことです。人間にとって、他人に認められるということは、とてもうれしいことなのです。……しかし、わたしは気づきました。有名になることは、必ずしも夢のようなことではないのです」


 先生は真面目な顔つきになる。


「有名になるということは、多くの人々に自分の名前が知られるということです。そして、自分の言葉、行動、性格、あるいは自分が気にもとめてないようなちょっとした仕草でさえ、人々は感知する。彼らは鋭い観察眼を持っています。有名になればなるほど、そんな観察眼が増えて、まるでいつも誰かに監視されているような気持ちになる。想像するだけでも、恐ろしいことです」


 先生は身震いをする。


「有名になれば、多くのものを得るのと同時に、多くのものを失います。平穏な日常、家族や友人と過ごす時間、そして自由。もしかしたら、人々の評価にのみこまれて、自分自身でさえも失ってしまうかもしれません。有名になって得るものと有名にならずに得るものを比べたときに、わたしは後者の方が価値があるように思えました。だから、わたしは有名になろうとは考えなくなりました。有名になって多くの人々に認めてもらわなくとも、こうして毎日家族や生徒の顏を見られるだけで幸せではないでしょうか」

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