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兄とモブは舞台を作る

 やぁ、君から僕を呼ぶなんて珍しいね。

 妹の傍を離れていいのかい?

 へぇ逢引き中だから邪魔しない…か。

 ん?怒らないのかって?

 なんで怒る必要があるんだい?

 妹の気を惹きたいがために自分勝手に行動をしているバカ共と違って、妹が好きで近づいているんだから。

 だったら、何も怒ることはないさ。


 妹の事はもちろん好きさ。

 だからこそ妹の力にたかるような下種を近づけることは一切させないよ。

 ああ、心配しないで。最近妹が気に入っている彼の事もちゃんと調べは付いているから。

 特筆すべきことはないけれど、真面目で良い少年だよ。…地味とも言えるけれど。

 妹と一緒にいたいのならばもう少し覇気があってほしい所だけれど、まぁ妹はそういう所が好きみたいだね。


 もしかして君は僕が妹に恋愛感情を持っていると思っていたのかい?

 違うよ。妹は大事な大事な家族だ。

 でもそうか…だから君の反応が時々おかしかったんだね。

 僕が欲しいのは君だと言ったのに何故か妹の付属品のように自分を扱うからおかしいと思っていたんだ。


 おやおや、面白い顔になっているよ?

 何をそんな当てが外れたみたいになっているんだい。

 妹がヒロインで僕が攻略対象者で義兄妹からのハッピーエンドのお約束…ね。

 まったく、前から言っているけれど君はもう少し前世と今を切り離して考えるべきじゃないかな。

 前世を否定している訳ではない。前世も含めて君さ。

 けれど、今の現実はこの場所で、先の事にお約束もなにもない。

 決まっている未来なんてないんだ。


 そんなことは分かっている?本当に?

 なら何故君は妹が『ヒロイン』で僕が『攻略対象者』だと言うんだい?

 何故君は『テンプレ』だから、『お約束』だからと決めつけているんだい?

 先の事なんて誰も分からない。そうだろう?


 …困ったな。悲しませるつもりはなかったんだけど。

 泣きそうな顔をしないでくれ。君を追い詰めるつもりはないんだ。

 ただもう少しだけ、僕を見てほしくてね。


 話を戻そう。何か相談があって呼んだんだろう。

 君が僕に相談することは妹の事が多いけれど、今回もかな?


 うん、精霊様の頼みごとについては僕も妹から聞いているよ。

 この学園に来た目的はもう終わるのだってね。

 ここ最近の幽霊騒ぎやらなにやらがそれに関わっていたんだってことは調べもついている。

 なんでも一人で解決しようとしてしまう子だから気を付けて見ているんだよ。

 それで、それが終わったら妹はどうするって?


 そうか…帰りたい、か。

 彼には何も告げずに?…そう。


 あんなに楽しそうにしている妹も、あんなに悲しそうにしている妹も、あんなに誰かを想う妹も、見たことがない。

 そうだね、僕もあんな妹は初めて見たよ。

 いくら妹の頼みでも、このまま帰してしまったらきっと後悔をする。

 お節介だとは思うけれど、ここは一肌脱ごうか。

 言い出したのは君なのだから、もちろん協力してもらうよ。

 何を怯えているんだい?僕はまだ何もしていないよ。


 まあ、やることは単純だよ。

 彼に湖で会っている彼女が妹なのではないのかという疑問を肯定させればいいのさ。

 ん?彼が妹の事を知っているかも知れない事がそんなに驚くことかい?

 考えてごらん。

 いくら顔を合わせることなく話だけをしていると言っても妹は彼にさまざまな事を話している。

 バカ共の相手に悩んでいる事や精霊様についての話題。

 ばれない様に言い回しや表現を頑張ったのだろうけど、妹だからねぇ…。

 いや、呆れている訳ではないよ。そんなところがまた可愛い所なのだから。

 まあ、彼も確信がある訳ではないようで妹を気にしつつも人目がある所では話しかけられなくてもやもやしているみたいだね。

 その確信さえあれば、後は簡単な事だと思うよ。


 妹は彼に正体を知られる事なく帰りたいと言っている。

 彼は彼女が妹である事に確信が持てなくて一歩が踏み出せない。


 だから、その確信を持たせてやればいいのさ。

 大丈夫良い考えがあるんだ。

 ちょうど良い舞台がもうすぐあるからそこで実行しよう。

 そう、ダンスパーティーの事だよ。

 そういえばまだ僕のパートナーを決めていなかったなぁ。

 今は君もこの学園の生徒だから、使用人ですからなんて理由は利かないよ。

 おやおや顔が引きつっているね。うん、とても良い表情だ。

 せっかく獲物が傍にいるのだから、離すなんて愚策を僕がすると思うかい?

モブメイド「いつの間にか逃げ道がない…だと」

兄「逃げ道とか残すわけないよね」

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