Codependence
どうも、根倉マクロです。恋愛経験値0ですが、精いっぱい自分なりのラブコメという拙作をしたためました。
どうぞお楽しみください
私は、あの人に恋をした。あの人はとても大切なものを私にくれた。
だから――――――――――――――――――――――
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「おーい、久留宮。起きろー」
そう数学の教師に起こされ、僕は目覚めた。周りのクラスメイトは微笑ましそうに笑っている。僕は気恥ずかしさから、顔を少し赤くして授業に集中し始める。
集中して授業していると、授業は終了するチャイムが鳴り響いた。
「きりーつ。礼」
『ありがとうございましたー』
全員がいつも通りの挨拶をして三時限目が終了した。
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「どうした、久留宮。珍しいな、お前さんが寝るなんざ」
「あー、ちょっと調子悪くて」
ま、気を付けなよ、と僕の心配をしてくれる友人―――聖―――。その苗字とは裏腹に、体は鍛えられていて、1年にして空手部のエースのスポーツ特待生だ。だが、クラスの男子と夜遊びをちょくちょくやっているらしく、度々生活指導と称してボランティア活動に勤しんでいる。
「大丈夫?久留宮君?」
「ありがとう、花柳さん。大丈夫、ちょっと体調悪いだけだから」
彼女は花柳さん。この高校の才色兼備の美少女…とは言えないけど、この学年で3番目に可愛い、とクラスの情報通が言っていたような気がする。
黒い、丹念に器に塗った漆のような上品な髪。その身に覆われているのほほんとしたオーラ。正直、僕は彼女に恋をしていると言えば、そうなるのだろう。
「そう?なら良いんだけど……あまり無理しないでね?」
ああ、なんて優しい娘なんだろう。本当に付き合っていて良かったと思う。
そう、僕と彼女は付き合っている。きっかけは少し意外だった。
夕暮れの教室という典型的なシチュエーション。顔を赤くして彼女が言った一言は今でも忘れられない。
「あの…久留宮君っ!」
夕日に照らされた彼女は、それはとても美しかった。
「わ……その……私と……付き合ってください!」
「は……はい!」
それからの出来事は、僕にとって一生忘れられないものとなった。
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「おーい、起きろよぉ。久留宮ァ、アハハハ!」
蔑む声を聞いて、僕は目が覚めた。今しがた見ていたのは、どうやら夢だったようだ。夢でも寝ていた自分に少し笑いが込み上げつつ、唯一動かせる首を上げて相手を見上げる。
「フゥ、全く以て面白いな。さすが親友だわ、可愛い寝顔だったよ」
そこには、僕の親友である聖が、3人の仲間たちと共にナイフを持って椅子に座りこちらと対面するような位置にいる。
「……何でだ、聖。何で……」
僕の主張を遮るようには聖が言う。
「お前はっっっっっ!俺が花咲さんが好きなことを!知ってたよなぁ?なぁ!?」
「……」
そう。僕は知っていた、親友が花咲さんのことを好きだったことを。
彼女が僕に告白していた時、彼は体育館の裏で待っていたんだ、彼女を。
「……悪いとは思ってたけど、人の感情だからしょうがないんじゃないのかな?」
「ああ、確かにそうだよ。そうだよなぁ?だけど、俺には我慢できない」
………あの噂は本当だったのか。聖のスポーツ特待生が、取り消しになるかもしれないって言うのは。聖は確かに空手が強かったし、その反面遊びも凄かったらしい。一体何故こうなってしまったのだろうか。
それは、彼の首に吊るされ、右手を固定しているギプスが理由を物語っていた。
「あの時、お前が花咲さんとラブコメしてる時、俺は不良と遭遇して喧嘩。おかげで当たり所が悪く、鉄パイプが右手の腱をやったらしい。だからだよ」
僕の思考を視線と表情から読み取ったのか、聖が自嘲気味に顔を歪ませ、濁った瞳で言う。
「なぁ、あの時花咲さんがこっちに来てたら、変わったかな?」
僕が、今の問いに答えることなんて出来るわけがない。
「まあ、今更遅いな。お前を軟禁紛いなことしてるくらいだからな。もういいんだわ、俺」
そう言って、聖は立ち上がる。此処は多分、何処かのマンションの一室だと思う。だけど僕は手足が縛られて、何か薬を打たれているのか、意識が混濁している。
「じゃ、あと頼むわ。ちょっと俺は行ってくる、そいつは好きにしな」
そう言い残して、聖は数名と共に何処かへ行った。そこからが延々と無意味な暴力が続いた。
■
変化が起こったのは、そんな時だった。扉を叩く音が聞こえる。
「ああ?一体誰だ?ちょっと俺見てくるわ」
そう言って今僕に暴力を振るっていた3人の内の1人が居なくなる。
「っかしいな。お前なんか聞いてるか?」
「全然」
目の前で話す男2人を僕はただ見上げていた。その時、ゴトン、と重たいものが転がった音と共に、少女が現れた。
黒い、丹念に器に塗った漆のような上品な髪。その身に覆われているのほほんとしたオーラ。まさしくそれは、花崎さんその人だった。
「大丈夫?久留宮君?」
呆気にとられている男2人を余所にいつもの調子で彼女は笑いながら言う。
「あはは……ちょっと大丈夫じゃないかも……」
ここにきて、やっと状況を飲み込めた男の1人が、花崎さんの肩に触れようとした。
「危な……」
そう僕が言おうとする前に、男は倒れていた。打ち上げられた魚のように体を痙攣させながら。
「うるさいなあ、少し黙っててくれないかな?」
理由はすぐに分かった。花崎さんの右手にはスタンガンが握られていたからだ。もう片方の手には、包丁が握られている。
「てめっっっっっっっ、なにしてやが……あぁ!?」
もう一人も、首を切られたのか、口から赤い泡を出してうつぶせになっている。
「…………花崎さん?」
普段の彼女とは想像もつかない行為に僕は花崎さんの顔を見上げて震える。彼女はいつも通りの笑みを貼り付け、愛おしそうにこちらを見つめている。
「……ああ、やっと会えたね。私ずっと探してたんだよ?やっぱり聖君だったかあ。あの糞男、学校辞めてから全然見つけられなくて困ってたんだよ。まあ、もう泳がせなくていいから用済みだ、後で処分しとこ。そうだ、全部終わったらまたデートに行こうよ。ねえ、久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君久留宮君…久留宮君久留宮君久留宮君……」
「あ……うん、そうだね」
僕は、ただ相槌を打つことしか出来なかった。恐怖で声が出せなかったわけではない。まして、彼女が重度のヤンデレで引いたわけでもない。
自分でも異常だと思う。周りに倒れた男たちや血が滴っている床なんか目もくれずに花咲さんを見て、美しい、と感じてしまっている。
「よいしょ……っと。立てる?」
縛られた手足のロープを断ち切って、彼女は綺麗な声で鳴く。彼女に肩を貸してもらいつつ、何とか立ち上がった。
「おい、おいおいおいおいおいおいおい。俺がいない間に何してくれてんだ…………!?」
入口から聖が現れる。そして倒れた仲間たちを見て、次第に顔が青くなっていった。
「…………こいつら、死んでる?」
「勿論。1人はちょっと改造したスタンガン、2人は包丁、だったかな?」
平然としつつ、花崎さんは喋る。
「だって、久留宮君に酷いことしたんだから、当然よね」
「…………は、ははっはは。こんなおかしい奴だったのか、こんな奴に未練タラタラの俺って…………ははっはっはっははははあはあっははははっはっはっははははは!!!」
花崎さんの異常性で、どうやら彼女を想い続けていた自分の無意味さを知って気がおかしくなってしまったようだ。
「異常でも私は良いの。他の人に何と思われようが、私は久留宮君だけ居ればいいの。だから、さようなら」
そう言って包丁を聖に振り下ろそうとしたが……
「待って、花崎さん。」
僕は彼女を止めた。花崎さんは、何故、とこちらを見つめる。反面、聖は残った理性で助かったと思っているのか、安堵の表情を浮かべていた。
だが、次の一言でその表情は、また凍りつくことになるだろう。
「 僕がやるよ 」
「――――――――――――――――――――――は?おい、おい久留宮ぁ。今、何て」
「花崎さん。その包丁、借りていい?それくらいなら、今の僕でも持てるだろうし」
「待て待て待て待て!!おい、嘘だよな?俺たちずっと友達だったじゃねえか!…………おい、待ってくれよぉ…………」
膝から崩れて呆然としている聖の前に、花崎さんの肩を借りつつ、僕は立った。
「悪いな、化けて出てくれても構わない。けどな、聖。僕も花崎さんに出会う前は、今の君と同じだった。代わり映えもしない灰色の日常は、僕に虚脱感を与えるばかり。でも、花崎さんはそれを変えてくれた。君か彼女か、どちらを選ぶかは、すでに心の中で決まってたんだ」
その話を聞きつつ、灰色の表情をした聖は、包丁を持った僕を見上げる。
「 ありがとう、聖。君のおかげで、ようやく気付いたよ、自分の異常性に 」
そう言って、僕は笑顔で、友人に包丁を振り下ろした。
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私は、僕に恋をした。きみはとても大切なものを私にくれた。
だから
――――――――――――――――――――――僕はきみの為に生きる――――――――――――――
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