転生者はこの世界から退場しない
※短編を少し修正したものです。内容は変わりません
※短編版は11/30に削除予定です。
お嬢さまぁ。お嬢様どこですかぁ?
あ、いたいたって危ない!何すんですか。
ダーツの試作品を投げるのはいいですが、投げる方向が違います。何でドアに向かって投げるんですか。的があるでしょう的が!
もう少し反応が遅れてたら俺の顔面に傷ついてますよ。大事な商品に傷がつきますよ!…自分で言ってて悲しくなってきた。
お嬢様も商品ってところに同意しないでくださいよ。ほんとに俺のライフを削るの好きですよね…。
ああもう!俺はお嬢様を探してたんです。
あの国の新しい情報が入ってきたんですよ。
早めの対処をする人がいてよかったですね。
国土も荒れてないし、立ち直りは早そうです。
まったく、お嬢様は優しいですね。
追い出されてもう舞台からは退場したのにここまで気にするなんて。
支店の売り上げに影響するから気にしているだけだなんて、そんな理由こじつけなのは知ってますよ。
ひえっ!!
だから!ダーツは的に当てるもんですってば!
すみませんごめんなさいもうからかいません。
えっと…報告…続けてもよろしいですか?
脳内花畑は幽閉された部屋で泣き続けているそうです。
ボンクラ親子は貴族位を剥奪、監視下の元、庶民として暮らしていくとか。
騎士はご家族により北の大地へ送られて、こちらも監視下の元鍛えなおし。
魔術師は領主が引き取り、力を拘束、こちらも幽閉中。
その他のお姫様をちやほやしてた奴らは一掃されました。
しかし、どうも奴らまだお嬢様を逆恨みしているみたいでして…気を付けないと。
お嬢様もあっちこっち視察に行くのはいいですが、絶対一人ではいかないで下さいよ!
唐突に思いついた事でも俺には言ってください。「でかける」と一言おっしゃっていただければ、どこでもお供しますから。
これで本当に終わったんですかね…。
ゲームの登場人物全員退場になりましたけど。
結局、あのゲームに意味はあったんでしょうか…。
お嬢様にゲームの話をした時、お嬢様本気にしていなかったでしょう?
気づいてたのって…ええ、まあ。
それに本気にしてるかどうかより俺の話をきちんと聞いてくれたことが嬉しかったんでいいんですよ。
その後「もう無理!」ってぐらいに根掘り葉掘り俺の脳みそつつき回すように質問攻めされたことを思い出すと今でも頭痛がしますよ…ははっ。
まあ、今更ゲームの事を考えても仕方ないのは分かってるんですけど。
あまりにもゲーム補正が恐ろしい時があったのでなにか他の強制力が働いてるんじゃないかと勘繰ってしまうんですよね…。
この世界に生まれ変わった事について、ですか?
前にも言いましたけど、前世女だってのはもう気にしてませんよ?
そこではなく?じゃあどこだと?
お嬢様、どうしたんですか言いよどむなんてらしくないですよ。
お嬢様のデフォルトは情けを忘れ容赦無くじゃないですか。
『デフォルト』はこの場合だと初期設定とか標準装備っていう意味…ってダーツ手に取らないでください!
見えない所を狙えばいいのよねってだから俺は的じゃありませんっ!
何で分からないのと言われても俺は察しが良くないんですから、深読みなんてできませんよ。
この世界が好きか、ですか。
そうですね…前世の世界を思い出すと平和を通りすぎてボケてるような所がある世界だったので、比べてしまうと今の方が苦労は多いですね。
でも、好きか嫌いかと言われると、好きだと言えますよ。
もちろん、前の世界も嫌いじゃなかったですけどね。
何で俺がこの世界のこのキャラに生まれ変わったのかは分かりません。
知りたいような気もしますけど、調べてやぶ蛇になっても困りますし。
調べてもしこの世界から追い出されるなんて事になったら俺嫌ですし。
何よりお嬢様がこの世界にいるんですから。
俺は、ここが一番です。
うん、言ってて恥ずかしくなってきました。
ちょーっと落ち着くまで待ってもらえます?
大丈夫です。お嬢様が鈍いのは知ってますから。
お嬢様はスルースキルも半端ないって知ってるよ、俺。
よしっ。
………何で顔赤いんですか。
え、嘘、ホントに?あ、え、違います!
あ、いや、受け取りかたが間違ってる訳じゃなくて、だから、えっと。
俺はお嬢様が好きです!
この世界で、いや、前の世界も含めて一番!!
てっあれ、俺もうちょっと雰囲気とか考えてたはずなのに?!
あああの、今度やり直しを所望していいですか?!
…笑わないで下さいよ。
こんなはずじゃなかったのに。
そんなに嬉しそうにされると返事は肯定と受けとりますよ。
いいんですか。あ…いいんだ。
…あの、お嬢様、隣に行ってもいいですか?
俺の世界はここです。
お嬢様が嫌だと言っても、どんな強制力があろうとも、お嬢様の隣から俺が退場することはありません。
顔、あげてくださいよ。
キス、できないじゃないですか。