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お嬢様は悪役になりたい

主人公変わります。

 お母様!お母様!!

 ひっ!

 ははは走り込んできたのはごめんなさい!!でもその『とらんぷ』って人に投げる物でしたっけ?違うよね?

 というか『とらんぷ』って紙で出来てるものよね?壁にささるのおかしいでしょ。そうでしょ?

 え、紙じゃないの?へぇ~紙よりも丈夫だけど鋼や鉄よりもやわらかくて、重さも軽い素材…。その名も『ぷらすちっくみないなもの』。

 みたいなもの?…まあ、いいか。

 で、それだと何がいいの?紙みたいに傷がつきにくくて色落ちもしにくいからイカサマしにくいと…なるほどねぇ。でも新素材で出来てたら値段は高そうだね。

 あっそれ持ってたら『悪役』っぽいかな…お母様、出来上がったらひとつちょうだい。持っていくから。

 どこにって…あ、その話をしに来たんだった。


 あのね、学園に通いたいの!

 違う!違うわ!今行っている所じゃなくてお兄様が通っている国立学園よ!

 ええ、確かに私は拒否したわ。

 だって不可思議な力があるからって勝手に入学を認めましたとか手紙送ってきちゃって、そういう上から目線が好きになれなかったのだもの。

 貴族は嫌いだし。堅苦しそうだし。頭が固い人しかいなさそうだし。

 平等だの学園内では身分なんてないだの言っておきながら暗黙の了解みたいになってるってお兄様から聞いているし。

 私のことを『珍しいもの』としか見ていない人たちなんて大っ嫌い!


 ええ、ええ、分かっているわよ!

 お兄様だって通っているのだから、全ての人がそうじゃないって分かっているわ。でも、そういう人があの学園には多いというのは、間違っていないわ。

 私はお兄様みたいにお母様そっくりな綺麗な顔に笑顔を張り付けながらお父様のような柔和な物腰で警戒心を無くさせた所でじわじわ毒を送り込むなんて器用な事出来ないのだもの…。

 まってお母様!振り上げている腕を下して!!

 私はお兄様の事を言ったのであってお母様の事を言っているわけではないのよ?

 確かにお兄様はお母様に顔以外も全部そっくりだけれど…いたっ!…ごめんなさい。

 と、とにかく、拒否をしたことは覚えているし、今でも本当なら行きたくなんてないわ。

 ないのだけれど、行かなくてはならない理由が出来てしまったの。


 あのね、私には精霊様が見えるでしょう?

 魔力なんて微々たるものしかもってないのに、精霊様が見えるって不可思議な力。会話もできちゃうんだから私ってすごいね!

 …調子に乗ってごめんなさい。

 本当は、周りはすごいって言うけど、自分じゃそれが当たり前すぎてすごいのかどうなのかよく分からないのだけれど。

 そこは置いといて、その、精霊様がね「助けて」って言ったの。

 精霊様の話は要領が良くないからはっきりとは分からないのだけれど、どうやら学園で何かとても恐ろしいことがあるらしくて。それを止めてほしいって。

 本当は今でも行きたくない。貴族何て大嫌い。でも…それでも…。


 お母様?なぁに?頭なんか撫でで…私もうそんな子どもじゃないわ。

 えっ!ああ、ありがとう!ありがとうお母様!

 条件がある?何でも言って!

 危ないことはしない。もちろん気を付けるわ!!

 月に一度の手紙を必ず。絶対書くわ!

 後は?後は!?

 護衛に侍女をつける。侍女って彼女のこと?まあっ!なら大歓迎よ!!

 それだけでいいの?良かった。


 あ、さっきの『とらんぷ』を持っていきたいのだけれど。

 なんでってそれはもちろん『悪役』になるためよ!!

 私は学園ににこにこ笑顔で行くつもりなんて一切ないわ!

 どうせ寄ってくるのは私の力だけが欲しい貴族ばかりでしょう!

 だったら、力があったってこれはダメだと思わせるような性悪になるのよ。

『悪役』は金持ちで性格悪くて陰険で嫌みったらしい感じなのでしょう?

 お金持ちなのはお母様のおかげで条件としてそろっているから、後は見せびらかすために高級なものをちらつかせてみようと思って。

 嫌々だけれど来て差し上げたのよ。って感じの嫌みな雰囲気を作らないと。

 高慢な感じでいけばいいかな。

 ねえ、お父様。何かいい案はない?


 なによ。なんでそんなに泣きそうなのよ。

 別に無視してないわよ。まずはお母様に許しをもらわなくちゃと思って。

 そこにお父様の許し?…いるの?

 ちょっと!本気で泣くのはやめてよ!!こうして意見は聞いているじゃない!


 もうっ。

 それで、なにかいい案はない?

 ふむふむ、なるべく笑顔は怪しげに。常に小馬鹿にしたような感じの受け答えで相手に泣きが見えても鼻で笑う…と。

 さらに貧乏貴族には金をチラつかせて、下僕にしておくと良い。そして決してでれるな常につんでいろ。

 …でれるな?でれ、るな?…つんで、いる?ねえ、どういう意味?

『でれ』とはお父様といっしょにいるお母様のような感じ…えーっと、笑顔で相手を叩きのめせばいいの?いたっ!なんでお母様が叩くのよ…。

 ほっとした表情とかうっとりした表情とかをしちゃダメだと…つまり、気を緩めるなという事?それでいい?

 相変わらずお父様の言葉って理解が難しいわね。


 で、『つん』っていうのは?

 普段お父様にしている態度?それっていつも通りってことじゃない。私はいつも『つん』だったわけ?

 えーっと、つまり、相手をあてにするなってことでいいのかな。

 だから何で泣くのよ!!

 あーもうっ!やっぱりお父様はあまり頼りにならないわね。

 もういいわ。彼女ならお父様の言葉も分かるから後は彼女に聞くわよ。


 ねぇ、お母様。

 編入はいつごろならできそう?

 あら、結構早く出来るのね。でも時期的には中途半端になるのか…まあ仕方ないか。

 さあこうしてはいられないわ。編入までに出来る限りの準備をしなくっちゃ。

父「あれ…中途半端な時期の編入生って…ヒロインポジじゃないかい?」

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